B-17 (爆撃機)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
B-17は第二次世界大戦時のアメリカ陸軍航空隊の主力大型爆撃機。アメリカ合衆国、ボーイング社の製造。
「4発大型爆撃機は鈍重なので夜間爆撃にしか使えない」という当時の常識を破った画期的な高速爆撃機で、愛称はフライングフォートレス(Flying Fortress)。1930年代に沿岸哨戒任務についていたため、沿岸要塞の射程外を守る「空飛ぶ要塞」と新聞記者に呼ばれるようになったのが別名の起源。主要部の防弾と強力な防御火器からそう呼ばれるようになったというのは都市伝説であるが、E型からは文字通りの性能となった。
目次 |
[編集] 開発の経緯
1934年にアメリカ陸軍は、当時の主力爆撃機マーチンB-10(双発機)の後継機として、航続力と爆弾搭載量を2倍に強化した『多発爆撃機』を国内航空機メーカーに要求した。これに対しボーイング社は以前から社内で開発していた発動機4基を有する大型機の基本設計を元に、試作機モデル299を完成させた。1935年の制式機の選定では、モデル299はライバルのダグラスB-18(ベストセラー双発旅客機DC-3の改造型)に比べて圧倒的な高性能を示しB-17として採用された。しかし、その高価格が災いして初年度の発注量はB-18が133機であったのに対し、B-17は13機と少なかった。この傾向は1939年の第二次世界大戦勃発まで続いた。しかし、開戦後にB-18の性能では実戦で役に立たないことが明らかとなり、B-17の大量生産が開始された。
[編集] 技術的特徴
当時の常識は、「4発大型爆撃機は運動性が悪く低速なので夜間爆撃にしか使用できない」という第一次世界大戦時そのままの発想であった。ボーイング社は この常識を覆すべく画期的な4発昼間爆撃機を作り上げた。
B-17は突起物の無いスマートな機体で、機体ラインは非常に滑らかな曲線と直線で構成されているが、後期型は機銃多数を装備してかなりごてごてした外観を有するが機体ラインそのものは流麗である。爆撃機としては世界で最初に排気タービンを装備し、排気タービンは現在の自動車で使われているターボチャージャーと同じもので、エンジン排気の余剰エネルギーを利用して、エンジン内に大量の空気と燃料を強制的に送り込む装置。空気の薄い高空でピストンエンジンの出力を確保するのに必要不可欠であったため、B-17の高空性能も大幅に改善された。ドイツや日本では実用化が遅れたため、高空から侵入するアメリカ軍爆撃機の迎撃に非常に苦労した。
試作機で機銃5丁、後期型のG型では実に13丁の12.7mm機銃を装備するなど豊富な防御火器に恵まれた。機体主要部は防弾が施され、優秀な防弾能力を持っており、小火器での撃墜は困難であったとされる。しかし、この装備が有効なものとなるのは太平洋戦争突入に前後して生産の開始されたE型からであった。それ以前は、イギリス空軍の爆撃機ハリファックスと比して劣るような内容であったものの、E型以降は強化された装備と併せて、ノルデン式爆撃照準機によって正確な投弾が可能であった。
[編集] 活躍
第二次世界大戦の欧州において、アメリカ軍の主力爆撃機として活躍。太平洋方面では開戦から中期まで活動した。イギリスを基地とした対ドイツへの昼間爆撃に従事。護衛戦闘機が充分でなかった1943年頃まではドイツ迎撃戦闘機により多数の損害を出しながらも、ドイツの工業地帯を正確に爆撃・破壊した(1944年以降は、P-51戦闘機が護衛機として本格的に使用され、B-17の損害は減少した)。
夜間爆撃を担当したイギリス軍のランカスター爆撃機と共にドイツの戦争継続能力を削ぐ立て役者となった。B-17とランカスターは、第二次世界大戦中に各々約60万トンの爆弾を投下したといわれている。ちなみにB-29が日本へ投弾した量は約17万トンだった。
[編集] データ
B-17G型
- 全幅 31.6m
- 全長 22.6m
- 総重量 25t~29t
- エンジン ライトR-1820-97 1200馬力4基
- 最大速度 426km/時
- 航続距離 5800km(最大)
- 乗員 10名
- 武装 12.7mm機銃13丁、爆弾2720kg~4900kg
[編集] その他
B-17の主翼・尾翼を利用して、旅客機ボーイング307Bストラトライナーが製作された。この機体は世界で最初に客室を与圧した機体として有名。
「B-17フライングフォートレス」「B-17 フライングフォートレスII 」という名前のシミュレーションゲームが存在する。
[編集] B-17が登場する作品
- 登場する宇宙船「メリーアン」は本機をベースにしている。
- 作品的には上記「メンフィス・ベル」の世界観をモデルにしているが、内容的にはまったく別物(主人公であるスタンレー大尉以下、搭乗クルー全員が何等かの軍規違反により軍法会議を受け、銃殺刑の執行と引き換えに、戦争が終わるまで、搭乗を続ける点が大きな違いである)
- 「麦畑のミッション」
- 上記「メンフィス・ベル」と同じシチュエーションに陥ったB-17乗員の間のドラマを描いた小説。
- 「最後のミッション(アメリカ映画世にも不思議なアメージング・ストーリーの一編)」底部銃座に取り残された乗員の描く不思議な掌編映画。
[編集] 外部リンク
- B17操縦士訓練教本 (九州大学航空模型部のホームページ内の一コンテンツ)
- Marshall Stelzriede's Wartime Story 元B-17航法士のWebページ(B-17による出撃経験談、B-17 Pilot Training Manual、写真などが存在する)