ドン・キホーテ
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ドン・キホーテ (Don Quijote, Don Quixote ) はスペインの作家、ミゲル・デ・セルバンテス (Miguel de Cervantes Saavedra、1547 - 1616) の小説、または、その主人公の名前。
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[編集] 小説
騎士道物語(当時のヨーロッパで流行していた)を読み過ぎて妄想に陥った郷士(下級貴族)の主人公が、自らを伝説の騎士と思い込み、「ドン・キホーテ・デ・ラマンチャ」(「ドン」は郷士より上位の貴族の名に付く;「デ・ラマンチャ」は彼の出身地のラマンチャ村を指す)と名乗り、痩せこけた馬のロシナンテにまたがり、従者サンチョ・パンサを引きつれ遍歴の旅に出かける物語である。
旧態依然としたスペインなどへの批判精神に富んだ作品で、風車に突進する有名なシーンは、スペインを象徴する騎士姿のドン・キホーテがオランダを象徴する風車に負けるという、オランダ独立の将来を暗示するメタファーであったとする説もある。(スペインの歴史、オランダの歴史を参照)
主人公の自意識や人間的な成長などの「個」の視点を盛り込むなど、それまでの物語とは大きく異なる技法や視点が導入されていることから、最初の近代小説ともいわれる。年老いてからも夢や希望、正義を胸に遍歴の旅を続ける姿が多くの人の感動をよんでいる。
また、聖書の次に世界的に出版されており正真正銘のベストセラー小説でもある。2002年5月8日にノーベル研究所と愛書家団体が発表した、世界54か国の著名な文学者100人の投票による「史上最高の文学百選」で一位を獲得した。
[編集] 構成
1605年に出版された前編と、1615年に出版された後編がある。
前編の正式な原題は El ingenioso hidalgo Don Quijote de La Mancha(英知あふれる郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ)といい、出版した年だけで6版を数え、1612年には早くも英訳が、1614年に仏訳が登場した。作中作「愚かな物好きの話」など、本編とは関係の無い(と思われる)話が多く挿入されている。
後編はSegunda parte del ingenioso caballero Don Quijote de La Mancha(英知あふれる騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ)となって1615年に出版された。また前年に出版された贋作の『ドン・キホーテ』に対抗して、この小説の後半で行き先をサラゴーサからバルセロナに変更している。前編の寄り道を作者自身反省して、脱線を無くしている。前編が出版されて世に出回っている(小説を読んでドン・キホーテやサンチョのファンになった公爵夫妻らが登場する)というメタフィクションの構造を持つ。
[編集] 贋作『ドン・キホーテ』
1614年、アベリャネーダと名乗る人物が『ドン・キホーテ』の続編を発表した。だがこれはセルバンテスが書いたものでもなければ、許可を取ったものでもない。すでにベストセラーとなっていた『ドン・キホーテ』の名前を利用しただけの贋作である。セルバンテスは『ドン・キホーテ』後編の中で、この贋作が『ドン・キホーテ』前編とは無関係であることを何度も主張している。
アベリャネーダの正体は300年以上謎のままであったが、現在では1988年マルティン・デ・リケールが提起したヘロニモ・デ・パサモンテ説が定説となっている。この人物は後述するヒネス・デ・パサモンテのモデルになった人物であり、セルバンテスとともにレパントの海戦を戦って捕虜になったアラゴン人である。
[編集] 主な登場人物
- ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ
- 本編の主人公。本名アロンソ・キハーナ。 : もとはラ・マンチャに住む郷士であったが、騎士道物語の読み過ぎで現実と物語の区別がつかなくなり、遍歴の騎士として世の中の不正を正すために旅に出る。自分をとりまく全てを騎士道におきかえて認識して暴れ回り次々とトラブルを巻き起こすが、騎士道に関係しないところではいたって理性的で思慮深い人物。もっとも尊敬する騎士はアマディス・デ・ガウラである。二つ名は「憂い顔の騎士」もしくは「ライオンの騎士」。
- サンチョ・パンサ
