名古屋市市政資料館
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
名古屋市市政資料館(なごやししせいしりょうかん)は愛知県名古屋市東区白壁にある名古屋市の公文書館。名古屋城からは若干離れているが、名城公園の一部として扱われている。近代建築物が次々と取り壊されていく中、大正時代に建築された建物で現存する貴重なもの。重要文化財。見学無料。
目次 |
[編集] 沿革
- 1922年(大正11年)に「名古屋控訴院・地方裁判所・区裁判所」の庁舎として建設された。永らく名古屋高等・地方裁判所が置かれ、1979年(昭和54年)に高裁・地裁が中区三の丸に移転するまで中部地方の司法の中心であった。このため、名古屋市市政資料館の周囲には、今でも弁護士事務所、司法書士事務所が多い。
- 高裁・地裁の移転により、建物の取り壊しの話が持ち上がったが、名古屋の貴重な文化遺産として、いつまでも残してほしいとの市民の要望にこたえ、名古屋市は国(文化庁)や県の補助を受けて建物の保存・復原修理の工事を行い、名古屋市市政資料館として活用することとなった。
- 1984年(昭和59年)に「旧名古屋控訴院・地方裁判所・区裁判所庁舎」として国の重要文化財に指定され、建物の保存・復元工事の後、1989年(平成元年)から名古屋市市政資料館として公開されている。
- 「文化の道」の起点に位置付けられる建物。
- 館内の建物の模型の正面には菊の紋章がついているが、建物自体には付いていない。付近の住民の方の情報によれば、第2次世界大戦後に進駐軍が来る前に取り外されたとの事。
[編集] 建物
- 鉄筋コンクリート3階建で、煉瓦積みの壁に白い花崗岩の外壁を持つ。屋根小屋組は木造。内部の中央階段室はステンドグラスの窓や漆喰塗り・マーブル塗りによる仕上げが施された「ネオ・バロック様式」を基調とする洋風建築。煉瓦造りとしては最後期の大規模近代建築であり、現存する控訴院庁舎としては最古のものという事もあって1984年5月21日に重要文化財の指定を受けた。
- 設計 山下啓次郎氏(工事計画総推主任:司法技師。ジャズピアニスト山下洋輔氏の祖父)、金刺森太郎氏(設計監督工事主任:司法技師)、司法省営繕課(工事監督)
- 全国に8つ建設された控訴院のうち、現存するのは名古屋と札幌のみ。
[編集] ギャラリー
- 撮影に制限のある展示室があるので、撮影禁止の表示のしてある展示室をしたい場合は、事務室係員へ。
[編集] 事業概要
[編集] 建物展示
- 建物自体が「旧名古屋控訴院・地方裁判所・区裁判所庁舎」という重要文化財であり、外観や内部を創建当時の姿に復元し,建物の保存展示、及び資料展示を行なっている。
- 復原会議室(3階)は、この建物の中で最も格調高い部屋で、国の重要文化財に指定されており、一見の価値あり。約40畳の部屋に一枚織りの絨毯が敷かれている。シャンデリア、机、椅子などの調度品は、当時のものを残された資料や聞き取り調査により忠実に再現している。
- 中央階段室のステンドグラスは、建築時のもので復原されており、非常に美しく、日光のぐあいで趣が変化していく。
- 留置場(1階)を見学することもできる。
- 大正時代の窓ガラスが残っており、この窓ガラスを透して見る風景には趣がある(閲覧室の南西角の窓や喫茶室の窓など他にも随所に残っている)。
- 夜間は入館できないが、ライトアップされており、荘厳な印象を受ける。
- 市政資料館独自の来観記念スタンプがある。
[編集] 公文書館(閲覧室)
- 閲覧室(2階南西)は、公文書館としての役割を果たしており、名古屋市市政資料館の中心的な機能。
- 公文書館は日本ではあまり認知されていないが、公文書、行政資料、歴史資料を後世に残していくための施設であり、その役割は地味ながら重要なものである。名古屋市市政資料館は、名古屋市を中心とした資料を保存しており、「地域の記憶装置」であると言っても良い。様々な資料は、年月を経ることにより歴史的価値が生まれてくる。忘れ去られた歴史を発見できるかもしれない。
- 大半の資料は閉架。閲覧したい資料を目録で調べ、閲覧票に記入して係員に依頼。歴史的な資料を後世に残すため、貸し出しはしていない。
- 閲覧は無料(個人情報保護などのため利用できないものもあり)。コピー(一部複写できないものもあり)は1枚10円。コピーの代わりにカメラを持参して、資料を撮影することも可能。カメラの固定台あり。地図や図面などの傷みやすい資料については、カメラでの撮影が好ましい。
- 一般の方から学術・研究者まで利用者は幅広い。落ち着いた雰囲気の中で、利用ができる。
- 名古屋市市政資料館にしかない資料があり、資料を丹念に調べることで新たな発見があるかもしれない。
[編集] 公文書
- 1889年(明治22年)の市制施行後の公文書(完結後一定年数が過ぎた行政文書)を中心にして、歴史的・文化的価値のある市政資料を保存・公開している(外部リンクから公文書目録のダウンロードができる)。
- 平成18年12月1日時点で7,081簿冊を公開している。平成18年12月1日から新たに公開された公文書の簿冊が、外部リンクの目録に反映されている。
[編集] 行政資料
