Solaris
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公式サイト: | http://sun.com/solaris/ |
開発者: | Sun Microsystems |
OSの系統: | UNIX |
ソースコード: | オープンソース(ただし公開されていない部分もある。#ライセンス参照) |
最新リリース: | 10 6/06 / 2006年6月26日 |
対応プラットフォーム: | SPARC, x86 (AMD64を含む)[1] |
カーネル種別: | モノリシックカーネル |
ユーザーインタフェース: | Java Desktop System |
ライセンス: | バイナリのみ |
開発状況: | Current |
Solaris(ソラリス)はSun Microsystemsによって開発され、 UNIXとして認証を受けたオペレーティングシステムである。 プロプライエタリソフトウェアであるが、 コア部分はOpenSolarisとしてオープンソース化されている。
目次 |
[編集] 歴史
1990年代初頭、SunはBSDベースだったSunOS 4を UNIX System V Release 4 (SVR4)ベースのものに置き換えた(SVR4はAT&TとSunが共同で開発した)。 元々の名称はSunOS 5.0であったが、 Solaris 2という市場用の製品名もついていた。 遡ってSunOS 4.1.xもSolaris 1と呼ばれるようになったが、 ほとんどの場合Solarisという名前はSVR4ベースのSunOS 5.0以降のものにしか使われない。
SolarisはSunOSオペレーティングシステムに グラフィカル環境(デスクトップ環境を参照)や ONC+などのコンポーネントを加えたものとされている。 Solarisのリリース名にはSunOSのマイナーバージョン名が含まれていて、 例えばSolaris 2.4のコアにはSunOS 5.4が含まれている。 Solaris 2.6以降は"2."の部分がなくなっており、 Solaris 7はSunOS 5.7を、 最新のSolaris 10はSunOS 5.10をそれぞれコアとしている。
商業的な歴史についてはUNIX戦争を参照。
[編集] サポートされているアーキテクチャ
SolarisはSPARCアーキテクチャと x86アーキテクチャ(AMD64/EM64T含む)をサポートし、 両アーキテクチャで共通のコードベースを使用している。 バージョン2.5.1でPowerPCアーキテクチャ (PRePプラットフォーム)に移植されたが、それ以降はリリースされていない。 Itaniumのサポートは一度は計画されたが、市場導入には至っていない。 x86システムでLinuxの実行ファイルをネイティブに実行できるようにするため、 Solaris 10にLinux ABIを実装することが計画されている。
Solarisは多数のCPUを搭載したSMPマシンに 適していると評されることが多い。 またSolaris 7以降ずっと64-bit SPARCアプリケーションをサポートしてきている。 SolarisはSunのSPARCハードウェアと密接に統合されており、 両者は互いに組み合わせで設計・販売されてきた。 これにより信頼性の高いシステムを構築することができたが、 PCハードウェアによるシステムに比較すると非常に高コストであった。 とはいえ、x86システムもSolaris 2.1以来ずっとサポートされてきており、 また、最新のSolaris 10はAMD64を中心に設計されているため、 AMD64アーキテクチャベースの64-bit CPUマシンを利用することもできる。 2006年現在、Sunは2〜16コアのAMD64ベースのワークステーションや サーバの販売に重点をおいている。
[編集] デスクトップ環境
最初のSolarisのデスクトップ環境はOpenWindowsだったが、 Solaris2.5でCDEが採用され、 Solaris 10ではGNOMEベースのJava Desktop Systemとなっている。
[編集] ライセンス
Solarisのソースコードは(いくつかの例外を除き)OpenSolarisプロジェクトからCommon Development and Distribution License(CDDL)の下でオープンソースとして公開されている。 CDDLはOSIが承認したライセンスであるが、 Free Software Foundationの GPLとは互換ではないと考えられている。
OpenSolarisは2005年6月14日にSolarisの開発コードから誕生し、 バイナリ版とソースコード版を無料でダウンロードできるようになった。 すでにXenサポート等の新しい機能が OpenSolarisプロジェクトに追加されており、 Sunは将来のSolarisはOpenSolarisから派生したものをリリースすると表明している。
[編集] バージョン
2006年までにリリースされたSolarisのバージョンは以下の通りである:
Solarisのバージョン | SunOSのバージョン | リリース日 | 主な特徴 |
---|---|---|---|
Solaris 10 | SunOS 5.10 | 2005年1月31日 | x64(AMD64/EM64T)サポート, DTrace (Dynamic Tracing), Solaris Containers, Service Management Facility (SMF), NFSv4, 最小特権セキュリティモデルの追加。sun4mアーキテクチャとクロックが200MHz以下のUltraSPARC Iプロセッサのサポート終了。EISAデバイス/EISAベースPCのサポート終了。Java Desktop System(GNOMEベース)をデフォルトのデスクトップとして採用。Solaris 10 1/06では、ブートローダとしてGRUBを採用(x86)、iSCSIサポート追加。Solaris 10 6/06ではZettabyte File System(ZFS)追加。 |
Solaris 9 | SunOS 5.9 | 2002年5月28日(SPARC), 2003年2月6日(x86) | iPlanet Directory Server, Resource Manager, Solaris Volume Manager, 拡張ファイル属性, Linux互換性サポートを追加。OpenWindowsの削除。sun4dアーキテクチャのサポート終了。最終リリースはSolaris 9 9/05。 |
