非武装中立
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非武装中立(ひぶそうちゅうりつ)とは、理念として他者を傷つけることを否定するが故に、自国の防衛のためであっても戦争に反対し、軍事武装を放棄して国際的に中立主義を貫こうという立場。
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[編集] 概要
非武装中立論とは、日本だけに見られる独自の政策論ではなく、欧州においても社会防衛論として、軍事による国土防衛を放棄し、自国が外国軍隊によって占領されたとしても、他の手段(デモ、座り込み、ボイコット、非協力等)によって他国からの領土支配を拒絶するとする政策論が知られている。
ガンジー、キング牧師の非暴力主義の活動が類似した思想の例として挙げられることもある。詳細は各ページを参照されたい。
なお、非武装中立を行っている国としてコスタリカがよく挙げられるが、コスタリカは常備軍の設置を禁止しているだけで、非常事態には徴兵制を敷き軍隊を組織することができる。また、事実上の国防軍である国家警備隊及び地方警備隊は重火器等を保持し、警備隊への予算の割り当ては隣国ニカラグアの軍事費の三倍(2005年 日本外務省のデータ)となっているなど、実態は非武装というイメージからは乖離している。また、中立という観点からは、安全保障をアメリカ合衆国に依存しており、さらに米州機構のメンバーでもある。同国の事情については、コスタリカも参照。
[編集] 日本
日本の非武装中立論者は日本国憲法の前文と第9条を根拠に自衛隊と在日米軍が憲法違反だと主張している。そして日本の安全保障政策として、自衛隊の廃止、在日米軍を肯定する日米安全保障条約の廃止を主張している。
非武装中立論者には護憲派が多く、自衛隊や在日米軍の存在を明白に肯定するための第9条の改憲に強く反対している。かつて、日本社会党の石橋委員長が「非武装中立論」を展開したが、論理的裏付けのない論であるとして、今ではその影を見ることはなくなった。よく同党の持論と言われる「竹槍抵抗論」は個人レベルの議論の文脈から出てきたものというだけで党本体の意思とは関係ないとされている。
[編集] 反対意見
非武装中立に対する、次のような批判や指摘がある。
- 戦争当事国の相手方が自国の領域へ侵入することを、武器による抵抗をせずに受け入れることは、戦争当事国の一方だけに加担することになり、これは中立とはいえない。よって、自国が戦争に巻き込まれないために、あるいは利用されないために、国際法的な観点から国土防衛の法的義務が課されていると解され、これは当然に軍事防衛を前提としているものである。
- 社会防衛論を現実に実行するにさいしては、国民による不断の努力が求められるが、占領軍による逮捕、拷問、密告勧奨などの恐怖支配によって、領土支配拒絶運動が分断化されたり沈静化されてしまって失敗する恐れがある。結論的には、社会防衛論による戦争への抑止効果は、一般的な軍事力による抑止効果と比較して極めて微弱であるとされ、なんら戦争回避の効果的な手段となり得ない。
[編集] 参考文献
- 『国防』昭和63年7月号94頁以降(朝雲新聞社)
[編集] 関連項目
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