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怪盗アマリリス - Wikipedia

怪盗アマリリス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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怪盗アマリリス』(かいとうあまりりす)は、1991年花とゆめ1号~1995年同誌22号に連載された和田慎二漫画作品

目次

[編集] 概要

  • 母親とお手伝いさん、そして本人の3人で暮らす高校生の少女「椎崎奈々」が怪盗として活躍する物語。
  • 話はおおざっぱに3つに分かれる。最初は怪盗ものでスタートするが、中盤はアマリリスがさらに変装して芸能界入りするアイドルものになり、最後は巨大組織との対決が中心となる。
  • 実は和田慎二のキャラクターとしては最も古い部類に入り、名前だけで言うならば、和田が学生時代に部活同人作として書いたスパイもの漫画作品のキャラクター『コードネーム・グリーンナンバー・アマリリス』が源流となる。
  • 商業作品としてならば、1973年に発表された短編『快盗アマリリス』(「怪」でなく「快」)が原型となるが、この時点で連載版の設定は殆どが出揃っているため、見方によってはこの短編は連載版の前日譚として理解することが可能
  • ちなみに連載版の番外編『アルカディア作戦』におけるアマリリスの因縁はこの短編版『快盗アマリリス』がベースとなっている。
  • 途中のストーリーで『超少女明日香』シリーズとのコラボレーションが成されており、当作にはそれに由来するキャラクターが頻出している。例えばアマリリス専任捜査官の転(ころび)警部は『明日香』の敵役で四重奏の一人・コロンボのリボーン・キャラクターである。
  • 花とゆめコミックス版単行本は絶版されており、現在は朝日ソノラマの文庫版で再販している。

注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。


[編集] あらすじ

[編集] 基礎ストーリー(怪盗編)

 主人公・椎崎奈々は普段は私立皆星女子高等学校に通う普通の女子高生。しかし、その裏の顔は秘密兵器を駆使してお宝を盗む怪盗アマリリス。裏世界ではよく知られた窃盗請負の怪盗集団・華蓮(カレン)に所属する怪盗である。
 奈々は、かつて怪盗白水仙(ナルシス)として腕を鳴らした母・雪乃やお手伝いのスガちゃんと共に、華蓮の連絡員であるレンタルビデオ店・店長の依頼を受けて怪盗の仕事に邁進するのである。
 その日々の中、奈々は友人たちや母の知人の息子である各神遼一郎、隣家に引っ越してきた少年森村海とその仲間たち、さらには海の叔父でアマリリス専任捜査官の転警部を交え、様々なドタバタを繰り広げていく。

[編集] アイドル編

 奈々はある日、弱小芸能プロダクション・アーサープロからスカウトの話を受ける。怪盗家業に支障が出かねないために当初は渋る奈々だったが、本来デビューさせるはずだったタレントに逃げられ、そのタレントが出るハズのイベントを乗り切るためだけの一日だけの活動だからと押し切られてしまい『フラワー・ドリーム(F.D.)ナナ』としてデビューする事になってしまう。
 一日だけのデビューのハズが、あれよあれよと祭り上げられ、奈々は気がつけばあっという間に超人気アイドルになってしまった。かくてドタバタは加速する。アーサープロ社長の麻丘やマネージャーの江の木さんと共にアイドルとして活躍していく奈々。
 しかしアマリリスとしての怪盗の星は彼女を放っておかなかった。アーサープロに対立する大手芸能プロマナベプロは、裏社会からも恐れられる闇組織『黒いオークション』の末端だったのである。驚いた奈々はF.D.ナナとして『マナベプロ』に、アマリリスとして『黒いオークション』に、面白半分も手伝ってちょっかいをかけていくことになる。
 当然、芸能活動も忘れない。忍者となった作曲家の下で修行したり、大レジャーランド企業の社長と懇意になったり……ナナの活躍は止まらない。

