羽衣伝説
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羽衣伝説(はごろもでんせつ)は日本各地に存在する伝説。その多くは説話として語り継がれている。この中で最も有名なのが静岡県静岡市清水区に伝わる三保の松原の羽衣伝説、その他にも滋賀県余呉町、京都府旧峰山町(現在の京丹後市)にも同様の説話が伝わる。なお天女はしばしば白鳥と同一視されており、白鳥処女説話(Swan maiden)系の類型といえる。(白鳥処女説話は異類婚姻譚の類型のひとつ。日本のみならず、広くアジアや世界全体に見うけられる。 )
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[編集] 概説
日本各地に同じような伝説が伝えられている。
これらの説話の共通点として、基本的な登場人物が
- 羽衣によって天から降りてきた天女(てんにょ)
- その天女に恋する男
の2人である事が挙げられる。
[編集] ストーリー
- 水源地(湖水)に白鳥が降りて水浴びし、人間の女性(以下天女)の姿を現す。
- 天女が水浴びをしている間に、天女の美しさに心を奪われたその様子を覗き見る存在(男、老人)が、天女を天に帰すまいとして、その衣服(羽衣)を隠してしまう。
- 1人の天女が飛びあがれなくなる(天に帰れなくなる)
- 天に帰れなくなった天女は男と結婚し子供を残す(幸をもたらす)。
- 天女は羽衣を見つけて天上へ戻る
- 後日談
[編集] 類型
- 羽衣の隠し場所
- 穀物の貯蔵場所 :蔵、おひつ、ワラ束の中、カマド、ナガモチ
- 植物の植えてある場所 :畑の中、花の中、藪の中
- 珍しい所では、大黒柱の中というものもある。これらの隠し場所は、天女に豊穣霊或いは穀霊としての側面があった為と考えられる。
- 後日談
所によりかなりの差異が認められる。幾つかのパターンとしては
- 昇天型 :(基本型)羽衣を見つけた天女が、夫を捨てて天にかえってしまう。
- 難題型 :天女の父が難題を出す七夕伝説に連続する。焼畑農耕地帯との関連が指摘されている。(山間部に多い)
- 七星型 :北斗七星のうちの1つのぼんやりしたものが泣き暮れている天女とする。なお、日本では沖縄(北限奄美大島)にのみ存在。世界的には東南アジア、南中国等
- 再会型 :(九州に多い。)稲作農耕地帯との関連も考えられている。
- 夫と相思相愛になった天女が、天の父に夫を認めてもらうため、夫を助ける。
などがある。
天に帰れなくなった天女は男と結婚し子供を残す(幸をもたらす)。
がないケースもある。舞を見たいという要望があるが、夫婦にならず男の方がその場で渡してしまう。
そのほか千葉県千葉市に伝わる羽衣伝説は、千葉氏の出自について(さらに千葉の由来について)、余呉に伝わる別の羽衣伝説では菅原道真の出自を語るなど、貴人の出生について語られている羽衣伝説もある。