ウラジロ
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ウラジロは、南日本に生育するシダ植物の一つ。正月のお飾りに使われる。
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[編集] 特徴
ウラジロ(Gleichenia japonica Spr.)は、シダ植物門ウラジロ科に属するシダである。正月飾りでよく見かけるが、熱帯では巨大になる。
地下茎は細くて硬く、よくはい回り、大きな群落を作る。所々から葉を出すが、これがちょっと変わっている。葉柄は硬くて滑らかで、真っすぐに立ち上がり、一年目には先端に渦巻きの芽が一対出る。これが120゜位の角度を持って、初めはやや上に向けて葉を延ばし、葉が広がるとやや水平から先端が垂れ下がるようになる。この葉はそれぞれが二回羽状複葉に切れ込み、小葉は細長い楕円形で、基部は幅広く小軸につく。胞子のう群は小葉の裏に列を成して着く。葉の表は非常につやがあって、裏面は粉を吹いて白っぽい。ウラジロの名は裏白で、この特徴にちなんだものである。葉質は薄いが硬い。
二年目以降には、先年に出た二枚の葉の間から葉柄をさらに延ばし、その先端から新たに二枚の葉が出る。このようにして毎年葉を延ばして、葉の段が積み上がって行く。ただし、日本本土ではせいぜい三段くらいで終わる。地上から上に伸びた葉柄と、段になってつく羽片全部をまとめて一枚の葉であるが、その先端は原理上は無限に伸びることができるという妙なものである。羽片の長さは本土ではせいぜい1m足らずであるが、沖縄の湿潤な場所ではもっと大きくなり、両側の右辺を合わせれば、差し渡し3mを越える。
[編集] 生息状況
本州中部以南に分布し、海外ではアジアの熱帯域にまで広く分布する。本州では低山の森林内や、特に疎林で日当たりのよくなったところに生え、大群落を作る。よく繁茂した場所では、葉は互いにより掛かり合って、絡み合い、高さ2mを越える純群落になる。
もし、そこを通り抜けようとすれば、上に乗って歩くか、中にもぐりこんで這うかしかできない。密生した葉の層の上を歩くのは、時折り隙間に落ち込まなければ悪いものではないが、体重が軽いものに限られ、また、落ちた時の安全が確保できない。うっかり中にもぐりこむと、古くなった枯れ葉が詰まっており、動くにつれて細かくなって舞い上がり、喉や鼻に入る。「ウラジロの薮漕ぎ」と言えば、知っている者は大抵いやな顔をする。時折りサルトリイバラが交じっていると、もう最悪である。
しかし、熱帯ではウラジロはまた異なった顔を持っている。日本ではせいぜい2m程度の高さにしかならないが、熱帯では何段にも葉を広げながら伸びて、葉で他の樹木に引っ掛かり、もたれながら伸び上がり、10mにも達する、一種のつる植物のような姿になる。
[編集] 利用
葉を正月飾りにするのが有名。注連縄、ミカンの下に垂れ下げるのはウラジロに決まっている。ただし、その由来については不明である。また、マツタケなど山の幸をはこぶ時に下に敷くのもよく見かける。
他に、硬い葉柄を使ってカゴを編むなど、工芸品を作るのに用いることがある。
あまり普通の利用法ではないが、すんなりと葉の伸びた茎を折って、茎の先に一対の羽片が着いた状態にして、高いところからそっと放すと、紙飛行機のように滑空するのを見ることができる。自然観察会などで子供に見せると喜ばれる。
シダ愛好家は、シダを栽培するのが大好きで、ほとんどすべてのシダが栽培を試みられているが、ウラジロはコシダとともに、栽培が非常に難しく、大きな株の移植は非常に困難で、ごく小型の苗から栽培するしかないと言う。
[編集] 近縁種
カネコシダ(G.laevissima Christ)は、ウラジロに似るが葉裏が白くない。九州にまれに産し、中国やインドシナまで分布する。
コシダ(Dicranopteris linearis (Burm. fil.))は羽片が二又分枝を繰り返す点で大きく異なるが、性質はウラジロによく似ており、同じような場所に生える。やはり熱帯まで分布があり、アフリカのものも同種とする場合もある。茎を工芸品の材料とする点も共通である。