広域緊急援助隊
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広域緊急援助隊(Interprefectual Emergency Rescue Unit)(こういききんきゅうえんじょたい)とは全国の各都道府県警察に設置されているレスキュー隊のことである。機動隊から選抜された隊員によって構成される。
[編集] 概要
1995年に発生した阪神・淡路大震災は、兵庫県南部を中心とした広い範囲に未曾有の被害を与え、消防の救助隊(レスキュー隊)だけでは対応できない状況となった。
警察庁は、日本全国の各県警から多くの機動隊員を現地に派遣し、災害救助に当たらせたが、消防に準じた救助工作車や水難救助車などを装備している「機動救助隊」に指定されていた機動隊員が少なく、救助活動は難航した。
警察庁では、これを反省点として、全国全ての都道府県警察に、激甚災害に対処するための部隊となる「広域緊急援助隊」を創設した。
平時のレスキューは一次的には消防の仕事であるため、消防の力だけでは対応できない大災害に備えるための部隊として、常に厳しい救助訓練を行っている。ひとたび災害が発生すれば、都道府県の枠を越えて出動する。
各都道府県で年に一度開催される「総合防災訓練」では、行政や消防機関との合同災害救助訓練を行っている。
また、海外で大災害が発生した際は、全国の広域緊急援助隊から隊員を選抜して、日本政府が派遣する国際緊急援助隊の中の「国際警察緊急援助隊」として、速やかに海外に派遣される体制をとっている。
2004年に発生した新潟県中越地震では、阪神大震災の反省を受けて、全国から広域緊急援助隊が集結し、人命救助に多大な貢献を果たしたが、東京消防庁のハイパーレスキュー隊の活躍を目の当たりにし、その必要性を認識したことから、警察庁は、警視庁、大阪府警察、静岡県警察など、全国12都道府県警の広域緊急援助隊の中に、ダイヤモンドカッター、光ファイバースコープ、生命反応探査装置「シリウス」など、最新のレスキュー資材を導入した、警察版ハイパーレスキュー部隊「特別救助班」(P-Rex)を創設する。
2005年4月25日、JR福知山線脱線事故が起こると、さっそく大阪府警察と兵庫県警察のP-Rexが現地に派遣され、凄惨な事故現場での救助活動に従事した。
2005年12月25日に発生したJR羽越本線列車脱線事故では、発生当初から山形県警察広域緊急援助隊が出動し、事故現場での救出活動を行う。27日になって、車両台車部の救助活動という難しい活動が開始されるに当たり、当時、東北唯一の部隊であった宮城県警察のP-Rexが出動した。宮城県警P-Rexは、この年の4月に創設ばかりの部隊であり、創設半年にして初の出動となった。
[編集] 部隊の編制
- 全国すべての都道府県警察に設置されており、総勢約4,000人
- 部隊は、先行情報班、救出・救助班、交通対策班、活動支援班からなっている。
- 救助機材が入った救助工作車の他に、警察ヘリ、災害救助犬、警備艇、衛星通信車、多重無線車などの支援を受ける。