アルプス伝説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウィキポータル |
日本の漫画作品 |
日本の漫画家 |
漫画原作者 |
漫画雑誌 |
カテゴリ |
漫画作品 |
漫画 - 漫画家 |
プロジェクト |
漫画作品 - 漫画家 |
『アルプス伝説』(アルプスでんせつ, The Legend of Alps)は、田丸浩史によるラブコメギャグ漫画作品。通称アル伝。「月刊少年キャプテン」(徳間書店)において1995年7月号から1997年2月号まで連載されたが、同誌の廃刊にともない打ち切りとなった。単行本は第2巻まで刊行され、残りの未収録分は長らく作者個人の同人誌で補完されていた。
その後1999年に、500ページを超える豪華本として『スペースアルプス伝説』が刊行された。これには単行本収録の第14話までに加え、未収録だった第15話から第18話、さらに書き下ろしの3話分が収録され、全21話でついに完結となった。
目次 |
[編集] 概要
本作は、主人公貴藤真澄と氷室まつり・馬剃奈津美とが織り成す三角関係によるラブコメ、および主人公の所属する登山(ワンゲル)部の面々によるギャグが中心の漫画である。ラブコメをメインテーマに据えているものの、作者が得意とする毒のあるパロディやギャグが随所に散りばめられており、スラップスティックコメディの側面が強い。
同じ作者による作品『超兄貴』や『ラブやん』と同様、一部のコアなファンにはギャグ漫画として圧倒的な支持を受けるが、デスメタルネタや下ネタが多く、読み手によって大きく好みが分かれる。
「月刊少年キャプテン」誌上で連載された本作だが、同誌が突然廃刊になるという憂き目に遭い、連載終了から完結まで2年以上のブランクがあった。そして2006年8月現在、『アルプス伝説』は第1巻・第2巻ともに絶版、『スペースアルプス伝説』は殆どの書店で在庫がない状態で、いずれも入手困難になっている。
[編集] あらすじ
幼い頃から祖父に空手を教えられ、空手で日本一になることが夢だった貴藤真澄は、高校進学を期に男くさい空手の世界から足を洗い、モテ系のさわやかな高校生活を送ろうとしていた。そして入学式の日に出会った氷室まつりに一目惚れした真澄は、彼女と同じ登山(ワンゲル)部に入る。真澄は登山部の個性豊かな面々と、登山部らしからぬ活動ばかりをしながらも、数々の妨害を受けつつまつりとの仲を深めてゆく。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 主な登場人物
[編集] 幕野高校 登山部
- 貴藤真澄(たかとう ますみ)
- 本作の主人公。1年1組17番。入学式の前に出会ったまつりに一目惚れし、同じ登山部に入部する。授業中はいつも寝ており、学業の成績は非常に悪く、また頭自体が相当悪い。他の面子に比べれば素直でまともな性格。基本的にまつり一筋だが、奈津美のアタックを排しきれない優柔不断さもある。なお空手の達人という設定は序盤でしか活かされず、その後は主人公として様々な試練に立ち向かわされる。
- 氷室まつり(ひむろ まつり)
- 本作のヒロイン。1年2組40番。リッチーの妹で、入学前から登山部に入ることが決まっていた。入学当初の成績は悪くないが、致命的に頭が弱い。暴力・暴言・謀略の3点セットを兼ね備えた、見た目と違い腹黒いキャラクター。一人称は「ボク」。真澄に好意を抱いているものの、勘違いや妨害などがありなかなかお互い気持ちを伝えられない。第1話ではおデコ全開のオールバックだったが、第3話で前髪を下ろし後ろ髪も一部三つ編みに変化し、第16話からは三つ編みをやめただの茶髪ロングになる。眉毛が太め。
- 馬剃奈津美(ばそり なつみ)
- まつりの恋のライバル。1年1組42番。空手部の馬剃主将の妹で、生徒会風紀委員で朝番をしている時、真澄に不良から助けてもらい、そのまま登山部へ入ってくる。メガネと長い黒髪が特徴。入学後しばらく学年トップだった程成績は良いが、頭が良いというわけではない。入部時に真澄に抱きついたり、酔って真澄にキスしたりと、果敢にアタックを仕掛ける。まつりとは入部以降しばらくギスギスした関係だったが、後にお互い呼び捨てにする友情を育み、その後は度々修羅場を繰り広げるライバル関係になる。
- 真野玲二(まの れいじ)
- 真澄の小学校時代からの幼馴染。1年1組22番。科学部に入ろうとしていたが、真澄に無理矢理巻き込まれて登山部へ入る。グルグル眼鏡と後ろで縛った長髪が特徴。妹がいるが、他の1年生達の家庭環境に比べればマシなので、消去法で勉強会の開催場所にされる。前半はひ弱で目立たないキャラだったが、後半から顔や体型を劇的に変化させるビジュアルギャグ要員になる。
- リッチー
- まつりの兄で登山部長を務める3年生。氷室太郎という本名があるが、フルネームは作中一度も出てこず、自称他称ともにリッチーで通している。金色の長髪に鼻ピアスとサングラスという特徴的ないでたちで、後に面接対策でスキンヘッドになる。妹と真澄の仲を応援しているが、間が悪いため結局邪魔ばかりしている。ジョニーとは子供の頃からの付き合い。連載前の構想ではリッチーがジョニー、ジョニーがリッチーと、名前が逆だった。そのため、「最近のヒロシ。」に登場する田丸の友人、ジョニー・ザ・バイパーがリッチーのモデルという説がある。
