レンジローバー
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レンジローバー、レインジローヴァー「RANGE ROVER」(以下レインジローヴァー)はイギリスのランドローバー社で生産されている高級高品質マルチパーパスフルタイム4WD車であり、同社のフラッグシップモデルである。現行モデルは3代目で、2代目後期から当時親会社であったBMWの技術を一部導入し、現在ではフォード傘下の下に開発生産が行われ、そのグループで販売戦略上は世界的最高級SUVとして販売され、過去の名声の下、高級SUVとして不動の地位を維持している。
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[編集] 歴史
[編集] 初代
- 初代モデル(1970-1995)
1970年登場。英国ブリティッシュ・レイランドBRITISH LEYLAND(ランドローバーはその中の1ブランドだった)から発売されたフルタイム4WDのマルチパーパスヴィークル。当時の技術者、チャールズ・スペンサー・キング、スペン・キング「Charles Spencer King(Spen King)」等が中心となり、ランドローバー以上のオフロード性能を持ち、普段は高級乗用車と変わらぬ快適性を持つことを目標に開発されたまったく新しい概念の革新的車であった。はじめから海外でのノックダウン生産も考慮して設計が進められ、耐久性、メンテナンス性も考慮されていた。ラグジュアリーカー、エステイトカー、パフォーマンスカー、クロスカントリーカーの四つの車の役割を1台の車で可能にすると謳われ、各国で好評を博した。オンロードとオフロードでの走りを真剣に考慮し設計された初めての車であるが、2代目以降のレインジローヴァーを含めても本当の意味でこれに追随した車は現在に至るまで皆無と言わざるを得ない。
[編集] シャシー、ボディ
虚飾を排してシンプルな設計に徹した初期型のボディは、2枚のドアと上下2分割式の頑丈なテールゲートを持つ。強固な2mm厚ボックスセクションの2本のサイドメンバーと5本のクロスメンバーからなる剛性の高いフレームに、ゴムブッシュを介して鋼板製スケルトンボディを載せている。このボディにアルミ製のドア、フェンダー、ルーフが取り付けられ、車体の軽量化、防錆対策に貢献している。スペアタイヤを車室内に縦配置するとともに、駆動部品を適切に配置しシャシーフレーム及びボディを適切な形に設計することで、悪路での障害物による損傷を防いでいる。アプローチアングル42°、ランプアングル150°、デパーチャーアングル30°を確保。ホイールベースは100インチで、大人5人がゆったりと室内でくつろぐことが可能でありながら、初期型は全長4470mm、全幅1780mm、全高1780mm、車重1700kg台前半と意外とコンパクト、軽量である。
[編集] パワーユニット
GMから製造権を買い取ってローバーP-5に載せていた軽量な総アルミブロックV8OHV3528ccエンジンを採用し、発表当時としては優れた静粛性と 155km/hのクルージングを可能にしていた。このトルクフルで頑強なエンジンは当初はキャブレイター式3.5リッターであったが後には燃料噴射式となり排気量も3.9リッターから初代の最終型では4.2リッターにまで拡大される。またエンジンが鋳鉄ブロックの4気筒よりも軽いことにより前後の重量配分が50:50となっており、結果としてオンロードでの旋回性能やオフロードでの走破性を良好にしている。またエンジンが短いことが前述のように広い車室の獲得にもつながっている。
[編集] サスペンション
耐久性とオフロード性能を第一に追い求めたため前後輪ともコイルスプリングによるリジッドアクスルを採用。長いホイールストロークを確保し柔らかく長いコイルバネにより良好な乗り心地と卓越した悪路走破性を実現している。またオンロードでのコーナリング時のロールに対しては、ホイールストロークを阻害するスタビライザー は採用せず、フロントにあらたに3リンクのリーディングアーム式システムを開発した。長いストロークを確保しながら、それ自体がロールを規制するこの方式はその後のオフロードヴィークルに多大な影響を与えた。またリアは重い荷物を積んだときにも車を水平に保つ機械式レベリングユニットを組み込んだセンターAアームと2本のトレーディングアームにより長大なストロークを確保している。これは現在に至っても最も優れた地形追従性を持ったサスペンションシステムで、他の追従を許さない。
タイヤは205R16という必要充分なもので、5.64mという最小回転半径と良好な乗り心地を実現している。 1991年から高速安定性を求めてスタビライザーが装着されたり、1993年から4駆として世界で初めてエアサスペンションを採用するという、革新的な足廻りとなるが、その動きは従来のコイルに及ぶことはなく、挙動も不自然で耐用性にも乏しい物であった。
[編集] フルタイム式4WD
フルタイム式4WD車としてはジェンセン C-V8 FF に次いで史上2台目だが、オフロードを前提とした車ではもちろん初である。
使用しているトランスファーギヤボックスは1988年までのマニュアル式デフロック型、それ以降のビスカス式デフ作動制御型、ともに2段変速だが、そのHi/Loギヤ比が約2.7倍と大きな物で悪路での極低速走行を可能にしている。
マニュアル式トランスファー ”Hi/Loのどちらを選んでもセンターデフの差動をフリー/ロックが出来る。”
ビスカス式トランスファー ”最近のセンターデフを持たないフルタイム式とは違い、前後差動は普通のデファレンシャルを持ち、その前後差動制御の為にビスカスを追加していると言う贅沢な物である。”
