自転車操業
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自転車操業(じてんしゃそうぎょう)とは売上金の全部または多くの部分をそのまま仕入れ金に当てて辛うじて操業を続けること、またはその状態を指す経済用語のひとつ。日本ではバブル崩壊以降に借金の返済と返済のための借金を連続して行う会社経営、もしくは個人的な資金繰りを指して自転車操業と解釈する意見がある。
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[編集] 語源
自転車はペダルを漕ぎ続けることで安定した走行が可能であるが、漕ぐのをやめるといつかは転倒してしまう。この自転車の状態を経営収支に見立て、ペダルを漕ぎ続けることを操業とし、停止すると転倒、つまりは倒産する状態を喩えている。
[編集] 概要
操業を維持するためには収入と支出の均衡が保たれていることが条件であり、操業を維持する利益が確保されなければならない。この状態は家庭の家計にあっても同様であり、収入に見合った分相応の支出を繰り合わせて収支をつけ、これを「家計のやりくり(遣繰)」という。
[編集] 企業
自転車操業に至る経緯を設備投資を例にすると次のような流れになる。
企業が製造機器の刷新・設備の拡張等の設備投資を行なう際、自己資本以外に自治体・公庫・銀行等の低利息な他人資本から借り入れし、将来見込まれる収入の中から返済期日内に返済を行ない事業を拡大していく。
ところが、取引先の倒産や経営不振等の何らかの理由により、将来に渡って見込んでいた収入が遅延したり途絶した場合、自己資本が潤沢でない経営体力の企業では収入と支出の均衡が崩れ始める。支出が収入を上回ると経常支出を抑えるために事業規模の縮小・事業の部分撤退・人員の削減等を行なうことになる。更には、収入を確保するために低利益の操業に転換して乗り切れる場合もあるが、乗り切れない場合には資金の蓄積が困難となり当座資産の涸渇を経て、慢性的な自己資本不足に陥ることになる。
借入利率を上回る新たな収入の確保といった要素がない限り、資金繰りは改善されることはなく、多くの場合雪だるま式に借入金が増えることから、単に破局(破産)の際の規模拡大を招くだけとなる。2004年頃からチャリンカー(本来は自転車愛好者の意味)とも呼ばれるようになった。
[編集] 犯罪
借入先が行き詰まり、インターネットオークションを舞台にした詐欺事件などに発展することもあるほか、最初から破綻を見越した故意犯的な悪徳商法も存在する。