MOTHER
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
MOTHER | |
---|---|
ジャンル | ロールプレイングゲーム |
対応機種 | ファミリーコンピュータ |
開発元 | パックスソフトニカ エイプ |
発売元 | 任天堂 |
人数 | 1人 |
メディア | 3Mbitロムカセット(バッテリーバックアップ搭載) |
発売日 | 1989年8月27日 |
売上本数 | 約40万本 |
『MOTHER』(マザー)は、任天堂のゲームソフト。ジャンルはロールプレイングゲーム。
[編集] 概要
MOTHERシリーズの1作目。日本国内で任天堂から1989年にファミリーコンピュータ用ソフトとして発売された。開発はパックスソフトニカとエイプ。2003年に発売されたゲームボーイアドバンス用ソフト『MOTHER1+2』にも収録されているが、ゲーム機の性能の問題で原作の再現が完全ではない部分がある。
地球のある国(アメリカ)の田舎町・マザーズデイの街はずれに住む少年(主人公)が、自宅で起きた怪現象の原因を探るために旅立ち、道中出会った仲間と共に、世界を歪ませている「何か」と戦っていくストーリーが展開される。
当時、ロールプレイングゲームといえば中世がモデルの剣と魔法の世界(ドラゴンクエストシリーズなど)、あるいはその様に見えるポストカタストロフ世界(ファイナルファンタジーシリーズなど)を冒険するものが殆どであるなか、現代世界観に立つ意欲作として発表された。
発売当時放映されたCMでは、キャッチコピーは「エンディングまで泣くんじゃない 」「名作保証 」などと書かれていた。キャッチコピーはゲームをデザインした糸井重里自身が担当した。ゲーム内使用音楽は鈴木慶一と田中宏和が作曲。
糸井重里は「ゆっくり、物語を読むように遊んでください」という趣旨のことを話している。ゲーム中の各所に、アメリカのジュブナイル映画の影響を受けていると思われる箇所が見受けられる。
[編集] ゲームシステム
MOTHERシリーズのページの「ゲームの特徴」も合わせて参照されたい。
[編集] 世界
広大な一枚のマップの上に町が点在し、主人公はまさしく、隣町に行くように世界を移動する。続編のようにマップが一切区切られていないため、ストーリーを無視して自由にあちこち進むことができ、実はアナやテディを仲間にしなくてもクリアは可能である。
この広大な一枚のマップに町や地点を置く手法は、本作から17年後に発売されたMOTHER3にも採用されている。
[編集] 移動
徒歩による移動が基本であるが、本作は上下左右だけでなく斜め方向にも移動することができるという点が発売当時は斬新であった。ゲーム中盤になると、鉄道という公共交通機関を利用することができるようになる(現実の鉄道と同じく、利用するには運賃が必要)。
また、別の場所に瞬時に移動する方法としては、アイテム「パンくず」を使う方法とPSI「テレポーテーション」を使う方法とがある。
- パンくず
- アイテム「パン」を使うとその「パン」は「パンくず」に変化する。そして離れた場所で「パンくず」を使えば、「パン」を「パンくず」に変えた地点まで瞬時に戻ることができる(パンをちぎってパンくずにして跡を残しながら歩き、戻るときは地面に落ちているパンくずをたどることにより戻ることができる、という原理である)。パンは2人以上がそれぞれ別の場所で使用することもでき、パンくずを使った場合はそのキャラクターがパンをパンくずに変えた場所へ戻ることができる。ただし、途中でテレポーテーションを使ったり、異世界へワープしたりした場合は、直前にワープした先の地点までしか戻れない。
- テレポーテーション
- ワールドマップ上の町まで瞬時に移動することができる。使用する際には行先を選択することが可能だが、テレポーテーションを成功させるには一定距離を障害物にぶつかることなく走る必要があるため、狭い場所では使いにくい。
[編集] 戦闘
本作のエンカウント方式は、ドラゴンクエストシリーズなどと同様のランダムエンカウント方式(移動画面で敵の姿が見えない)である。戦闘はターン制で、プレイヤーが手動でコマンドを入力してキャラクターに指示を出すマニュアル方式の他、キャラクターの行動をコンピュータに任せる「オート」モードも使用できる。オートモードではひたすら攻撃するだけでなく、状況に応じて臨機応変に回復や蘇生のPSIを使うこともある。また雑魚敵においても戦闘曲に種類がある(終盤はほとんど一つに固定)。たまに敵がまったく無意味な行動をとることもあり、勝手に混乱する敵もいる。