Solaris 8 | SunOS 5.8 | 2000年2月 | マルチパスI/O、IPv6、IPsec。Role-Based Access Control (RBAC)を追加。sun4cアーキテクチャのサポート終了。最終リリースはSolaris 8 2/04。 |
Solaris 7 | SunOS 5.7 | 1998年11月 | 64-bit UltraSPARCのサポート。メタデータのロギング機能(UFS logging)追加。MCAサポートの終了(Intelプラットフォーム)。 |
Solaris 2.6 | SunOS 5.6 | 1997年7月 | Kerberos 5, PAM, TrueType fonts, WebNFS, 大規模ファイルサポート。 |
Solaris 2.5.1 | SunOS 5.5.1 | 1996年5月 | PowerPCプラットフォームをサポートする唯一のリリース。Ultra Enterpriseサポート追加。ユーザID・グループID(uid_t, gid_t)の32ビット化。 |
Solaris 2.5 | SunOS 5.5 | 1995年11月 | 最初のUltraSPARCのサポート。CDE, NFSv3, NFS/TCPのサポート。sun4(VME)のサポート削除。 |
Solaris 2.4 | SunOS 5.4 | 1994年11月 | SPARC/x86の最初の統合リリース。OSF/Motifランタイムをサポート。 |
Solaris 2.3 | SunOS 5.3 | 1993年11月 | OpenWindows 3.3がNeWSからDisplay PostScriptへ変更。SunViewサポートの削除(SPARCのみ)。 |
Solaris 2.2 | SunOS 5.2 | 1993年5月 | sun4dアーキテクチャのサポート追加。 |
Solaris 2.1 | SunOS 5.1 | 1992年12月(SPARC), 1993年5月(x86) | sun4/sun4mアーキテクチャのサポート追加。最初のx86版のリリース。 |
Solaris 2.0 | SunOS 5.0 | 1992年6月 | 準備的なリリース。sun4cアーキテクチャしかサポートしなかった。 |
Solaris 7はすでに出荷されていないが、2008年8月までサポートされる。 Solaris 8は2007年2月に出荷停止となる予定だが、2012年4月までサポートされる。 Solaris 2.6以前のバージョンはサポートされていない。
各バージョンの詳細は[1](英文)を参照。 リリース履歴はSolaris 2 FAQ[2](英文)にも記載がある。
現行のSolarisの特徴的な機能として、 DTrace・Doors・Service Management Facility・Solaris Containers ・Solaris Multiplexed I/O・Solaris Volume Manager・ZFSが挙げられる。
[編集] 開発リリース
Solarisのコードベースは1980年代後半に開発が開始されて以来、 絶え間ない改良が加えられてきた。 Solaris 10といった各々のバージョンは そのリリースの前後にメインの開発コードから切り放され、 リリース以降は派生プロジェクトとしてメンテナンスされる。 派生したプロジェクトに対する更新は 次の公式なメジャーリリースがあるまで年に数回行なわれる。
2006年現在では、開発版のSolarisはOpenSolarisから派生しており Nevadaと名付けられている。
2003年に新しいSolarisの開発プロセスが導入され、 Solaris Expressという名前で 開発版の月ごとのスナップショットをダウンロードできるようになった。 これによりだれでも新しい機能を試したり、 OSの品質・安定性をテストできるようになり、 次期の公式Solarisリリースを促進させることとなった。
Solaris ExpressはOpenSolarisプロジェクトよりも前に開始されたため、 もともとはバイナリのみを提供するプログラムであったが、 現在ではOpenSolaris開発者向けのSolaris Express: Community Releaseと呼ばれるバージョンが存在する。
[編集] 懸念点
90年代後半の一人勝ちの状況以降、元々の企業規模がそれほど大きくなく、先進性で売り上げを上げるにも研究開発費の大規模な調達ができない点、Javaなどの別技術への投資を集中した点などもあり、その後のUNIXによるエンタープライズ系への対応において、幾つか決定的な遅れを取ってしまう。
その顕著な例が
-
- 論理ボリュームマネージャ機能/ジャーナルファイルシステムの無償化対応の遅れ
- (大規模ストレージ管理機能の不足による不信感の上昇)
- 自社クラスターパッケージの開発の大幅な遅れ
- (障害時の解析の面倒さと遅延の発生)
- ワークロードマネージャ機能提供の遅れ(Solaris 9から提供)
- (大規模バッチ投入管理機能の不足)
などである。
唯一早かったサーバの仮想化技術も、HP/IBMは半年もせずに同等以上の機能を提供している。
また、これらの点を逆手に取り、サーバのチェック機能不足も含めて自社パッケージにて強化した富士通が、海外も含めてSolarisでのシェアを大きく伸ばす遠因ともなっている。 Solarisでの64CPU以上、且つ、複数ノードでのクラスタ構成での富士通(シーメンスとの合併会社を含む)のシェアは、7割を超えるといわれる。
これにより、大規模なエンタープライズ市場において、当初はHPに、近年はIBMに巻き返され、他商用UNIXとの横並び若しくはそれ以下となっている。(参照:CIRCUS,UNIX戦争,論理ボリュームマネージャ)
また、オープンソースOSであるGNU/Linuxによるネットワーク系サーバの置き換え及び、比較的安価な基幹系の置き換え需要にさらされ、商用UNIXで最もダメージを受けたOSと評されており、火急の対処が必要とされていた。
これを挽回すべく、Solarisのオープンソース化という投機的な賭けに出ている。
[編集] 脚注
- ↑ "SunOS & Solaris Version History" UC Berkeley Open Computing Facility. .
- ↑ Casper Dik (April 26, 2005). "What machines does Solaris 2.x run on?" Solaris 2 FAQ. .
[編集] 外部リンク
カテゴリ: UNIX | サン・マイクロシステムズ