- 「パンサ」は「太鼓腹」の意。もとはドン・キホーテの近所に住んでいた農夫だったが、「将来島を手に入れたあかつきには統治を任せる」というドン・キホーテの約束に釣られ、彼の従士として旅に同行する。性格はいたって平和的・呑気な正直者で人に騙されやすい。奇行を繰り返すドン・キホーテに何度も忠告をするが、大抵は聞き入れられず、主人とともにひどい災難に見舞われる場合がほとんどである。無学で愚鈍な印象があるが、さまざまな諺をひいたり機智に富んだ言い回しをしたりしてドン・キホーテを観察する評論家のような一面も存在する。
- ドゥルシネーア・デル・トボーソ
- アルドンサ・ロレンソというトボーソ村の田舎娘をもとにした、ドン・キホーテの想像上の思い姫。ドゥルシネーアの美しさ・気だてのよさ・その他の美点を世界中の人々に認めさせるのがドン・キホーテの遍歴の目的のひとつである。
- 司祭
- 本名ペロ・ペレス。ラ・マンチャに住む、ドン・キホーテの友人。騎士道に執着するドン・キホーテをラ・マンチャに連れ戻し、正気に戻すためにさまざまな思いをめぐらす。
- ニコラス親方
- 同じく、床屋を営むドン・キホーテの友人。
- ヒネス・デ・パサモンテ
- 泥棒の罪で囚人となり、ガレー船送りにするため連行されていたところをドン・キホーテに助けられるが、他の囚人とともにドン・キホーテを袋叩きにして去る。
- シデ・ハメーテ・ベネンヘーリ
- モーロ人(アラビア人)の歴史家であり、『ドン・キホーテ』の原作者。作中に直接登場することはない。『ドン・キホーテ』はシデ・ハメーテの記録をセルバンテスが編纂したものであると作中では説明されているが、実際にはシデ・ハメーテは架空の人物であり、『ドン・キホーテ』は完全にセルバンテスの創作である。
- 公爵夫妻
- 本名は不明。後編にて登場。すでに出版されていた『ドン・キホーテ』前編のファンで、ドン・キホーテ主従を厚く歓待しつつ、様々な方法で彼らにイタズラを仕掛ける。
- 学士
- 本名サンソン・カラスコ。後編にて登場。みずから「鏡の騎士」を名乗る遍歴の騎士に扮し、ドン・キホーテと一騎打ちをして遍歴を止めようとする。
[編集] 音楽
同名の小説を題材にしたリヒャルト・シュトラウスの管弦楽作品がある。 ドン・キホーテ (交響詩)を参照。
[編集] 映画・演劇
映画化作品としてはG・W・パプスト監督の『ドン・キホーテ』(1933年-フランス) が有名。
演劇作品としては、アメリカの作家デイル・ワッサーマンが脚色した1965年初演のミュージカル、『ラ・マンチャの男』が有名である。この作品は、『ドン・キホーテ』をストレートにドラマ化するのではなく、作者のセルバンテスが教会侮辱の罪で捕らえられた後の牢獄が舞台となっている。この牢獄で、牢名主に『ドン・キホーテ』の原稿を取り上げられそうになったことから、セルバンテス自身がドン・キホーテを演じて理解を求める、という重層的な構造とされている。日本でもミュージカルの舞台として上演されており、松本幸四郎 (9代目)の当たり役として評価が高い。1972年には映画化されている。
[編集] バレエ
音楽はレオン・ミンクス。 クラシックバレエのドン・キホーテでは、ドン・キホーテは主役として扱われていない。 踊る場面もなく、物語の端々に登場するだけの存在であり、物語の中心は若い男女の恋物語となっている。
- プロローグ
- 書斎で騎士物語を読みふけるドン・キホーテは次第に現実と空想の境目がなくなり、サンチョ・パンサを従者に、物語の中に出てきたドルシネア姫に会いに旅に出る。
- 第一幕
- 舞台はスペインの市場。床屋の息子バジルと宿屋の娘キトリは愛し合っているが、父親はキトリを金持ちのガマーシュと結婚させたい為、二人の仲を許してくれない。闘牛士達も現れ、活気づく街に突然風変わりな風貌のドン・キホーテ一行が現れる。ドン・キホーテはキトリをドルシネア姫だと思い込んでしまう。
- 第二幕
- 市場の騒動の合間にバジルとキトリは駆け落ちし、ロマの宿営地にたどりつく。二人を追いかけてドン・キホーテ達もやってくる。やがて、ロマたちによる人形劇がはじまるが、ドン・キホーテは人形劇に登場する悪者を敵と勘違いし台無しにし、仕舞には風車を巨大な敵だと勘違いして突撃し、意識を失う。意識を失ったドン・キホーテは夢の中でドルシネア姫に会う。**舞台は居酒屋にうつる。どうしても結婚を認めないキトリの父に対し、バジルは狂言自殺をし、その演技に騙され父親は結婚を認めてしまう。
- 第三幕
- キトリとバジルの結婚式が盛大に行われる。ドン・キホーテはドルシネア姫を探してまた旅に出る。