[編集] 高難易度
本作はマップ移動の自由が利く一方、ヒントがほとんど無かったり、敵が強かったりと難易度はシリーズ中一番高い(2番目に高いのはMOTHER3)。糸井重里曰く本作は終盤のデバッグ調整を省いているため、近年のゲームソフトとは相容れないほど難易度が相対的に高くなってしまっており、自力攻略を断念したファンも少なくない。発売から経年経過したレトロゲームということもあり、近年のテレビゲームに慣れた者には難しく映ることも否定できないようである。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 主な町・地点
イースターからスノーマンにかけては鉄道が通っており(ゲーム中ではサンタクロース駅~イースター間は乗車不可)、列車に乗っての移動も可能だが、時間をかけて線路の上を歩いて移動することもできる。
また、一定条件を果たすごとに、夢の世界「マジカント」への道が開かれ、そして閉じられる。
[編集] マザーズデイ : Mother's Day / Podunk
主人公ニンテンが暮らす町。緑に囲まれた平和な田舎町だったが、ポルターガイストや動物が暴れだしたりする不可解な現象がおきるようになる。
- 南の墓場
- マザーズデイの南に広がる墓場。木々が枯れたおどろおどろしい場所で、ゾンビが出現する。ピッピが墓場の奥に隠れている。
- カナリア村
- カナリアが暮らす村。マザーズデイの北にある。
- シュークリーム動物園
- マザーズデイの北にある動物園。スターマンの息子の力で動物たちが脱走して暴れている。
- 東の洞窟
- マジカントに通じる岩がある。あることをすれば……。
[編集] サンクスギビング : Thanksgiving / Merrysville
ロイドの暮らす町。町の山間部にダンカン工場をかかえる。
- ティンクル小学校 / Twinkle Junior School
- ロイドの通う小学校。どこかにロイドがいるはずだが……。
- スイートリトル工場
- サンクスギビングの南にある工場。
- ダンカン工場
- サンクスギビングの北にある工場。近代的なダンカン工場は非常に広大。くれぐれも迷わないように注意。
- サンタクロース駅
- サンクスギビングの北にある大陸横断鉄道の駅。線路をふさいでいる岩を破壊すれば鉄道に乗れるようになる。
[編集] レインディア : Reindeer
高い建物が立地する都市。レインディア駅でおばあさんからアナの帽子を届けてほしいと頼まれる。町には予言者の家がある。
[編集] ハロウィーン : Halloween / Spookane
町が不可解な現象に襲われて以来、町人は山奥の小屋に避難している。この町のホテルにとまった翌朝には……!
- 幽霊屋敷
- 真っくらで幽霊や甲冑が跋扈する恐怖の屋敷。さらに無限回廊と錯覚するほどの大迷路がある。屋敷の奥にメロディーをかなでるピアノがある。
[編集] スノーマン : Snowman
アナが暮らす町。一面真っしろの雪国で大陸横断鉄道の終点。
- 教会 / Church
- スノーマン唯一の教会。アナの家でもある。アナに帽子を届けたら、その手をとろう。
[編集] アドベント砂漠 : Advent Desert
広大な砂漠。先の大戦時の名残がみられる。退役軍人の戦闘機と戦車で遊覧飛行や砂漠走行ができるが……。
うたうサボテンがいる。彼からはメロディーを覚えられる。
- 遺跡
- 砂漠にある古代遺跡。あちこちにサルがいる。
- 地雷
- 砂漠のどこかに地雷がある。踏んでしまうと……?
[編集] イースター : Easter / Youngtown
アドベント砂漠の南にある集落。謎の現象で大人たちが消えて子供たちだけがいる。鉄道の終点だが、駅は閉鎖されている。
[編集] 湿地帯
イースターとバレンタインをつなぐ道。ピッピの別荘がある。
[編集] バレンタイン : Valentine / Ellay
デトロイトをほうふつとさせる工業都市。若者の風紀と犯罪が問題になっている。
テディがボスをつとめるブラックブラッド団、略してBB団が町のあちこちにいる。
[編集] マジカント : Magicant
クイーン・マリーが生み出した夢の世界。
- 地下大河
- マジカントの地下に広がる大河。ドラゴンや忘れられた男がいる。
- クイーンマリーの泉
- テレパシーを使うと……?
