居士
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居士(こじ)とは、出家をせずに家庭において修行を行う仏教信者の事である。
居士の語源は「家に居する士」であり、普通の信者と異なる点は、仏教学の知識・実践において僧侶に準ずる、或いは匹敵する程の力量を持っている事である。
居士の呼称の使用され始めた時期は定かではないが、『維摩経』の主人公である維摩居士(架空の人物)がその最初と見られ、実在の人物として確認が出来る者としては、龐居士が挙げられる。
居士の存在は、唐代中期に科挙の普及によって士大夫階級が成立し、白居易や蘇軾などそれら士大夫が仏教に興味を持ち始めてから現れるようになり、唐代後期には前出の龐居士の語録が編集され、宋代には『嘉泰普燈録』に僧侶の伝記と共に張商英など著名な居士の行状が収録されるようになり、更に明代になると、居士の行状のみを集めた『居士分燈録』が編集され、清代に至ると、衰退した出家教団に変わって仏教復興運動を展開するなど、仏教発展の一角を担うようになった。
日本における著名な居士は、剣豪山岡鉄舟と仏教学者の鈴木大拙、西田幾多郎、久松真一、鎌田茂雄であり、現在も居士号を取る程の修行を積んだ人の中には、剣道や弓道の達人が多い。
なお、戒名における居士号は法名の敬称の1つであり江戸時代百姓につけるのは禁止されていた