WinShell
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WinShell(ウィンシェル)は、TeX による組版を支援するための TeX 統合環境と呼ばれる GUI アプリケーションソフトウェアの一つである。
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[編集] 機能
それ単体では単なるテキストエディタとしか機能しないが、WinShell とは別のプログラム(外部コマンド)である TeX や各種 DVI ウェアなどを WinShell のボタンに登録することにより、コマンドラインを介さずにボタン一つで直接その外部プログラムを呼び出してきて処理を渡してくれる。
つまり、WinShell を使うことで何か新たなことが出来るわけではなく、あくまでコマンドラインでやることを多少マスクしてくれる程度のもので、内実はコマンドラインでやることと何も変わりがない。それゆえ、呼び出す外部コマンド自体をきちんと知らなければならないことにも変わりがない、ということには注意をされたい。逆に、呼び出したいコマンドについてよく知っていれば、登録時にオプション設定を施したりできるため使い勝手はより向上する。
[編集] GUI 環境と TeX 統合環境
GUI はパソコンの普及に一役を買ったが、それにより GUI しか触ったことのないパソコン利用者も増加したわけである。そのような利用者にとって、コマンドラインでの操作を余儀なくされる TeX は非常に扱いづらい、あるいは難解な化け物であるかのような印象をもってしまうのは否めないことである。このため GUI に特化した TeX 用統合環境がいくつか作成されており、WinShell もその一つだというわけである。
なお、TeX を利用して組版を行うには通常次のように作業を進める。
- テキストエディタなどを用いて、文章に組版命令を織り込んだソースファイルを作成する。
- OS のコマンドラインから「tex "ソースファイル名"」などと入力して TeX を起動し、dvi ファイルを生成させる。
- ソースファイルにエラーがあれば、修正してやり直し。
- DVI ウェアとよばれる dvi 命令を解するソフトウェアを用いて組版結果をチェックする。
- DVI ウェアには、xdvi や dviout などのプレヴューア、dvips(k), dvipdfm(x) などの各種変換ドライバなどがある。各 DVI ウェアの間には dvi ファイルの解釈・表示について互換性がない場合がある注1。
- 組版結果のチェックについては、プレヴューアで表示確認・印刷あるいはPostScriptに変換して印刷(あるいは GhostScript などのインタプリタで表示確認)したり、PDFに変換して Acrobat Reader などを用いたりする。
- 修正の必要があれば始めからやり直し。
この間、工程が変わるたびにそれぞれのプログラムを切り替えたり、扱う文書が大きくなると章毎にソースファイルを分割して管理したりと、比較的煩雑な作業を伴う。この工程に係わる各種のプログラムやソースファイルの管理を行うソフトウェアが TeX 統合環境である。
- 注1) 特に、ソースファイルに特別なパッケージを用いるなどして、ある種の special を埋め込んで作成した dvi ファイルは、その special を解釈可能な DVI ウェアでなければ表示・印刷などができないか少なくとも正しくならない。
[編集] その他の事項
- 日本では、奥村晴彦の著書「LaTeX2e 美文書作成入門」シリーズで紹介されて、ある程度知られるようになった。
- ver 3.0 の段階で、表示言語を英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、カタルーニャ語、チェコ語、中国語、ハンガリー語、ポーランド語、スウェーデン語、日本語の12言語に切り替えられる、多言語対応ソフトである。また、ユーザ自身で設定ファイルを編集し、他の言語による表示をおこなうことも可能である。