長音符
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五十音 | ||||||||||||
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ん | わ | ら | や | ま | は | な | た | さ | か | あ | ||
っ | ゐ | り | み | ひ | に | ち | し | き | い | |||
ヴ | る | ゆ | む | ふ | ぬ | つ | す | く | う | |||
ヶ | ゑ | れ | め | へ | ね | て | せ | け | え | |||
ー | を | ろ | よ | も | ほ | の | と | そ | こ | お |
長音符(ちょうおんぷ)または音引き(おんびき)は、「ー」(縦書きのときは丨)と書き表される、日本語の記号(約物)のひとつ。棒引き(ぼうびき)ともいう。仮名とともに使われ、直前の仮名で表されるモーラに1モーラ(長音)を加え、直前の仮名の母音をふつうの倍の2モーラにのばすことを表す。その場合、音素の一つとして直前の字と共に一つの音節を構成し、直前の字の母音は長母音となる。
目次 |
[編集] 長音の表記方法と長音符
[編集] 片仮名表記
長音符は主に片仮名で外来語(例:テーブル)や擬音・擬態語(例:ニャーン、シーッ)の長音を表記する場合に使われる。現代の日本語の表記では外来語や擬音・擬態語以外で片仮名を使う場合は限られているが、外来語や擬音・擬態語以外では、片仮名表記であっても原則として長音符は使わず、下記の平仮名と同様の方法で長音を表す(例:シイタケ、フウトウカズラ、セイウチ、ホウセンカ、オオバコ)。
[編集] 平仮名表記
平仮名では通常、長音符は使われず、現代仮名遣いにもとづいた別の方法で長音を表す(例:かあさん、にいさん、すうじ、ねえさん、けいさん、とうさん、そのとおり)。ただし、非標準だが感動詞(例:「ああ」の代わりに「あー」、ありゃー)、擬音・擬態語(例:どすーん、そーっ、あーん)や方言・俗語(例:てめー、あぶねーっ!)、語調の強調による長呼(例:ながーい、よーく)の表記などに平仮名でも長音符が使われることがあり、特に漫画の書き文字に多用される。
[編集] 漢字音の振り仮名
漢字音を示す振り仮名の場合、現代的な中国語や朝鮮語の発音には片仮名表記で長音符を使うが、それとは別の日本漢字音には片仮名表記、平仮名表記のいずれの場合も原則として長音符は使わず、上記の現代仮名遣いにもとづいた方法で長音を表す。
[編集] ローマ字表記
ローマ字に長音符に該当するものはない。そのかわり長音を表す綴り方はいくつかある。
- 母音字の上にサーカムフレックス(山形記号)をつける。(訓令式) 例:Tôkyô
- 正式な記法だが、日本語環境のコンピュータでは表示や入力に難があることが多いためあまり使われない。
- 母音字の上にマクロン(横棒)をつける。 (日本式) 例:Tōkyō
- 前項と同様の事情がある。ただ、駅名の表示ではこの記法が多く使われる。
- 同じ母音字を続けて書く。 例:Tookyoo
- 便利だがあまり用いられない。特に、"oo"は英語では「ウー」と読まれることが多く、正しく伝わりにくい。ただし、イ段の長音では"i"の上の点がサーカムフレックスやマクロンをつけるのに支障をきたすため、しばしば"ii"と表記される。(例:Niigata)
- 現代仮名遣いをそのままローマ字に綴る。 例:Toukyou
- 仮名表記になじんでいる日本人が主に使う。とくに、コンピュータのローマ字入力と同じ方式であることから、近年多用される傾向にある。特に、読み仮名を「えい」と書く場合は、ローマ字でもそのまま"ei"で綴る(後述)。
- しかし、仮名遣いになじみのない外国人には意図したとおりに伝わるとは限らない(あるいは、仮名遣い通りに書いてくれるとは限らない)ので注意が必要である。
- 母音字の後にハイフン(-)を書く。 例:To-kyo-
- 非標準的な方法で、西欧諸言語のハイフンの使用と間違える可能性がある。
- hを母音字に後続させる。 例:Tohkyoh
- 何も書かない。 例:Tokyo
- この記法も駅名の表示やドメイン名で多く使われる。
なお、いずれの場合でも、「えいご」「せんせい」など、音読みに由来し「い」と書かれるエ段長音は、かな表記通りeiと書くことが一般的である。
[編集] 点字
点字では長音符を次のように表す。
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[編集] モールス信号
モールス信号では長音符を次のように表す。
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[編集] 長音符の歴史
長音符は江戸時代に外国語を表すのに使われたのが始まりと言われている。引く音の「引」の右側から取られたという説がある。
明治33年(1900年)、小学校令施行規則によって小学校の教科書に棒引き仮名遣いを使うことが定められた。これは漢字音や感動詞の長音を「ー」を使って表すというもので、「校長」を「こーちょー」、「ああ」を「あー」、「いいえ」を「いーえ」とするような仮名遣いであった。しかし、明治41年(1908年)文部省令で廃止された。
[編集] 長音符に関わる諸事項
- 五十音順: なし。
- いろは順: なし。
- 片仮名「ー」の字形: 「引」の旁(縦書き)
- 外来語の最後の長音符を省略する事はまれではなく、とくに工学分野では長音符の省略が慣習となっている。(例:ドア、ドアー。カテゴリ、カテゴリー。モニタ、モニター、モニターケーブル)。また、官公庁の公用文書では語尾の長音符は取る決まりとなっている。
- 非標準的な使用の様々な方法の一例として、音楽の歌詞では、ひとつのモーラが2つ以上の音符に当たるとき、2つめ以降の音符に長音符をつけることがある。
[編集] ユニコード情報
文字 | Unicode | 名称 |
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ー | U+30FC | KATAKANA-HIRAGANA PROLONGED SOUND MARK |
ー | U+FF70 | HALFWIDTH KATAKANA-HIRAGANA PROLONGED SOUND MARK |
縦書き用の文字は別に用意されてない。