バリオン
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バリオン(baryon: 重粒子)とは、ハドロンの一種である。
陽子、中性子(二つ合わせて核子と呼ばれる)、そしてたくさんの不安定でより重い粒子(重核子(ハイペロン)と呼ばれる)を含む。「バリオン」とはギリシャ語のbarys(「重い」の意)に由来する。この名はバリオンが、発見当時素粒子と考えられていた他の主な粒子の中でより大きな質量を持つことからついた。
バリオンは、メソンとともにハドロンに属する。バリオンは、3つのクォークから構成される。最もありふれたバリオンは核子(陽子と中性子)で、アップクォークとダウンクォークからなる。アップクォーク、ダウンクォーク、ストレンジクォークからなるバリオンはハイペロンと呼ばれる。
バリオンは強く相互作用するフェルミ粒子である。言い換えると、強い核力を受けていて、パウリの排他原理に従うすべての粒子に適応されるフェルミ・ディラック統計によって記述される。これは、パウリの排他原理に従わないボース粒子とは大きく異なる。
核子(N粒子とも)以外のバリオンには、デルタ (Δ) 粒子、ラムダ (Λ) 粒子、シグマ (Σ) 粒子、グザイ(カスケード)(Ξ) 粒子、オメガ (Ω) 粒子、がある。
なお医療分野においては、(相対的な表現ではあるが)陽子より大きな質量を持った原子核からなるイオン線を重粒子線と呼んでいる。その重粒子と、この項で述べられているバリオンは違うので注意が必要である。粒子物理学者がバリオンのことを重粒子と和訳で呼ぶことは現在ではほとんどなく、英語名のままバリオンと呼んでいる。
[編集] 主なバリオン
名称 | 記号 | 構成 | 静止質量 (MeV) | 平均寿命 (s) | 発見年/発見者 |
---|---|---|---|---|---|
陽子 | p | uud | 938.27203![]() |
1031から 1033 年 より大きい (モデル依存性あり) | 1911年、アーネスト・ラザフォード |
中性子 | n | udd | 939.56536![]() |
885.7![]() |
1932年、ジェームズ・チャドウィック |
Δ粒子 | Δ++ | uuu | Breit-Wigner型の質量分布を仮定すると 1230から1234 |
(1.58から1.72)![]() |
|
Δ+ | uud | ||||
Δ0 | udd | ||||
Δ- | ddd | ||||
Λ粒子 | Λ | uds | 1115.683![]() |
(2.632![]() |
1947年、ロチェスター、バトラー |
Σ粒子 | Σ+ | uus | 1189.37![]() |
(0.8018![]() |
1953年、ミラノグループ |
Σ0 | uds | 1192.642![]() |
(7.4![]() |
1953年、フォウラー等 | |
Σ- | dds | 1197.449![]() |
(1.479![]() |
1953年、フォウラー等 | |
Ξ粒子 | Ξ0 | uss | 1314.83![]() |
(2.90![]() |
1959年、アルバレス等 |
Ξ- | dss | 1321.31![]() |
(1.639![]() |
1952年、バトラー、マンチェスターグループ | |
Ω粒子 | Ω- | sss | 1672.45![]() |
(0.821![]() |
|
Λc粒子 | Λc+ | udc | 2284.9![]() |
(200![]() |
|
Λb粒子 | Λb0 | udb | 5624![]() |
(1.229![]() |
- 参考文献
- Review of Particle Physics, S.Eidelman, et al., Phys. Lett. B 592, 1 (2004).