- ジョニー
- リッチーの友人で登山部員の3年生。鈴木康助という本名があるが、一文字たりとも作中では出てこず、自称他称ともにジョニーで通している。ヒゲを生やしたマッチョで、カタコトの日本語を喋る。作中リッチー同様面接対策でオールバックから坊ちゃん刈りに髪型を変えるが、逆に怖さが増すことになる。実際に一度、何もしていないのに「素手で人を殺す闇の組織の殺し屋」と勘違いされ通報された事がある。酒に弱く酒盛りには参加しない。
- 三彅早織(みなぎ さおり)
- 登山部の顧問を務める英語教師。24歳。ナイスバディで下ネタを好み、保身のための本音をズバズバ語る。職員会議をサボる癖があり、登山部が部室を失うのを阻止出来なかった。序盤は「三彅先生」と呼ばれるただのいい加減な顧問だったが、第12話で髪を短い銀色にしメガネを常時かけるようになってから、全体的に悪い方向へパワーアップし「サオリちゃん」と呼ばれるようになる。校長をFC会長に従え、金目当てで上下と付き合う。
- また登山部ではユニットが組まれている。活動内容は、遅刻状態の登校時に意味もなく学校の壁の上を一列に並んで走り、校門で散開して遅刻を取り締まっている風紀委員を撒くというもの。
- チコク三傑衆 - リッチー、三彅、ジョニーの3人で構成。キャッチフレーズは順に、技、職員会議ブッチギリ、力。
- チコクファイブ - 男子部員全員と三彅の5人で構成。リッチーがレッド、三彅がオーラルピンク、ジョニーがイエロー、玲二がブラック、真澄は何色か不明。
[編集] その他
- 馬剃康尊(ばそり こうそん)
- 奈津美の兄で、幕野高校空手部の主将。真澄が2年前に銀行強盗を退治した現場に居合わせており、真澄の才能に惚れ込み入学式の前からスカウトにくる。しかし男くさい部を嫌う真澄に断られ、勝負をしても負けてしまい諦める。名前の由来はバンド「バソリー」とそのメンバーQuorthonから。
- 糅虎健一(かてどら けんいち)
- 幕野高校空手部のマネージャー。趣味は正拳突きとイカすポーズの研究。名前の由来はバンド「カテドラル」から。
- 呉石恵利(くれいし えり)
- 幕野高校呪い部(勧誘時は「呪い苦羅武」、終盤再登場時は「ラヴラヴ♥恋占い部」)の部員。グレイシー呪術を得意とし、登山部による呪いの依頼を受けたり、学園祭で集客数および評価を競ったりする。呪い部の部長や他の部員は幽霊。名前の由来はエリオ・グレイシーで、呪術もグレイシー柔術のもじり。
- 穴島(あなしま)
- 真澄達のクラスメイトで、デスメタル部唯一の部員。デスメタルを聴いている間はマッチョ化出来る。部員を水増ししていたことがバレ、部室を登山部に明け渡すことになるが、隣の女子水球部を覗く穴や立体ホログラム装置を作っていたため読者サービスに寄与する。名前の由来はバンド「Anathema」から。
- 上下ワシントン(じょうげ ワシントン)
- 登山部が合宿に行った「ゴッドペンション上下ミラクル荘」のオーナー。日本に帰化して10年になり、ペンション経営以外にも色々な事業をしてクルーザーを所有している。金目当ての三彅と付き合っているが、終盤無人島にジョニーと2人で取り残される。そのため、『マリアナ伝説』で再登場した際には三彅に全財産をとられ没落している。名前の由来はジョージ・ワシントンからだが、容姿はボブ・ロスそのもの。
- ジジイ
- ハゲ頭とヒゲが特徴的な真澄の祖父。真澄に空手を教え、様々な特訓を課してきた。真澄とまつりの仲を裂こうと、さぶを投下したり、所有するダッチワイフを持ち出したりする。
- 君江(きみえ)
- メガネが特徴的な真澄の母。義父であるジジイと共に、真澄とまつりの仲を進展させようとしたり、逆ギレして妨害しようとしたりする。
[編集] 単行本
徳間書店より「少年キャプテンコミックススペシャル」として刊行されていたが、第1巻・第2巻は絶版となっている。
- 第1巻 (1996年5月15日発行) ISBN 4-19-830132-8
- 第2巻 (1996年12月25日発行) ISBN 4-19-830151-4
- スペースアルプス伝説 (1999年5月25日発行) ISBN 4-19-830190-5
[編集] スペースアルプス伝説
連載終了から2年以上ブランクがあって刊行された、500ページを超える豪華本。既刊2冊に収録されている話も再収録され、未収録の第15話から第18話、書き下ろしの3話分を加えた全21話となっている。カバーイラストを作者の田丸ではなく寺田克也が担当しているという異色の本。タイトルに付け加えられた「スペース」は、最終話で用いたスペースオペラネタから。
この本には、既刊2冊のおまけページほぼ全て(ゲストページなど一部を除く)とカバーイラストとが再収録されている。また第2巻ではモノクロだった第11話の冒頭シーンがカラーになっている。そのため既刊2冊が入手出来なかった人にとっても十分満足できるつくりで、この1冊で本作はほぼフォローされている。
またこの本には他に、お互いファン同士であるゆうきまさみと行った対談(雑草社の雑誌「コミック・ファン」第5号に掲載)の完全版、および倉田英之による解説が合わせて収録されている。ゆうきとの対談では、両者の漫画に対する考え方やブランク中の田丸の様子だけでなく、田丸の次回作『課長王子外伝』と両者の共作『マリアナ伝説』の構想も披露されている。