上野高等学校山岳部

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東京都立上野高等学校山岳部は、上野高校の部活動の一つ。かつては活動が活発だった時代があったが、最近生徒が集まらず休部状態で、事実上存在しない。カーボンナノチューブの発見者飯島澄男が所属していたので知られる。

[編集] 1955年頃の状況

上野高等学校山岳部はその全盛期、校舎の見晴らしの良い屋上の、天体観測用ドームを部室として使用していた。そのためもともと体育系のクラブなのに、自然観察好きの理科好きな子供も集まるという、一風変ったクラブであった。飯島澄男がその1人であった事は言うまでもない。

飯島澄男が高校当時の1950年代半ば、日本の科学界では、本田実の新彗星の発見の活躍が話題になっていた。当時本田は、チェコスロバキアのムルコスらとの間で、後の飯島の電子顕微鏡をも使用したフラーレンやカーボンナノチューブの研究の、外国人との間の先陣争いを彷彿とさせる、発見の一番乗り争いを演じていた。そして驚嘆すべきことに、しばしば外国勢を押さえて、一番乗りを果たす事があった。話題の少ない当時、天体望遠鏡による本田実の新彗星の発見は、日本では大いにニュースになったようだ。たとえば本田実は倉敷天文台で、飯島澄男が高校一年生であった1955年 7月の末、1955年第5彗星を単独で発見し「本田彗星」と命名されている。

本田実の活躍により、彗星の研究が助けられるため、東京天文台（現国立天文台）は本田実に続く若者を増やそうと、「新彗星には発見者の名が3人まで付く。」と宣伝し、天文台を揚げて啓蒙していた。更にそれを各地の科学館も応援した。特に熱心な啓蒙をした人物として1955年当時、彗星観測に力を入れ始めていた当時東京天文台の富田弘一郎や、東京都台東区上野の上野恩賜公園内にある国立科学博物館に勤務していた、後の理化学部長の村山定男の名があげられる。

他方当時東京都の教育委員会は、戦後の混乱がやっと収まりかけた時代の、苦しい財政事情のもとで、科学を振興するため、都立高校には、ドイツ製のかなり高価な小型望遠鏡を入れるなど、科学教育には破格の力をそそいでいた。また1955年時点で、光害はそれほどひどくなく、台東区内で天の川が見え、彗星も観測できる状態であった。

飯島澄男は後にその通りになるのだが、当時の上野高等学校山岳部の他の若者同様、「何か将来、とんでもない発見をして、自分の名を永久に残したい。」との情熱を持つ若者の1人に、この頃既に育っていたのであった。