小目

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

小目（こもく）は囲碁用語の一つで、碁盤上の位置を指す言葉。碁盤の隅から数えて（3,4）または（4,3）の地点。布石の段階で隅の着点として打たれることが多く、定石の種類も隅の着点の中で最も多い。 隅の星の一路辺寄りの（低い）位置であたるが、辺の星の一路低い位置は、小目でなく「星下」と呼ばれる。

┯┯┯┯┯┯┯┯┯┓
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨ 隅のaの地点を小目と呼ぶ
┼┼┼┼┼┼ａ┼┼┨
╋┼┼┼┼┼╋ａ┼┨
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨

一つの隅に小目に該当する位置は2箇所あるが、どちらに打つのも同じ意味である。ただし盤上の他の石の配置によっては、戦略上異なる意味を持つ。

[編集] 特徴

小目は、星よりも隅に寄っており、隅の地を確保する意味では星よりも有利だが、その分中央方向への影響力は弱い。

[編集] 小目の活用方法

碁盤の対角線上の位置でないため、1手で隅をすべてを確保したとは言えず、対角線を挟んだ位置にもう1手かけて隅を完全に確保する手に価値が大きく、また相手からすればそれを邪魔する手の価値が大きい。

小目からもう1手かけて隅を確保する手を「シマリ」と呼び、相手からシマリを邪魔する点に打つ手を「カカリ」と呼ぶ。

┯┯┯┯┯┯┯┯┯┓
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨
┼┼┼┼ｂａ┼┼┼┨
╋┼┼┼ｄｃ╋●┼┨
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨

• 黒からのシマリとして、aが「コゲイマジマリ（ケイマジマリ）」、bが「オオゲイマジマリ」、cが「一間ジマリ」、dが「二間ジマリ」と呼ばれる。
• 白からのカカリとして、aが「コゲイマガカリ（ケイマガカリ）」、bが「オオゲイマガカリ」、cが「一間高ガカリ」、dが「二間高ガカリ」と呼ばれる。

このシマリを打つことによって、隅の地をほぼ完全に、かつ大きく確保し、さらに辺や中央への展開の拠点とすることが出来るため、序盤に白黒双方が隅を占めた後は、このシマリ、またはカカリの価値が大きいと考えられている。

この図の小目の位置からは、a〜d方面の上辺が発展方向と考えられる。シマリを打った形からは、右辺方向への発展に最も価値が大きく、次いで上辺方向と考えられる。

上記以外にも、周囲の状況よって、隅からの展開、あるいは展開を妨害する手段はあり得るが、それらはシマリ、カカリとは呼ばないことが多い。

[編集] 時代による変遷

囲碁の歴史の初期にはあらかじめ星の位置に石を置いて対局を始める事前置き石制であったのが、盤上に何も無い状態から打ち始める自由布石法となることによって、隅への着点として小目が発生した。日本の室町時代後期から江戸時代、明治時代にかけては、小目が布石の主流となり、その周辺での戦いの技法も進歩し、多くの定石が生まれた。また小目から発生する布石として、本法の布石、秀策流などが打たれるようになった。その後昭和になって新布石の登場などにより、布石は星と小目の組み合わせが主流となった。

現代では中国流布石の流行などにより、シマリを省いて辺への展開を行う手段や、それへの対策の研究も盛んとなっている。

┏┯┯┯┯┯┯┯┯┯┯┯┯┯┯┯┯┯┓ 
┠┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨ 
┠┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨ 
┠┼┼○┼┼┼┼┼╋┼┼┼┼┼●┼┼┨ 
┠┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨ 
┠┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨
┠┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨
┠┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨
┠┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨
┠┼┼╋┼┼┼┼┼╋┼┼┼┼┼╋┼┼┨
┠┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼●┼┨
┠┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨
┠┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨
┠┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨
┠┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨
┠┼┼○┼┼┼┼┼╋┼１┼┼┼╋┼┼┨
┠┼┼┼┼３┼┼┼┼┼┼┼２┼●┼┼┨
┠┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼┨
┗┷┷┷┷┷┷┷┷┷┷┷┷┷┷┷┷┷┛

現代における、小目からのシマリを省いた中国流布石の展開例。白は右下隅の小目に直接カカらずに白1と辺から圧力をかけ、黒は黒2で隅を守りつつ1の石への攻撃を狙い、白は3に守った。