医療経済学
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医療経済学(いりょうけいざいがく)は医療問題を扱う経済学の応用分野である。医薬品・医療保険・病院の株式会社化など、医療にかかわるさまざまなことを経済学の手法を用いて分析する。
[編集] 医療経済学が取り扱う問題
医療問題は経済的に見れば、医療というサービスに対する需要と供給の問題と考えることができる。医療サービスの特殊性から、それに関する需要と供給の一致を完全に市場機構にのみ委ねることはできず、政府の関与が必要である。
医療サービスは、いかなる機構によって供給されるべきか、また、その医療サービスの費用はどのように負担されるべきかが、医療経済学の中心問題である。すなわち、医療サービスの供給主体としては、公的医療機関か私的医療機関か、現実に採用されている医療供給機構としての医療保険についての諸問題、社会保障の対象としての医療に対する政府の関わり方、医療の費用とその負担の問題などが、具体的な問題となる。
さらに、医療サービスの生産(病院の活動など)における効率性の問題、医療産業に関する問題、医療の費用-便益分析などが取り扱われる。医療の費用-便益分析は、医療に対する費用配分が適正であるかどうかの検討のためのものであり、それに関連して、医療サービスの便益の評価、特に人間の生命の経済的価値の評価が問題とされる。
[編集] 医療サービスの需要と供給
医療サービスは、次のような特性を持つ。
- その需要は、人間の健康と生命にかかわるものであり、すべての人にとってきわめて必需性の高いものである。
- 個人にとって疾病や障害の発生、治療の効果、医療費の額などは予測不可能なものであり、不確実性を含有している。
- 人の健康や生命の価値は金銭に換算しがたく、医療サービスはきわめて非同質的なものであり、それに対する価格は確定しがたい。
以上のような特性から、このような医療サービスに対する需要の充足の問題を、完全に個人の自己責任に委ねておく場合には、個人の生活は常に不安定であり、特に低所得者は生活の保障を得ることが難しい。
社会保障が個人の生活の不安を除去ないし緩和することによって個人の生活を保障することを目的としている以上、医療がその対象となるのは当然である。社会保障の対象としては、この他に、失業や老齢などが挙げられるが、医療が最も大きな比重を占めている。
医療に関する社会保障の方式としては、個人に対する医療費の補助、全額公費負担による医療サービスの提供、医療保険などがある。