ワンダフルライフ (書籍)
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『ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語』は、アノマロカリスに代表される古生代、約5億年前のカンブリア紀のバージェス動物群を紹介した書籍。著者の進化生物学者、スティーヴン・ジェイ・グールドが現在に子孫を残していない体制の動物たちを「奇妙奇天烈動物」と呼び、古生物学の見地から進化を一般向きに解説した早川書房刊行のベストセラー。
ただし、執筆から時間がたっており、現在もバージェス動物群とバージェス頁岩について研究が進められているため、本書の内容も最新の成果をもとに再検討する必要がある。
[編集] 評価と批判
この本は1989年当時のバージェス動物群の再評価プロジェクトを取り上げ、カンブリア爆発について焦点をあてている。グールドの饒舌な語り口によって古生物研究の魅力が語られており、進化を扱った書籍としては異例の大ベストセラーとなった。その影響は大きく、「カンブリアの大爆発」、「バージェス頁岩」、「アノマロカリス」といった言葉の知名度をあげた。それゆえ、それまでよりこの分野への研究助成金の申請が通りやすくなったという。[1] カンブリア爆発についての記念碑的な書籍といえる。
しかし、この本の中でグールドが述べている、カンブリア初期が生物の多様性(異時性)の最大地点で、その後は超えることがなかったという主張は出版当時から疑問が出されていた。特に奇妙奇天烈動物たちがそれぞれ別の新しい門といえるほど奇妙かどうかについては十分検討されているとはいえなかった。これについて最新の研究では、新しい門だと考えられていた生物が既存の門に分類できるという結果が出ており、グールドの主張は間違っていたという結論になっている。
グールドの主張はその当時のサイモン・コンウェイ・モリスの意見に強い影響を受けたものだった。しかし、10年後にサイモン・コンウェイ・モリスが著した『カンブリアの怪物たち』ではモリスは180度主張をかえており、グールドの主張(10年前のモリス自身の主張)を痛烈に批判している。グールドとモリスの批判合戦はその後『ナチュラル・ヒストリー』誌上で続くことになった。
グールドの「敵対者」リチャード・ドーキンスなどはモリスに好意的な書評を書いているが、この本に対する批判者も、この本の主張の大部分がモリス自身のかつての主張だったという点についてまで知るものは少なく、敵の敵は味方ということで動いているものも多いという。[2]
[編集] 版
- 原著:Gould S.J."Wonderful Life -The Burgess Shale and the Nature of the History-" Century Hutchingson ; ISBN 0393027058 ; (1989)
- スティーヴン・ジェイ・グールド 『ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語』早川書房 ; ISBN 4152035560 ; (1993/04)
- スティーヴン・ジェイ・グールド 『ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語』早川書房 ; ISBN 4150502366 ; (2000/03)