[編集] 映画編

  • 作者の映画観である「役者の話題性だけで作る映画は問題外映像美なんか二の次ストーリーが秀でて面白くてナンボ原作モノは絶対に先行原作のイメージを崩すべからず。この全てが揃わない映画はゴミ箱行きのクズ映画!」というエンターテイメント重視な思想がかなり思い切りよく、かつ軽妙に前面に押し出されている。
  • 前述の『超少女明日香』とのコラボレーションが成されているのもこの『映画編』であり『明日香』の原作者として和田慎二作品ではおなじみの作者代弁キャラ『岩田慎二(上の岩の字は本名から)』も出て来る。
  • ちなみに岩田慎二は作内で「 マンガと映画じゃ作り方が違う (原作者の作品に込めた意義を無視し、監督や脚本家などスタッフの独自解釈が優先され、原作者がそれに異議を唱えると「映画はチームプレイだ」の一言で「協調性が無い」と非難し、原作者の発案者としての立場をないがしろにする)」ために「(作者が持つ作品の原点的かつ最も重要な部分の=作品そのものの絶対崩してはならない原点的な)イメージを壊される 」として当初は映画化の話に対して非常に否定的な言動をぶちかましている。これは和田慎二の代表作でドラマ化もされた『スケバン刑事』(特に風間三姉妹篇と呼ばれるIII)における(原作設定をトコトンまで作り変えて廉価版以下の劣作とした事、役者イメージ先行で原作の持ち味を完膚なきまでに否定し叩き壊した事に対する)恨みに由来するものと考えられる。これはドラマ化に限らずメディアミックス作品には避けて通れぬ事象であり問題と言える。
  • 作内ではコレに対して「原作者と監督・脚本家の全員参加による緻密な打ち合わせ・綿密なキャラクターファイルと裏シナリオの作成」という、ある意味で乱暴な解決方法を執る事で乗り切っている。
  • 作者はこの『映画編』である映画評論家ですら「斜陽の時であるからこそ、温かく見守ってほしい」と甘えた論評を出し、それを容認する当時の日本映画界の事情をかなり痛烈に皮肉っている。とりもなおさず、それは作者の映画界に対する愛のムチであったのかもしれない。だが、正直ほかのシリーズと比べてあからさまに色合いが異なる上に面白さには欠け、非現実的な描写も多く、また過去の映画を誉めつつ現状を批判するその筋に、実はその過去の作品群もその映画会社が作ってきたという矛盾も孕んでいたところもあり、マニアの自己満足でしかないとの批判があった(実際、この編に於いて読者から相当な批判の葉書が送られてきたという)。
映画編あらすじ
 ある日、ナナは映画の仕事を請ける事になる。しかし、監督は「所詮、アイドルの出る娯楽映画」と乗り気ではない。それどころか「娯楽映画」をミソクソにけなし、ワケのわからん抽象的芸術論に終始する始末。ついにナナはブチ切れて、この仕事を降りる事にした。
 ところがこれがきっかけで映画界・映画ファンから「映画を解ってない!」と強烈なバッシングを受ける事に。ナナは彼らを見返すため「あたしの映画はあたしが撮る!」と叫び、友人たちを巻き込み裏の人脈も駆使して、映画『超少女明日香』を作り上げる。
 しかし、その間にナナは海に「椎崎奈々=ナナ=アマリリス」であるという秘密を知られてしまう事に。逃げようとするナナに海は「映画を撮り終えるまでは、そんなコトは許さない」とハッパをかける。
 そして映画は撮り終わり、映画版『超少女明日香』は大成功を収める。一方で海は奈々のために体を張って逆行性健忘症を装う。この事によって奈々は皆と離れることなく変わらぬ日常を送れるようになった。

[編集] 番外編・アルカディア作戦

  • 和田慎二作品キャラ総出演(作品内で死んだ描写のある者や異世界の者を除く)が特徴の傑作。
 ナナの下にファンレターを装った手紙が届く。それは怪盗アマリリスへの招待状だった。もしも応じなければ、ナナの正体をバラすという意思表示。奈々はやむなくアマリリスとして招待を受けることにする。
 招待された洋館には神恭一郎探偵事務所を受け継いだ男ムウ・ミサと伍堂家に仕える忍者飛翔の2人がいた。銀の仮面を被った招待主は彼らの弱みや援助を盾に、ある仕事を依頼する。それはナチスの遺産となったある兵器の奪回だった。
 兵器の正体を知らされないまま、兵器を持つ組織の基地に潜入する3人。そこで待っていたのはアマリリスにとって因縁深い男・信楽老だった。かつてアマリリスは信楽老の企みを潰し、彼を倒した過去があった。一方でムウ・ミサにとっても彼は一度は葬ったはずの敵だった。
 信楽老の狙いはナチスの遺産「人造人間・フランケンシュタイン」をもって不死の力を得ることだった。しかし、アマリリスたちの騒動によりフランケンシュタインは目覚め基地は破壊され、信楽老のたくらみは潰える。しかし信楽老は逃げ去ってしまう。
 一方で洋館の主の目的は、フランケンシュタインの解放と人間の手の届かない場所に彼を逃がす事だった。洋館の主の名は本条亜里沙。考古学と地質学の権威として知られる謎の大富豪。彼女は尽力してくれたアマリリスたちの労をねぎらい、それぞれの報酬や秘密の約束を守ることを誓い、彼らの前から姿を消す。
 アマリリスたちに見送られ、遠く理想のアルカディアを目指すフランケンシュタイン。果たして彼の行く手に幸福はあるのだろうか。

