アントラセン

アントラセン(anthracene)とは、有機化合物の一種で、化学式C₁₄H₁₀で表される、ベンゼン環が3個縮合したアセン系多環芳香族炭化水素。融点は 217.5 ℃、沸点は 340 ℃ で、昇華性がある。CAS登録番号は [120-12-7]。

コールタールから得られる。木材の保存剤や殺虫剤、塗料などに用いられる。三重項の増感剤または消光剤として用いられることがある。また赤い色素であるアリザリンの原料ともなっている。無色の固体であるが、紫外線を照射すると青い光を発する。

ベンゼン環が折れ曲がって縮合した異性体であるフェナントレンの方が生成エンタルピーが大きく、いわゆる安定な化合物である。

[編集] 反応

アントラセンは光反応性を持ち、紫外線により光二量化反応を起こす。

この二量体は[4+4]の環化反応の結果、2つの共有結合により繋がっている。この二量体に熱を加えるか、300nm以下の波長の紫外線を照射すれば、単量体へと戻ることができる。この可逆的な結合とフォトクロミックの性質が、様々なアントラセン誘導体の応用の基礎となっている。この反応は酸素に敏感である。

9,10位の反応性が高く、容易に酸化してアントラキノン (C₁₄H₈O₂) を生成する。

皮膚に対する刺激性があり、染色体異常試験、DNA損傷試験などに陽性の結果を示している。IARCの発がん性評価では、グループ3の発がん性の評価ができない物質に分類されている。

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