治安警察法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

治安警察法（ちあんけいさつほう）は、かつて日本に存在した法律。

日清戦争の後、高まりを見せ始めていた労働運動を取り締まるために、それまで自由民権運動を念頭にして、政治活動の規制を主な目的としていた集会及成社法に、労働運動の規制という、新たな役割を付加した上で継承発展させる形で、明治33年（1900年）2月23日に制定、同年3月10日公布、3月30日施行された法律。全33条より成る。治安維持法とともに戦前の有名な治安立法として知られる。大正5年（1925年）最終改正。第二次世界大戦後のGHQの指令に基づき、1945（昭和20）年11月21日「治安警察法廃止等ノ件(勅令第638号)」により廃止となる。

第16条はストライキを全面的に禁止した事から、労働組合死刑法ともよばれた。また第5条では、軍人及び警官、神職僧侶や教員などと共に、女性が政党などの政治的な結社へ加入すること、また政治演説会へ参加し、あるいは主催するという、集会及び結社の自由を禁じた。そのため同法制定直後には早くも改正を求める請願運動が起こる。改正運動は執拗に続き、1922年（大正11）3月には集会の自由を禁じた第5条2項の改正に至った（治安警察法第五条改正運動）。しかし女性の結社権を禁じた5条1項は残されたため、婦人団体を中心に、治安警察法5条全廃を求める運動がその後も続いた。

この法令を施行し、それに反発する者を取締る為、今までの威圧的・牽制的な警察体制はますます強化され、戦前の警察による市民弾圧の側面もよりいっそう強まった。そして市民の警察官に対する「厳つい」というイメージもよりいっそう強まっていった。　　