熊と旅人
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熊と旅人(くまとたびびと)は、イソップ寓話の一つ。
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[編集] あらすじ
二人の男がいっしょに旅をしていた。ある大きな森の中の道を歩いていると、目の前に1頭の熊が現われる。一人の男はすぐに近くの大木によじ登ったが、もう一人の男は逃げ遅れ、仕方なく地面に倒れて死んだふりをする。熊はその男の耳元に口を当てていたが、しばらくすると森の奥に姿を消してしまった。安心した木の上の男が降りてきて、逃げ遅れた男に「熊は君の耳に何かささやいていたようだが、何て言っていたんだね?」と聞いたところ、彼は答えた、「ああ、言っていた。危ない時に友達を捨てて自分だけ逃げるような薄情な相手とはもう別れろ、と」。
[編集] 教訓
物語中で既に触れられているが、友人は大切にせよ、自分だけいい目を見ようとするな、ということ。
[編集] 誤解
この寓話は、本来は上記の教訓を示すために作られ、伝えられたもので、旅人が死んだふりをして熊をやり過ごす逸話は単なる設定に過ぎなかったにもかかわらず、後世、本来の教訓は忘れられ、熊に出会ったら死んだふりをすると助かる、という誤解が一人歩きするようになった。実際、外国ではこのため死傷した例も報告されている。熊は食肉獣で、死体も食べるから、熊の前で死にまねをするのは自殺行為と言える。万一山などで熊に遭遇した場合、熊は主に嗅覚に頼る動物なので、上着などを熊の鼻先に投げ、匂いに気を取られている間に逃げるようにすれば良い。