シクロアルカン
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シクロアルカン (cycloalkane) とは、一般式 CnH2n (ただし n ≧ 3)であらわされる脂環式有機化合物の総称である。シクラン (cyclane)、シクロパラフィン (cycloparaffin)、ポリメチレン (polymethylene) などと呼ばれることもある。シクロアルカンは3つ以上のメチレンから構成された単環化合物であり、環の大きさにより小員環 (n = 3, 4)、中員環 (n = 8—11)、大員環 (n > 12) に分類される。
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[編集] バイヤーの張力説
一般に小員環あるいは中員環シクロアルカンは相当する鎖式炭化水素と比べ異なる反応性を示し、それはシクロアルカンの立体化学(立体配座)に由来する。例えばシクロプロバンは容易に熱分解されプロペン CH2CH=CH2 に環開裂する性質を示す。かつてはシクロアルカンは平面構造をとると考えられていたのでアドルフ・フォン・バイヤーは「張力説」 (strain theory) を提唱し(1895年)、sp3 混成軌道の正四面体構造結合角と正多角形の結合角の差によって生じる歪が結合エネルギーを不安定化させると考えた。しかし実際はシクロプロパン以外のシクロアルカンは単一平面上にメチレン炭素が配置することがなく、その結果結合角は正四面体構造とさほど相違がないことが明らかになっている。すなわちバイヤーの張力説は必ずしも正しいものではなかったが、立体配座と内部エネルギーとの関係を明らかにする原動力となり、立体化学あるいは配座解析のさきがけとなった。
[編集] 合成法
有機合成的には種々の方法でシクロアルカンあるいはその誘導体が合成されるが、3員環(シクロプロパン)は環の歪みが大きいため、一般的な環構築反応では構築できずシクロプロパンに固有な合成法によることが多い。また、中員環から大員環とサイズが大きくなるにつれて、反応分子の立体配座の自由度が大きくなることで、反応点同士が近づく機会が減少し、分子内ではなく複数の反応分子間での反応が協奏するようになる。したがって、一般には中員環から大員環の合成は高度希釈条件化で分子間反応を抑制する必要がある。
次に、シクロアルカンの一般合成法として、ジハロゲノアルカンとマロン酸エステルの環化反応の例を示す。
一般に、マロン酸エステルのエノラートを用いたアルキル化はモノアルキル体で停止させることは難しく、速やかに二段階目のアルキル化が進行する。環化反応で生成したシクロアルカンジカルボン酸エステルを加水分解すると、gem-ジカルボン酸は容易に脱炭酸反応するのでシクロアルカンカルボン酸が得られる。あるいはさらに脱炭酸してシクロアルカンへと導くこともできる。
[編集] 主なシクロアルカン
[編集] シクロプロパン
Cyclopropane, 分子式 C3H6、分子量42.08、トリメチレン (trimethylene) とも呼ばれる。融点 −127℃、沸点 −33 ℃、CAS登録番号は 75-19-4。常温で無色の気体で 4—6 気圧に加圧すると液化する。麻酔作用を持つが爆発性があり(空気中の爆発限界 2.4%–10.3%)、酸素と混合ガスを保存してはならない。常温で2.7倍の体積の水に溶解し、エタノール、アセトンに可溶である。
[編集] シクロブタン
Cyclobutane, 分子式 C4H8、分子量56.11、テトラメチレン (tetramethylene) とも呼ばれる。融点 −80 ℃、沸点 13 ℃、CAS登録番号は 287-23-9。常温で無色の可燃性気体で、エタノール、アセトンに可溶、水に不溶である。
構造式では正方形で書かれるシクロブタンであるが、実際には4つの炭素原子は同一平面上に無く、約25°の角度で折れ曲がった構造を取る。そのため炭素骨格の結合角はほぼ 109°であり、通常のシクロアルカンの結合と同様である。
前述のように 1,3-ジブロモプロパンとマロン酸ジエステルとの環化反応により構築することができる。あるいはシクロプロパン誘導体が光条件下、[2+2] 環状付加反応によって合成される場合もある。
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[編集] シクロペンタン
Cyclopentane, 分子式 C5H10、分子量 70.14、ペンタメチレン (pentamethylene) とも呼ばれる。融点 −94.4 ℃、沸点 49.3 ℃、CAS登録番号は 287-92-3。常温では無色の低沸点液体。水に不溶であるが、エタノール、アセトンなど多くの有機溶媒に可溶である。石油精製の石油エーテル留分に含まれるものを精製するか、シクロヘキサンをアルミナ触媒で高温高圧下、接触分解して製造される。
前述のように1,4-ジブロモブタンとマロン酸ジエステルとの環化反応により構築することができる。
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[編集] シクロヘキサン
Cyclohexane, 分子式 C6H12、分子量 84.16、ヘキサヒドロベンゼン (hexahydrobenzene)、ヘキサメチレン (hexamethylene)、ヘキサナフテン (hexanaphthene) とも呼ばれる。融点 6.47 ℃、沸点 80.7 ℃、CAS登録番号は 110-82-7。
記事 シクロヘキサン の項に詳しい。
[編集] シクロヘプタン
Cycloheptane, 分子式 C7H14、分子量 98.19、融点 −12 ℃、沸点 118.5 ℃、密度 0.811 g/cm3、CAS登録番号は 291-64-5。引火点 6 ℃の可燃性液体。
前述のように1,4-ジブロモヘキサンとマロン酸ジエステルとの環化反応により構築することができる。
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[編集] シクロオクタン
Cyclooctane, 分子式 C8H16、分子量 112.22、融点 10–13 ℃、沸点 151 ℃、密度 0.843 g/cm3、CAS登録番号は 292-64-8。引火点 30 ℃の可燃性液体。