SIMカード
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
SIMカード(シムカード、Subscriber Identity Module Card)とは、GSMやW-CDMAなどの方式の携帯電話で使われているICカード。
W-CDMAなどの第三世代(3G)携帯電話用のSIMカードは機能が拡張されており、UIMカードないしUSIMカードと言うが、基本的に互換性があるため、特に区別せずにSIMカードと呼ぶことが多い。
ちなみに、ボーダフォン(Vodafone)のロゴはSIMカードがモチーフである。
目次 |
[編集] 概要
SIMカードは、他の一般的なICカードと同じく、クレジットカードサイズで提供されるが、ICチップの部分だけを切り離して使うようになっている。 これは、昔の自動車電話やショルダーホンなどの大型の端末ではSIMカードソケットがクレジットカードサイズであったものが、その後小型化されたことの名残である。
SIMカードには、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)と呼ばれる固有の番号が付与されており、これと電話番号を結びつけることにより通信を可能とする。 SIMカードを抜き差しすることで、電話番号を他の携帯電話機に移したり、ひとつの携帯電話機で複数の電話番号を切替えて使用したりすることができる。 但し、SIMカードは頻繁に抜き差しすることを想定したものではなく、抜き差しの前に確実にSIMカードの電源を切る為に、電話機の電源をオフにする必要がある。 そのため、多くの電話機では、電池を取り外さないとSIMカードの抜き差しができないような構造になっている。
国内で入手できるSIMカードは通常キャリア(通信会社)からの貸与であり、解約の際には返却しなければならない。 SIMカードが挿入されていない電話機は、一部の機種では例外もあるが、"Insert SIM"などと表示された画面になり、通話・通信はもとより電話帳の閲覧やカメラ撮影など一切の機能が使えず、緊急電話(警察・消防・救急など)の発信しかできないのが一般的である。 ただし、プリペイドSIMカードの場合は、最終使用時から一定期間(半年程度が多い)の後に失効して発信も着信も出来なくなる為、解約という手続きは不要である。
更に、フィンランドの様に、SIMカードを単に電話用IDとしてではなく、'Citizen Certificate'を入れ、電子身分証明書として使用する動き[1]もあるが、日本では類似の計画は見られない。
[編集] 規格
ISO/IEC 7816規格の接触型ICカードである。プラグインは、外形寸法 : 幅15mm×奥行き25mm×厚み0.76mm程度。容量は64kバイト程度。実用化されている最大容量は2005年時点で128Mバイトまでである。2008年までに1Gバイトへと大容量化する方針のメーカーもある。小容量のカードでは契約者の個人情報や電話帳を50件ほど保存できるのみだが、大容量のカードではコンテンツ情報などを保存する事もできる。
[編集] 日本の事情
日本では、SIMカードを使う方式の代表であるGSMがサービスされていないため、SIMカードは使われていなかったが、3GではW-CDMAを採用したNTTドコモのFOMAやソフトバンクモバイルのSoftBank 3Gのサービスインにより、UIMカードが使われるようになった(FOMAではFOMAカード、SoftBank 3Gでは、USIMカードと呼ぶ)。 また、auも国際ローミングの強化を目的として遅ればせながらR-UIMカード(au ICカード)を導入し、日本の3G携帯電話はすべてUIMカードを採用することとなった。
ただし、海外の多くの国ではプリペイドSIMカードが販売されており、プリペイドユーザの比率の高さにつながっているのに対して、日本では2006年7月時点でプリペイドUIMカードは販売されていない。
また、日本の3G携帯電話では、ダウンロードした有料コンテンツに対してIMSIやIMEI(International Mobile Equipment Identity、電話機の固有番号)による保護がかけられていることが多く、ダウンロードに使用したものと異なるUIMカードを挿した場合、通話・通信はできても、ダウンロード済みのコンテンツの利用ができない場合がある。UIMカードを紛失・破損・不具合などにより再発行した場合も同様の可能性がある。
なお、ウィルコムもW-SIM(ウィルコムシム)と称する独自仕様のモジュールを採用しているが、これは契約情報だけでなく通信機能を内蔵したモジュールであり、SIMカードとは別物で一種の小型PHS端末。本来、端末メーカーが無線免許を所得しないで発売できるようにする為で当然、SIMカードとの互換性はない。PHS用SIMカードとしてPIMカードが規格化されているが、2005年時点で日本国内での採用予定は発表されていない。
[編集] SIMロックについて
キャリアはリベートを出して代理店に端末を安く販売させる場合がある。その場合に端末の設定により他のキャリアのSIMカードを差しても使用することが出来ないようにすることが多い。これはSIMロックと呼ばれている。 日本のFOMAやSoftbank 3Gの端末にもSIMロックがかけられており、現状ではNTTドコモから購入した端末にソフトバンクのSIMカードを入れて使用したり、ソフトバンクから購入した端末をFOMA契約で使用することは出来ない。
NTTドコモ、ソフトバンクどちらでも利用できるSIMフリー(SIMロックがかかっていない)端末は、日本国内で正規に販売されているものとしては今のところ、Nokiaから発売されている6650、7600,6630の3種類しかない。
[編集] 世界で一般的なSIMカードの使用
空港・電話会社・コンビニエンスストアなど、日本でも一部販売店で、他国キャリアのプリペイドSIMカードを購入し、SIMロックされていない自分の端末に入れて使用できる。通常、購入に際してはパスポート等の身分証明書が必要。その端末はその国の電話番号になる。
- 地元のキャリアのSIMを利用した場合は、通話は地元キャリア経由。
- A国に滞在中、A国のB氏に電話する場合:端末→B氏の国内通話
- A国に滞在中、日本のC氏に電話する場合:端末→日本→C氏の国際通話
- 日本で売っている国際ローミングSIM利用の場合、すべての通話は日本経由。
- A国に滞在中、A国のB氏に電話する場合:端末→日本→A国→B氏の折返し国際通話
- A国に滞在中、日本のC氏に電話する場合:端末→日本→C氏の国際通話
- A国のSIMカードを日本に持込む場合、通話は日本経由
A国のSIMカードを日本に持込んでA国の電話番号で発着信することも可能である。前者の場合と特に区別する場合はローミングインと言う。ただしGSM端末の持込使用は出来ず、日本の規格に適合したものを借りる必要がある。
- A国の中の国内通話はその国のキャリアのSIMカードを選択した方が安い。しかし国際通話料金は、その国のキャリアの国際通話料金と、国内キャリアのローミング国際通話料金と、どちらが安いかの比較になる。
- 国際ローミング利用の場合、A国で日本から着信した場合にも着信側に課金されることが多い。(日本側からは国内通話に見えても、実際は国際通話料金が発生していてそれを課金する必要がある。)