[編集] 黒いオークション編

 黒いオークションとの対立が苛烈になり、ついに彼らはアマリリスに賞金を賭け、宣戦布告を言い渡した。それと前後して、奈々はある男からシンドバットコインなるメダルを「船乗りシンドバッドに会え」との遺言と共に託される。
 実はコインは『黒いオークション』幹部がアマリリスへの挑戦権として暗殺者に託したもの。そして暗殺者たちはアマリリスをおびき出すためにオークションの所有宝物をオトリとして使い、コインはそのカギとしての機能も持っていた。
 迫り来る暗殺者。受けて立つアマリリス。その戦いの中でアマリリスは華蓮の重鎮たちより、花蓮を裏切り『黒いオークション』についたある女性怪盗の存在を知らされる。彼女こそ、かつて怪盗・白水仙のライバルであり、現在では『黒いオークション』のナンバー2となっていた初代アマリリスだったのだ。この暗殺騒動は他ならぬ初代が「アマリリス」の名を守るために2代目となった奈々の抹殺を狙って企てたものだったのである。
 刺客たちの猛攻。しかし奈々はその中で失敗した刺客たちが自ら命を断つ場面を目撃。自分のために失われる命があってはならない、怪盗はあくまで怪盗であり命を奪ってはならないと考える奈々は、刺客たちを説得し自分の仲間となるように促す。一方で刺客たちの中にも奈々の考えに打たれ『オークション』を離れて彼女の元に集う者が出てきた。
 そんな中で黒いオークションは奈々の母を拉致。オークションの本部へとつれていく。
 かくてアマリリスの戦いは最終局面を迎えるのであった。母を救うため、オークションとの決着をつけるため、奈々は仲間たちと共に『黒いオークション』総本部『国家・アトラクシア』に攻め込むのである。

[編集] 登場人物

[編集] 快盗アマリリス

  • 1973年に『別冊マーガレット11月号に掲載された読切作品。
  • 前述の通り『怪盗アマリリス』の原型作品。
  • 1975年、マーガレットコミックス(通巻ナンバー183号)『呪われた孤島』に収録。

[編集] あらすじ

 椎崎奈々は全寮制高校に通う女子学生……が、連日のアマリリスとしての怪盗家業による寮の抜け出しがバレて退学となってしまい(バレたのは抜け出しのみ。あしからず)やむなく実家へと帰るハメに。ところが実家のあるK町では既に異変が始まっていた。
 実家に戻った奈々はショックを受ける。スリムだった母がすっかりふくよか……と言うか、太ってしまっていた。それだけではない。町中の人々が皆、でっぷりと太ってしまっていたのである。
 K町では信楽コンツェルンの地方開発が始まっていた。食品・衣料・交通……町のあらゆる場所で信楽系企業が幅を利かせている。当初は怪盗家業に精を出していたアマリリスだったが、町中の人のやる気のなさに気が抜けてしまう。やがてアマリリス自身も怪盗家業に張り合いをなくし、面倒くさくなってやる気を失っていく。
 地元の高校に通うようになった奈々。生まれ育った町で顔なじみにも会い、気楽に日々をすごすようになる。しかし、ある日、親友から兄が病院に入ったと相談を受けた。兄はどこも悪くないのにと訴える親友。しかし奈々にはどうする事も出来なかった。この些細な事態の重要性に気付かなかったのである。
 さらに後日、奈々は自分が太りだしたことに気付く。ショックで絶食する奈々。しかし、強烈な食欲が奈々を襲う。そして気付いた。自らを襲った食欲にも似た衝動が薬物の中毒症状である事に。この町に入る全ての食料には、まだ誰も知らない凶悪な麻薬が入れられていたのである。
 薬の効能は、人間から思考力を奪い従順な操り人形と化す事。その副作用は太ることと倦怠感、意欲の喪失であった。奈々はそれに気付き、自ら中毒症状から脱するため、家の地下室にこもる。
 中毒から立ち直った奈々は信楽系企業に狙いをつけて探りを入れ始める。と同時に悪い予感を憶え、親友の兄が入れられていると言う病院へと急いだ。そこで奈々が見たものは、信楽系企業の秘密をかぎつけた者たちの入れられた収容所と化し、彼らの口封じのために火を放たれた病院の姿だった。
 そして奈々はその場で倒れている親友の姿を発見する。残り少ない体力で奈々にメッセージを伝えた親友だが、直後に信楽の社員が放つボウガンの凶矢に倒れた。自らの迂闊により友を失ったことを嘆き怒りに燃える奈々=アマリリス。
 そしてついにアマリリスは親友の遺言から信楽老の恐るべき野望を突き止め、北海道の雪嵐吹きすさぶ平原でその阻止に到る。逃げ去る信楽老。彼の乗ったスノーモービルにはアマリリスが前もってガソリンタンクに穴を開けていた。伸びるガソリンの帯にアマリリスは火矢を放つ。火と矢で命を奪われた親友の弔いのために。爆発・炎上するスノーモビル。信楽老の企みとその命は潰えたのだった。
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