[編集] ブレーキ
開発当初から複雑でコストのかかる(フロントキャリパー内の4本のピストンの油圧も二分割している完全分離型の2系統配管を持つ)4輪ディスクブレーキを搭載。大径ローターにフロント対向4ピストン、リア対向2ピストンが標準装備される。また駐車・非常用ブレーキとしては大径のドラムブレーキをトランスファーの出力部に独立したブレーキとして備えている。
[編集] その他
- 英王室を始めとして多くのセレブリティーに愛用された。
- 2ドアモデル4ドアモデル共に機能を追求したシンプルで美しいラインで構成され、工業製品として唯一ルーブル美術館に展示された事は有名である。
- パリダカラリーにおいて第1回1979年と第3回1981年優勝を飾っている。
- キャメルトロフィー本戦用車両として3回採用された。1981年 スマトラ 2Dr. V8. 3.5L. Carb. 1982年 パプアニューギニア 2Dr. V8. 3.5L. Carb. 1987年 マダガスカル 4Dr. VMTurbo-D. 2.4L
- この100年間に、世界で生産されたすべての車の中から、最も傑出した車を選び出し、その製造者と設計者を讃えようという"Car of the Century"の選考27台に選出された。70年代以降に登場した車で選出されたのは、他に"VW Golf1974年" "AUDI Quattro1980年" "Renault Espace1984年" の3台であった。
[編集] 年表
- 1970年6月7日 初代レインジローヴァーデビュー。
- 1977年 フェンダーミラーからドアミラーへ変更される。
- 1979年 ブラックバンパーへ変更。パワーステアリング標準装備。エアコンオプション設定。
- 1980年 4ドアモデルモンテヴェルディ限定販売される。これはスイス「モンテヴェルディ」社を経営していた実業家、ピーター・モンテヴェルディがホイールベースを伸ばさず4ドアにするアイデアを提案したもので、これを市販化。BLは1972年に4ドアのプロトタイプを作製していたが、資金難で実現できなかった。また技術陣はシンプルさを旨としていたので4ドア化に積極的ではなかった。
- 1981年 市場の声に答えてモンテヴェルディをリファインし4ドアが量産化される。ライトブルーメタリックの特別色にドアのウッドトリムや荷室のフルカーペットを装備したIN VOGUEモデル(2ドア、1,000台限定)がリリースされる。
- 1982年 ランドローバー社がBLから独立し、資金繰りが楽になる。オートマティックトランスミッション(3速)登場。
- 1983年 5速マニュアルギアボックス登場。
- 1984年 VOGUEモデル再登場し量産モデルとなる。
- 1985年 4段オートマティックミッション登場。
- 1987年 革シートのトップモデル「VOGUE SE」登場。北米で販売開始。以後、北米市場に合わせて、豪華プレスティージ路線へひた走ることになる。
- 1988年 3.9リッターエンジン登場。ABS採用。手動デフロックに換えて、ビスカス式センターデフ制御型トランスファーギアボックス採用。
- 1989年 高価格化とプレスティージ化に伴い、日本のオフロードヴィークルに価格面で対抗する為、レインジローヴァーのシャシーから機械式レベリングユニットを省き各部をコストダウンしたディスカバリーを発売する。国内では1991年より販売。1996年にはレインジローヴァーとほぼ同じ足回りのディスカバリーが300万円を切って販売され、非常にお買い得ともいえた。7人乗り仕様があり荷室も広く実用性は高かった。しかしデパーチャーアングル、重心高はレインジローヴァーには劣っていた。
- 1990年 最高級仕様(VOGUE SE仕様)のみがローバージャパンの手により日本で正規に輸入される
- 1992年 4.2リッターエンジンを搭載したロングホイールベースモデル(日本名バンデンプラ、ホイールベース108インチ)発売される
- 1994年 2代目が発表発売されるが、世界中の熱烈なファンから惜しまれ、レインジローヴァ−クラシックとして2代目と併行して生産継続される。1996年 生産終了。
総生産台数 317,615台。
日本を代表する自動車評論家の小林彰太郎氏、日本で最も信頼できる4輪駆動車専門雑誌「CCV」編集長石川雄一氏、両名はこの車を高く評価し、自らも所有するとともにこの車の日本における知名度向上に貢献した。また高品質であった事から、非常に生存率の高い車両で日本国内にも愛好者は多く、現在でも優れた4輪駆動車としてその名声は2代目3代目より遥かに高い。 英国車特有の良く壊れると言う間違った風潮があるが、実際はきわめて丈夫な車で、適切で基本的なメンテナンスを怠らなければ、実用に何ら問題が無い。
部品等も本国では潤沢に供給されていて価格も初代モデルのものが最も安価である。
このような情報を共有する為に、この初代モデルに限ったCRRC(クラシックレインジローヴァ−クラブ)という、本当の単一車種のワンメイク愛好者クラブが国内に存在し、多くの愛好者達が交流を図っている。
[編集] 2代目
[編集] 3代目
- 2002年モデルチェンジ実施により登場。当初はBMWが開発していたが、BMWのローバー売却、フォードのランドローバー獲得にからんで、フォードが開発を引き継いだ。
- 2005年に一部変更がされ、日本仕様には左フェンダーにサイドアンダーミラーが装着された。法規上、仕方がないとはいえ、この突起物がレンジローバーのスタイリングをスポイルしているとの声が多い。