アブラガヤ
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アブラガヤ | ||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||
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アブラガヤは、カヤツリグサ科の草本である。根出葉がよく発達する、ススキなどのような姿の草である。
[編集] 特徴
アブラガヤ(Scirpus wichurae Boeklr.)というのは、単子葉植物カヤツリグサ科ホタルイ属の植物である。その姿は、花茎だけが発達してイグサのような姿になるホタルイやサンカクイとは大きく異なる。根出葉がよく発達し、その中から長く花茎を伸ばし、先端に多数の小穂をつける姿は、むしろスゲ属やススキなどに似ている。山野のやや湿ったところに生え、大きな株を作る。
地下茎はごく短く、地中にあって多数の葉を根出状に出す。葉は線形で細長く、やや厚みがあって強い照りのある緑色。長さは40cm位になる。
夏の終わりから葉の間から数本の花茎を伸ばす。花茎はゆるやかに立ち上がり、高さは1mを越えるものもある。花茎は断面がやや三角形になっていて、途中に数個の節があり、節ごとに苞がつく。苞は長い葉鞘の先に葉身がついている。苞は茶褐色に色がつくこともある。花茎の先端には葉身が発達した苞がつき、その上に花序が出る。花序は散房花序で、花序の先から細い柄が数本出て、その先で多数の枝分かれをする。なお、花序は先端だけでなく、花茎の上の方の節からも少し出る。
小穂は楕円形から卵形、長さは4-8mmと、この仲間では小型で、明るい褐色。多数の花があり、鱗片は螺旋に並ぶ。雄しべと雌しべの回りには針状附属物が6本並ぶが、針状というよりは糸状で、果実よりずっと長く、くねくねしている。果実は熟すると倒卵形、花柱の基部はふくれずに果実に流れる。
[編集] 変異
この種は、非常に変異が多く、古くから幾つかの名がつけられている。ただし、その扱いについては定説がない。それらを分ける必要がないとの判断もある。また、一部を独立種とする判断もある。この種と同種、あるいは極めて近いと思われるものの主なものをあげる。
- 小穂は卵形から楕円形が標準だが、細長く先が尖るものがあり、シデアブラガヤ(forma cylindricus (Makino) Nemoto)と呼ばれる。
- 小穂は柄の先端に1個から数個が集まって着いているのが標準。これが1個ずつ完全にバラバラにつくものがあり、アイバソウ(forma wichurai)と呼ばれる。やや北寄りに分布がある。
- エゾアブラガヤ(subsp. asiatisus (Beetle) T.Koyama)は、小穂がほとんど球形。
- チュウゴクアブラガヤ(subsp. lushanensis (Ohwi) T. Koyama)はアブラガヤに似て、果実が鱗片より大きく、はみ出すのが特徴。
[編集] 近縁種
近縁な別種としては、代表的なものとしては以下のようなものがある。
- マツカサススキ S. mitsukurianus Makino
- 小穂は褐色。花序の枝先に小穂がそれぞれ10個以上集まって球状になる。
- クロアブラガヤ S. sylvaticus L. var. maximowiczii Regel
- 小穂の鱗片が黒い。花序はアブラガヤに似る。
- オオアブラガヤ S. ternatanus Reinw.
- 小穂は黒く丸っぽい。花をつけない花茎が出て、弓なりに地上に降りて先端に芽を出す匍匐茎となる。花序の苞は数が多く、やや傘状になる。
。 また、ヤエヤマアブラガヤ(Rhynchospora corymbosa (L.) Britt.)が沖縄から八重山諸島に分布する。水湿地に生え、やや似た姿の植物であるが、ホタルイ属ではなく、ミカヅキグサ属である。小穂には少数の花しか含まれず、鱗片の長さは小穂と同じくらいある。