蔦屋重三郎

蔦屋重三郎（つたやじゅうざぶろう、寛延3年1月7日（1750年 2月13日） - 寛政9年5月6日（1797年 5月31日））は江戸時代の出版人。朋誠堂喜三二、山東京伝らの黄表紙・洒落本、喜多川歌麿や東洲斎写楽の浮世絵などの出版で知られる。「蔦重」ともいわれる。

父（丸山氏）は江戸の吉原で遊廓の勤め人だったという。1750年、重三郎も吉原に生まれ、のちに喜多川氏の養子になる。「蔦屋」は喜多川氏の屋号であり、吉原の茶屋といわれる。1773年、重三郎は吉原に書店を開き、はじめは吉原細見（店ごとに遊女の名を記した案内書）の販売、出版から出版業に関わってゆく。

1780年に売れっ子作家、朋誠堂喜三二の黄表紙を出版したのを手始めに、本格的に出版業を拡大。これ以後、洒落本や狂歌本などのヒット作を次々に刊行し、1783年、一流版元の並ぶ日本橋に進出。浮世絵では歌麿の名作を世に送る。

しかし、寛政の改革が始まり、風紀取締りが厳しくなると、1791年には山東京伝の洒落本・黄表紙が摘発され、重三郎は過料、京伝は手鎖50日という処罰を受ける。1794年には東洲斎写楽の役者絵を出版した。1797年に48歳で没。脚気であったという。

面倒見がよく、また人の才能を見抜く術を心得ていたのであろう。写楽をはじめ曲亭馬琴、十返舎一九など重三郎の世話を受けた人物は数多い。

[編集] 参考資料

鈴木俊幸『蔦重出版書目』（日本書誌学大系77、1998年、青裳堂書店）には、1774年（安永3年）から没後の1840年代（天保末）まで800点以上の書目が挙げられている。
「蔦屋重三郎の仕事」（別冊『太陽』、1995年、平凡社）がある。