- フライングマンの家
- フライングマンの住む家。
[編集] ホーリーローリーマウンテン : Holy Loly Mountain / Mt.Itoi
バレンタインの東にそびえ立つ標高の高い山。頂上までの道のりは熾烈を極める。
糸井重里によるとこのホーリーローリーマウンテンはエンカウント調整を端折っているという。
- 洞窟
- ホーリーローリーマウンテンにつながる洞窟。
- 山小屋
- 中腹にある山小屋。ここでアナがニンテンに心の内を明かし、そして……。
- 工場
- 中腹の湖底にある工場。ここにはイヴがいる。
- 断崖
- 山頂が近い断崖絶壁。あちこちで行方不明になっていた人たちがカプセルに閉じこめられている。
- 山頂
- マザーシップに乗ったギーグと最後の戦いに。
[編集] 主なキャラクター
[編集] 主要キャラクター
- ニンテン / Ninten
- 本作の主人公。赤い帽子をかぶり、縞模様の服を着た少年。主な武器はバット。年齢は12歳。
- 母親のキャロルと二人の妹ミミー&ミニーと共に暮らしていたが、ポルターガイスト現象をきっかけに世界へ旅立つ。
- 補助系のPSIを多数使用できる。喘息持ちで、戦闘時に発作が起こると一切の行動が取れなくなる。
- 攻撃、回復、PSI補助、PSI攻撃等全ての役割をバランスよくこなせる。
- ロイド / Loid
- メガネをかけたサンクスギビングのティンクル小学校の児童。銀髪。主な武器は光線銃など。年齢は11歳。
- 天才児であるが、いじめられっこでもある。ひ弱で臆病だがストーリーが進むにつれて成長していく。
- PSIは使えないが、様々な武器・アイテムで仲間をサポートする。
- アナ / Ana
- スノーマンの教会に住む少女。金髪でピンク色の可愛らしい服を着ている。主な武器はフライパン。年齢は12歳。
- とある理由から現在父親と二人で暮らしている。実はニンテンが自分のもとに来る運命の人ということを知っている。
- 清楚な教会の娘だが、父親も引き止めることなく冒険を見送ってくれる。
- 攻撃系をはじめとした多くのPSIを使える。PP値が高いので、直接攻撃よりPSIを積極的に使っていける。
- テディ / Teddy
- バレンタインに住むサングラスをかけた不良少年で、「ブラックブラッド団(ブラブラ団)」の親分。
- 主な武器は刀とナイフ。年齢は17歳前後と思われる。本名は「テディざえもん」。
- ホーリーローリーマウンテンの化け物に両親が殺されてから不良になっていった。
- そのトラウマから今もホーリーローリーマウンテンを目にするのを嫌う。
- 少年時代から警察の世話になっていて、ニンテン、ロイド、アナと会ったときにはブラブラ団の親分にまで登りつめていた。
- 荒々しい性格で暴力的な印象が強いが、他人思いの優しい一面もある。歌が好きなようだ。
- PSIは使えないが、直接攻撃が強力なため戦闘能力はかなり高い。その高い攻撃力で仲間をサポートしてくれる。
- ジョージ / George
- ニンテンの曾祖父。パパの祖父。すでにこの時期には他界している。
- 1900年代の初めに妻のマリアとともに行方不明になった。
- しかし、2年後に彼だけが戻ってきてその後PSIの怪しい研究をするようになる。
- これがマザーズデイ住民のあいだにさまざまな噂をよぶが、彼の死後はその噂も立ち消え……。
- 彼が残した「そうそふのにっき」が曾孫であるニンテンの代になってマジカントへの扉を開けた。
- マリア / Maria
- ニンテンの曾祖母。パパの祖母。同じくこの時期にはすでに亡くなっている……といわれている。
- 夫とともに1900年代の初めに行方不明になったが彼女だけは帰ってくることはなかった。
- しかし彼女の思いはなおも生き続けていて曾孫のニンテンたちを助けることに。
- クイーン・マリー / Queen Mary
- マジカントの女王。主人公に似ている容貌をしている。
- 大切な事が思い出せないらしく、その表情は暗い。
- イヴ / Eve
- とある理由、とある場所で主人公たちと共に戦ってくれるロボット。
- ギーグ / Giygas
- 地球征服を企む宇宙人。高い戦闘力でまともに戦っては勝てないが、幼きころに覚えていたあるものが弱点。