- 名古屋市が発行した刊行物は市政資料館で保存されることとなっており、事業概要、統計資料、各区の区誌など卒業論文や郷土史の素材として最適と思われる。大正時代からの古い新聞のマイクロフィルムも収蔵している。刊行物の量が膨大なため、外部リンクにはリストは掲載されていないとの事。平成18年12月1日時点で54,278冊を閲覧できる。
- 名古屋の歴史に関する図書などが閲覧室に配置してあり、親子で開架図書を読んでいる光景をよく見かける(開架図書の閲覧は申し込み不要)。
- 名古屋市の刊行物の中には、写真が掲載されているものもあり、昔の写真を発見する楽しみもある。
[編集] 市史資料
- 平成15年度からは、新修名古屋市史に関連する資料(古文書等)の複製資料を公開している。平成18年11月時点で979冊が公開されている(開架)。今後も分類・整理の終わったものから複製資料を新たに加えていく予定との事。古文書解読講座を受講しておられる方や古文書に興味のある方には、是非一度ご覧いただきたい。複写については、所蔵元が公開にあたっての条件を付しているものがあるため、全てが複写できるわけではない。
[編集] 司法展示
- 司法制度の資料や明治憲法下や現代の法廷・陪審法廷を再現展示しているほか、司法制度に関する資料展示を行なっている。2006年3月から名古屋高等裁判所の協力を得て裁判員制度に関する常設展示も開始した。
- 治憲法下から現代、裁判員制度までを展示しているため、大学の法学部などでの利用も多い。
- 金鯱の鱗の盗難事件の証拠物件が展示されている。
[編集] 市政展示
- 名古屋市の誕生から現代までの政治・経済・産業・文化などの出来事について、所蔵資料(写真パネルや複製資料など)で市政との関りに関する展示を行っている。名古屋市自体の歴史の系統的な展示はここだけ。
- 名古屋市の区域がどのように拡がってきたか、どのように産業が発展してきたかなどを知ることもできる。
- 名古屋市の歴史を知ることができるため、小中学校の総合学習での利用も多い。
[編集] 「大地の塔」資料展示
[編集] 集会室・展示室の提供(有料)
- 会議・集会・研究会・講習会および作品展示など、文化活動を行う場所を提供している。なお、重要文化財である為に使用にあたっては各種の制限がある(外部リンク先参照の事)。外部リンク先のページから集会室・展示室の予約状況を確認できる。
- 公共の施設のため使用料は安い。料金と建物の雰囲気のためか、常連の利用者が多いようである。
[編集] 新修名古屋市史の編纂
- 新修名古屋市史を編纂しており、本文編10巻は刊行済み。現在、本文編を読み解くための資料編を編纂中で、資料編近代1を刊行済み。新修名古屋市史は、名古屋の歴史を知る上で大変参考になる。
- 各巻4,500円。
- 市政資料館事務室で購入可能。
- 第22回「新修名古屋市史」を語る集いがウィルあいちで平成18年12月2日午後に開催され、資料編の自然、近代2の構想案について講演があった。
- 資料編 近代1 編集委員 小林賢治氏
- 目次
- 刊行済みの本文編
- 第1巻 旧石器~平安
- 第2巻 鎌倉~安土・桃山
- 第3巻 江戸時代前期
- 第4巻 江戸時代後期
- 第5巻 明治
- 第6巻 大正~昭和(戦前)
- 第7巻 昭和(戦後)
- 第8巻 自然編
- 第9巻 民俗編
- 第10巻 年表・索引(CD-ROM付)
[編集] インフォメーション
- 入館無料(集会室、展示室の使用申し込みは有料)
- 開館時間 午前9時〜午後5時
- 休館日
- 月曜日(祝日にあたる場合はその翌日)
- 毎月第3木曜日(祝日にあたる場合は第4木曜日)
- 12月29日〜1月3日
- 見学の順路が示してある。これに沿って見学することで、館内の展示をすべて見ることができる。中央階段室付近に置かれたパンフレット(無料)を参考に見学すると、より深くこの建物を知ることができる。
- 「文化の道」の案内パンフレット(無料)もあり、市政資料館見学後に徳川園や文化のみち二葉館までの「文化の道」を歩いて一日ゆったりと過ごすことができる。
- 団体での見学は事前に申し込むことにより、スタッフによる説明を受けられる(詳細は市政資料館に問い合わせのこと)。
- 小中学生の総合学習の一環として市政資料館の事業の説明を受けられる。事前に市政資料館に問い合わせが必要。
- 館内禁煙
- 喫茶室あり(コーヒー(280円)、サンドイッチなど。コーヒーはお値打ちだが市政資料館用のオリジナルブレンド。サンドイッチは結構なボリュームがある。)
- 結婚式
- 館正面玄関階段のステンドグラス前を利用して挙式が可能(詳しくは市政資料館へ問い合わせのこと。)。土曜日、日曜日、休日などの昼頃に挙式を見ることもできる。
- 歩こう文化の道 毎年11月3日に市政資料館を起点として開催。
- 館内には、小中学生向けのクイズがあり、小中学生が楽しみながら市政資料館や名古屋の歴史を学べる。市政資料館を訪れるほとんどの小中学生はクイズに挑戦しているようである。
[編集] アクセス
- 「市政資料館南」下車 北へ徒歩5分
- 「清水口」下車 南西へ徒歩8分
- 「市役所」下車 東へ徒歩8分
[編集] 所在地
- 名古屋市東区白壁1丁目3番地
- TEL (052)953-0051
- FAX (052)953-4398
- ウィルあいちの向かい側
- 外部リンクに所在地の地図あり。