モレキュラーシーブ
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モレキュラーシーブは溶媒等の乾燥に用いられる乾燥剤の一種。俗称で「モレシー」と呼ばれたりもする。
ゼオライトの一種で、多孔質の空孔に水分子を吸着することで乾燥する。3A、4Aと表記されるがおおよその空孔の大きさ(オングストローム)をあらわしているので、乾燥する溶媒分子を考慮して適切なものを用いる必要がある。4Aのほうが乾燥力が大きいが、アセトニトリルやエタノールはモレキュラーシーブの空孔に入り込み熱を発生するし、顆粒が崩壊して細かい粉を生ずるので3Aが適当である。メタノールは3Aでも厳しい。
真空ポンプで引いたまま300~400度で一晩加熱して活性化したモレキュラーシーブは高い脱水能力を持つが、市販品はある程度、水を吸着しているので脱水能力はそれほど高くはない。活性化は手間なので、市販の状態で無水蒸留の前処理や保存する際の乾燥剤として使用する場面が多い。
溶媒中を拡散する水を捕捉するので、ビンの底にモレキュラーシーブを静置していても中々乾燥しない。カラムに詰めて溶媒をゆっくり流すとかなり迅速に乾燥が可能である。(モレキュラーシーブの外面を流れてくる最初の流分は捨てるのがコツ)
また、脱水反応の際に生成する水分子を取り除き、反応を進行させるのに用いられることもある。
生物学では免疫染色等を行う際に用いる有機溶媒を脱水する際に用いられる。この場合脱水は化学で要求されるよりも厳密ではなく、以下のような手法で行われる。市販のモレキュラーシーブスを150 g、100 ml の溶媒に投入。一晩放置したものを100%溶媒とする。再利用時には蒸留水で洗浄後、乾燥庫で十分に乾燥(乾燥が不十分だと次の段階で溶媒が危険なことに)。乾熱滅菌器で200度C、2時間加熱したものを同様に使用する。