- 戦いに敗れた後、マザーシップで去っていくが、その行き先は……。
[編集] サブキャラクター
- ピッピ / Pippi
- 主人公のお隣の家の少女。序盤で行方不明となり探すことが目的となる。赤髪。年齢は12歳前後。
- 彼女自身少しの間共に戦うことができるが、ステータス設定をしていないのか上がり方が異様。
- 終盤に再会する。ロイドのパパと一緒にいたがどういう関係かは不明。
- キャロル / Carol
- ニンテンの母親。
- 冒険に出るニンテンたちを見守ってくれていて、家に帰るとニンテンの好きな物を作ってくれる。
- ミミー&ミニー / Mimmy & Miny
- ニンテンの妹。
- 容姿が似ていて間違えやすく、本人たちもそれを気にしている。
- パパ / Dad
- 主人公のお父さん。
- 単身赴任中で家にはいないが、主人公の銀行口座にお金を振り込んでくれる。
- 鍵をどこに隠したかを忘れるなど意外に間抜けな一面がある。
- しゃべるサボテン / Talking cactus
- アドベント砂漠にいる言葉を話すサボテン。
- ドラゴン / Dragon
- 地下大河にいるドラゴン。
- 眠っているが、ある程度レベルが上がってから話すと……。
- 忘れられた男
- 地下大河の出口にいる男。
- おれのことは忘れろという問いに答えると……。
- ガリクソン
- イースターに住む赤ん坊。
- とあることをすれば……。
- ロイドの父親 / Loid's Father
- ロイドの父親。息子も同じくバケツに隠れていることが多い。
[編集] 主なアイテム
- そうそふのにっき / Great-grandfather's diary
- ジョージが遺した日記。
- マジカントへの扉を開く合い言葉が書かれている。
- フランクリンバッヂ / Franklin badge
- ニンテンがピッピからもらったバッヂ。
- 雷を跳ね返す能力がある。
- きぼうのオカリナ / Ocarina of hope
- エイトメロディーズを奏でるオカリナ。
- マジカントに住む楽器作りの少年から貰える。
- めのうのつりばり / Fishing needle of agate
- 使うだけでどこからでもマジカントへ行ける便利なアイテム。
- 「ちかたいがのぬし」という魚のような敵が持っている。
- ペンシルロケット / Pencil locket
- 名前の通り日本が発明したあの鉛筆型のロケット。
- 線路を塞いでいた岩を破壊できるほどの威力を持つがロイドにしか扱えない。
- アナの帽子 / Ana's cap
- レインディア駅でおばあさんから渡されるアナの帽子。大きく名前が書かれている。
- KATANA
- テディの最強武器。名前から日本刀と思われる。
[編集] ポケットモンスターとの関連
本作とポケットモンスターには深い関係にある。
『ポケットモンスター』の開発には、元MOTHER開発チームの人員も関わっていた。本作との共通点として等身大の少年少女が主人公であることや、現代風の世界であること、フィールド画面と同スケールで切り替えのないマップなどがある。田尻智も本シリーズに敬服の念を表明している。
[編集] その他
- songs of instrumental
- バンドSAKEROCKの2ndアルバム。エイトメロディーズのカバー曲を彼らが制作し、収録した。
- マザー百科
- 本作の公式ガイドブック。攻略本を超えた旅行本さながらの装丁でファンから愛用されている。
- 2003年6月20日、復刻版がリリースされた。
- MOTHER―The Original Story
- 久美沙織によって小説化されている(新潮文庫より刊行)。アナが主人公。
- 基本設定はゲームと共通しているものの、原作から大幅に設定が書き換えられておりオリジナルストーリーという感が強い。主な特徴は以下のものがある。
- ニンテンが金髪で、名前も変更されている。一方、アナは黒髪になっている。
- 一部に性的な行為を暗喩した表現がある。
- 以上の理由から、ファンからの評価は賛否両論であり、またそれゆえファンの間でもあまり目立たない存在と化している。
[編集] 外部リンク
- MOTHER MOTHER1+2サイト内任天堂公式サイト