ダーク・タワー
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『ダーク・タワー』(The Dark Tower)は、スティーヴン・キングの長編小説。全7部構成。
キング自身ライフワークと称する作品で、アメリカの西部開拓時代を思わせる荒廃した世界(中間世界)を舞台に、「最後のガンスリンガー」であるローランドと仲間たちの壮大な旅を描く。
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[編集] ストーリー
変転し、なにもかもが失われていく世界を舞台に、「最後のガンスリンガー」であるローランドが暗黒の塔を探索するという物語。「暗黒の塔」は存在するすべての世界と宇宙を中心でつなぎとめていると言われ、この「塔」が傾き始めたことが世界の変転の原因である。ローランドの目的はこの「塔」を見つけて修復することであった。途中、様々な人物と出会い、時に旅の仲間を得ながら探索を続けるローランドだが、様々な困難が彼ら「カ・テット」(運命をともにする仲間)にふりかかることになる。
第1部のあらすじ(参考) 暗黒の塔の手がかりを持っているという黒衣の男=ウォルターを追跡するローランドと、追跡の途上で出会った少年、ジェイクの旅が語られる。旅を続けるにつれ二人は親密になっていく。
[編集] 主要登場人物
- ローランド・デスチェイン(Roland Deschain)
- 主人公。最後のガンスリンガー。
- エディ・ディーン(Eddie Dean) 第2部以降
- 元麻薬中毒者。ローランドの仲間となり、ガンスリンガーとなる。
- スザンナ・ディーン(Susannah Dean) 第2部以降
- 事故で足を無くした多重人格の女性。エディの妻となる。
- ジェイク・チェンバーズ(Jake Chambers)
- ローランドが一度見捨てた少年。タッチ能力がある。
- ドナルド・キャラハン(Donald Callahan) 第5部以降
- もとセイラムズ・ロットという町の神父。実はキングの『呪われた町』の登場人物。
- 黒衣の男、不老の異邦人、リチャード・ファニン、ランドル・フラッグ、..etc(Ageless Stranger 、 The Man in Black)
- ローランドの仇敵。
- コート(Cort)
- ローランド カスバート アランの師
- カスバート・オールグッド(Cuthbert Allgood)
- ローランドの友人。すでに故人。
- アラン・ジョンズ(Alain Johns)
- ローランドの友人。すでに故人。
- スーザン・デルガド(Susan Delgado)
- ローランドの初恋の相手。すでに故人
[編集] 作品解説
キングは、まだ大学生であった1970年ごろから構想をあたためており、ロバート・ブラウニングの詩『チャイルド・ローランド』を読んだことが、構想を得たきっかけであったという。また、『ザ・スタンド』同様、J・R・R・トールキンの『指輪物語』にも影響を受けている。
この小説について重要なのはほかのキングの多くの小説は、本編とのつながりを持っていると言うことである。特に関係が深いものとして、『呪われた町』、『ザ・スタンド』、『タリスマン』、『不眠症』、『ブラック・ハウス』、『レギュレイターズ』、『ドラゴンの眼』などがあげられる。これらのリンクは作品において非常に重要であることもしばしばで、物語の展開にも深く関わっている。実は、他の作品で描かれた不吉な現象のほとんどが、世界を秩序立てる塔(タワー)が崩壊しようとしていることが元凶なのである。つまり、この塔を修復することで再び元通りの世界を取り戻せるかもしれないのだ。そしてローランドは、塔を修復するという、本人にとっては強迫観念に近い目的から、あてどのない旅を続けているのである。
[編集] 構成・出版
- ダークタワーI ガンスリンガー (The Gunslinger) 1982年、加筆版は2003年
- ダークタワーII 運命の三人 (The Drawing of the Three) 1987年
- ダークタワーIII 荒地 (The Waste Lands) 1991年
- ダークタワーIV 魔道師と水晶球 (Wizard and Glass) 1997年
- ダークタワーV カーラの狼 (Wolves of the Calla) 2003年
- ダークタワーVI スザンナの歌 (Song of Susannah) 2004年
- ダークタワーVII 暗黒の塔 (The Dark Tower) 2004年
[編集] 邦訳
当初角川書店から池央耿の訳で第1、2部が、風間賢二の訳で第3、4部が刊行されていたが、アメリカで出版が滞ったため、中断された。その後、2003年になってアメリカで続巻の出版が始まったため、2005年からすべて風間の訳で統一され、新潮文庫から刊行が開始された。この新潮文庫版の第1部『ガンスリンガー』の邦訳は、流麗な文体で定評のある池央耿の旧訳を参考にしている。ただし、キング自身が全巻を書き終えたのちに、矛盾を取りのぞくために『ガンスリンガー』を一部改訂したため、全く同じ物を改訳したというわけではない。だがそうはいっても、第1部は執筆当初の文章をそのまま生かした格調高い文体である。また、原書では愛蔵版に付されている挿絵が、新潮文庫版に収録されている。挿絵は毎巻別のアーティストによって描かれ、かなり豪華な仕様である。新潮文庫版のカバーについては、すべてスティーブ・ストーン(Steve Stone)の手によるものだが、第5部以降は日本限定である。
- 新潮文庫版
ダーク・タワー
- I ガンスリンガー ISBN 4102193391(2005年12月)
- II 運命の三人
- 上 ISBN 4102193405(2006年1月)
- 下 ISBN 4102193413(2006年1月)
- III 荒地
- 上 ISBN 4102193421(2006年2月)
- 下 ISBN 410219343X(2006年2月)
- IV 魔道師と水晶球
- 上 ISBN 4102193448(2006年3月)
- 中 ISBN 4102193456(2006年3月)
- 下 ISBN 4102193464(2006年3月)
- V カーラの狼
- 上 ISBN 4102193472(2006年4月)
- 中 ISBN 4102193480(2006年4月)
- 下 ISBN 4102193499(2006年4月)
- VI スザンナの歌
- 上 ISBN 4102193537(2006年8月)
- 下 ISBN 4102193545(2006年8月)
- VII 暗黒の塔
- 上 ISBN 4102193553(2006年10月)
- 中 ISBN 4102193561(2006年11月)
- 下 (2006年12月末日発売予定)
- (外伝)エルーリアの修道女 (The Little Sister of Eluria) 短編集『第四解剖室』所収
[編集] 外部リンク
- The Dark Tower Official Web Site(ダーク・タワー公式サイト)