苔類
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苔類(たいるい)は、コケ植物の大きな1群であり、苔綱を構成する。ゼニゴケやジャゴケが有名であるが、これらは必ずしも苔類の典型ではなく、多様なものが含まれる。
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[編集] 概説
苔類は、コケ植物門苔綱に属する植物の総称である。コケ植物の中では蘚類と並ぶ大きなグループである。最も有名なのは、ゼニゴケやジャゴケであろう。これらは、セン類の多くが双子葉植物の茎と葉を小さくしたような形、つまり茎葉体(けいようたい)であるのに対して、そのような区別のない、葉状体(ようじょうたい)である。しかし、実際には、多くの苔類はセン類と同様に茎葉体である。
茎葉体の場合、セン類との区別点は、苔類のものは、葉が大きく裂け、腹面側と背面側の裂片が区別できること、中肋がないことである。ただし、例外も多く、区別が難しい場合もある。
また、セン類の多くでは、さく(胞子のう)が丈夫で、長い間観察できるのに対して、苔類のそれはごく一時的で、すぐに壊れてしまう。ゼニゴケ類ではキノコの傘のような胞子形成部を作るが、これは配偶体が作るもので、胞子体はその傘の裏面に小さく顔を出すだけである。
[編集] 形態
茎葉体のものと葉状体になるものがある。種数としては前者の方がはるかに多い。
茎葉体のものは、多くは匍匐する。セン類の葉は細くとがったものが多いが、苔類のものはたいてい丸い。葉は3列に並ぶが、そのうち2列が特に発達する。発達した葉は左右にほぼ平面に並んでおり、側葉と呼ばれる。側葉は、たいてい大きく裂けて、背面側と腹面側で大きさに差がある。どちらかが小さくなって、もう1方の基部に折り畳まれるように重なっている例も多い。これらの形質は、分類上の重要な特徴である。発達しない1列は、側葉の間の茎の上に並んでおり、腹葉とよばれるが、退化してなくなっているものもある。茎葉体にもほぼ直立するものもあるが、これらの特徴は大体保持されている。
葉状体のものは、すべて匍匐している。区別できる葉はなく、植物体全体が平べったく、幅の狭いリボン状で、先端で枝分かれしながら伸びる。あまり伸びずに枝分かれすれば、円盤状になる場合もある。枝分かれはほとんどの場合、2又分枝である。外見上区別できる構造はないものが多いが、一部には主軸が中肋のような感じで区別できるものがある。
生殖器官は茎の先端や葉の間などに生じ、苞葉に包まれる。造卵器は、さらに花被に囲まれて生じる。胞子のうであるさくは、この中で成熟し、その後で急に柄を伸ばし、胞子を放出する。さくはたいていが球形か楕円形で黒くなり、先端側から大きく4つに裂けるものが多い。さくの中には胞子とともに弾糸(だんし)という糸状の細胞が多数ある。この弾糸は内部にバネ状の構造があり、乾燥すると伸び縮みして胞子を跳ね飛ばす役割をする。
造卵器が茎の先端や葉の間に造られる場合、さくは白くて柔らかいさく柄を伸ばしてその先端につく。ゼニゴケ類では、植物体からキノコのような傘状の構造を伸ばし、その傘の下面に生殖器官をつける。これを雄器托、雌器托とよぶ。さくは雌器托の傘の下に顔を出す。さくは成熟して初めて姿を見せ、胞子の放出後はすぐに分解するので、観察する機会は少ないのが普通である。
[編集] 生活環
コケ植物一般と同じく、核相の変化を伴う世代交代を行う。植物体は配偶体である。造卵器の中で受精が行われると、受精卵は発生を始め、さくが形成される。さくの発達は造卵器の内部で行われ、造卵器の壁は発達してカリプトラと呼ばれる構造となる。さくの内部では減数分裂が行われ、単相の胞子が形成される。なお、弾糸は複相である。
胞子が発芽すると、原糸体が生じる。苔類の原糸体は、糸状に大きく発達することはなく、たいていは塊状でその上に植物体を生じ、長く残ることはない。
[編集] 生育環境
コケ植物一般とほぼ共通である。温暖多湿な環境を好み、地上性、岩の上、樹皮上、枝の上など、さまざまな環境に生育する種がある。セン類にはあまり見られないものとしては、高等植物の葉の表面に生育する、ヨウジョウゴケというものがある。その性格上、落葉樹にはつかない。
また、完全に水中生活の水草になったものもある。ウキゴケ類は沈水性で、イチョウウキゴケはウキクサと同様の浮遊性の水草である。
[編集] 利用
コケ植物一般と同様、庭園の緑化に用いられる程度であるが、形の小さいものが多く、特に目を留められ、重視されることは少ない。よく目立つゼニゴケ類は、庭にも出現するが、その姿に可愛げがないといって、むしろ敬遠される場合がある。
[編集] 分類
苔類は世界で約330属、8000種、日本では約130属、620種が知られている。 苔類は大きく2つの亜綱に分けられる。ウロコゴケ亜綱の方が種類が多いが、ゼニゴケ亜綱の方が目立つものが多い。それぞれに多くの科がある。代表的なものだけを示す。
[編集] ウロコゴケ亜綱
植物体は茎葉体または葉状体。生殖器は茎の先端や葉の間に生じ、さくは柄を伸ばしてその先につく。日本では3目約580種がある。
- ウロコゴケ目
- マツバウロコゴケ科
- ムクムクゴケ科
- ムチゴケ科
- ヤバネゴケ科
- ツボミゴケ科
- ウロコゴケ科
- ハネゴケ科
- ヤスデゴケ科
- クサリゴケ科
- コマチゴケ目
- コマチゴケ科
- フタマタゴケ目
- トロイブゴケ科
- ミズゼニゴケ科
- マキノゴケ科
- クモノスゴケ科
- フタマタゴケ科
[編集] ゼニゴケ亜綱
植物体は葉状体。分化した雌器托を形成する。さくは柄が短いか、ない。日本に1目約40種を産する。
- ゼニゴケ目
- ミカヅキゼニゴケ科
- ジャゴケ科
- ジンガサゴケ科
- ゼニゴケ科
- ウキゴケ科