アポロの歌
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『アポロの歌』(あぽろのうた)は、1970年4月から11月に『週刊少年キング』(少年画報社)において連載された手塚治虫の漫画。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ストーリー
主人公である近石昭吾の母親はふしだらな母親で、誰が昭吾の父親かすらも分からない有り様だった。 母親は何度と無く男を代え、複数の男と関係し、そして幼い昭吾に相手の男全てを「パパ」と呼ばせていた。 母親にとって昭吾は新しい男を作る上で障害となる「いらない子」であった。
ある日昭吾は母親が「パパ」の一人と寝ているのを見てしまう。 激昂した母親は昭吾に虐待を加える。 なぜ自分を生んだのかと泣きながら尋ねる昭吾に母親は、 男と女が交わると勝手に生まれてしまうから仕方が無かった、と答える。
この体験が心の深い傷となった昭吾は、次第に「愛」というものを憎むようになる。 人間や動物が互いに愛し合い、あるいは交尾するのを見て、昭吾は憎悪を掻き立てられる。
ある日交尾しあう昆虫を見て、昆虫達が憎くなった昭吾は昆虫達を殺してしまう。 そして昭吾の行為は次第にエスカレートし、まず昆虫達を殺し、蛇を殺し、鳥を殺す。 そして最後に猫を殺した所で警察に捕まり、精神病院へと護送される。
医師によって催眠術や電気ショック治療が開始され、昭吾は治療の合間にまどろむうちに夢を見る。 夢の中で昭吾は、女神像に話しかけられる。 女神像は昭吾に、愛を呪った罰を受けなければならないと告げる。
その罰とは、夢の中で女性と愛し合い、だが相手と決して結ばれることないまま 別れねばならないという運命を何度と無く体験する、というものだった。
その罰はまず夢の中で現れ、昭吾は愛と別離とを伴う夢を何度と無く見る。 だがその罰は最後に現実へと侵入してくる。
ある日精神病院の中庭を散歩していた昭吾は、色情狂の女に迫られる。 拒絶して揉み会ううちに昭吾は誤って女を殺してしまったと誤解し、 精神病院から逃走する。
逃走中昭吾は、渡ひろみという女性にかくまわれる。 ひろみは引退した陸上選手で、逃走する昭吾の姿に陸上の才能を見出したのだ。 彼女は昭吾をかくまう代わりに、陸上の練習をさせる事を約束させる。
それから、山奥で二人きりの生活が始まる事となった。 そうした生活の中、昭吾はひろみに淡い恋心を抱くようになる…
[編集] 概要
「ふしぎなメルモ」「やけっぱちのマリア」とともに、性教育を意識して描かれた作品の一つ。
「ふしぎなメルモ」が、(どちらかというと低年齢層の)少女をターゲットとしていたのに対して、「アポロの詩」は、「やけっぱちのマリア」とともに中高生向けに描かれた作品となっている。いわゆる手塚流劇画のタッチを駆使しながら、ギャグやスラップスティックを抑えることにより、悲劇色がきわめて強い。同時期に執筆・発表された「やけっぱちのマリア」が、学園恋愛コメディで、しばしば性的な表現が強調されているのとは対照的である。
学園紛争の時代の暗い世相を反映して暗い作品になったと作者自身が語っているが、作者自身の人間観をシリアスに表現した姿勢は、後の「ブラック・ジャック」の予兆といってよいだろう。
ちなみに本編に登場する愛の女神こと渡ひろみ(一人二役)は、成人したメルモちゃんにほかならない。
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