周波数変調
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周波数変調(しゅうはすうへんちょう)(FM;Frequency Modulation)とは、情報を搬送波の周波数の変化で伝達する変調方式である。
FMラジオ放送、アマチュア無線、業務無線(航空無線を除く)などに広く利用される。(航空無線では振幅変調(AM)が利用されている。)
目次 |
[編集] 概要
周波数変調では、情報を表す信号電圧によって搬送波の周波数を上下に変移させる。結果として、搬送波の粗密によって信号が表されることになる。図の例では、信号電圧最大で搬送波周波数を最も高く、最低で周波数を最も低くなるようにしているが、信号の変化方向と周波数の変化方法は逆でも良い。搬送波の周波数が無変調時から信号によって変化した変化分を周波数偏移という。
[編集] FM変調回路・復調回路
原理的には発振周波数を電圧で制御できる発振器、すなわち電圧制御発振器 (VCO)の制御電圧に変調信号を加えることによりFM変調波が得られる。復調は、共振回路のスロープ特性を利用した周波数弁別器(ディスクリミネータ)が用いられることが多い。他に、受信信号をPLL回路の比較入力信号として入力し、PLL回路内のVCO制御電圧の変化を復調出力とする方法もある。→変調方式・復調方式
[編集] 弱肉強食特性
FMは、単に発振器の周波数を変化させるだけなので、送信電力の変動がない。つまり、常に最大電力であり電力が弱くなる瞬間がない。また、受信はAGCを使わないでリミッタで飽和増幅するため、振幅成分は完全に失われる。これらの理由により、同一の搬送波周波数の強い信号を受信した場合、弱い信号は強い信号によって隠されてしまう(マスキング)ため、存在が確認できなくなる。これを弱肉強食特性と言う(地上の管制と上空の飛行機との間で通信する航空無線でAMが使われるのは、この現象を回避するためといわれている)。もちろん、正式な技術用語ではないが、電波関係の技術者やアマチュア無線家の間で広く知られている用語であるので、特に記す。
航空無線の場合はさておき、一般の無線通信では、通信中に被ってくる弱い信号は有害な混信と見なされるので、完全に排除できることが望ましい。FM受信機では、コチャンネル特性(cochannel selectivity:同一チャネル選択度)という指標で、一定以上の排除能力が求められることが多い。
[編集] 理論
Vc = Vcm cos ωc t =Vcm cos 2π fc t
Vs = Vsm cos ωs t =Vsm cos 2π fs t
- Vc :搬送波、Vcm :搬送波最大値、fc :中心周波数(搬送波周波数)、Vs :信号波、Vsm :信号波最大値、fs :信号波周波数
とするとき、被変調波は以下のように表される。
vm= vcm sin θm
被変調波位相角は信号波により変化するので時間積分すると次のようになる。
θm = ∫0t ωm dt= ωc t + (Δω /ωs) sin ωs t
vm = vcm sin θm = Vcm sin{ ωc t + (Δ ω /ω s ) sin ωs t }
= Vcm sin( ωc t + m sin ωs t )
- ωm = ωc + Δ ω cos ωs t
- fm = fc + Δ f cos 2π fs t
- ωm :被変調波角周波数、fm :被変調波周波数、Δf :最大周波数偏移、vm :被変調波、θm :被変調波位相角
- m = Δ ω / ωs = Δ f / fs
- m :変調指数
また、95%以上の電力が存在する占有帯域幅は、次のカールソンの帯域幅の近似式で表される。
BW = 2( Δ f + fsm)
BW :占有帯域幅 Δf :最大周波数偏移 fsm :信号波の最大周波数
[編集] FMステレオ方式
[編集] AM-FM方式
右・左の差信号で38kHzの副搬送波を平衡変調し19kHzを超える周波数帯域へ変換する。その信号と19kHzのパイロット信号とを右・左の和信号に多重して周波数変調する。このようにすることで、ステレオに対応していないFM受信機では、右・左の和であるモノラル音声を受信でき、互換性が保たれる。日本におけるFMステレオラジオ放送方式として用いられている。
[編集] FM-FM方式
第二音声または差信号で副搬送波を周波数変調した信号とパイロット信号とを主信号または和信号に多重して周波数変調するもので、日本におけるテレビの音声多重放送(二か国語音声・ステレオ音声)方式として用いられている。
[編集] その他のFMステレオ方式
- FM-PM方式
- FMXステレオ方式