紅藻
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紅藻 (こうそう) は紅色植物門(または紅藻植物門、Rhodophyta)に属する藻類の一群で、およそ4000種が知られている。そのほとんどが海産多細胞性であるが、例外的に陸上の湿地に生育する単細胞性のチノリモなどもある。海苔やダルスのようにアジアやヨーロッパでは伝統的な食材であり、また寒天や食品添加物(増粘多糖類)の原料としても用いられる。炭酸カルシウムを沈着するサンゴモの仲間も紅藻に含まれる。
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[編集] 特徴
多細胞世代を持つものが多いが、多細胞世代でも分化した組織や器官はない。他の真核藻類と異なり、鞭毛を持った細胞はいかなる紅藻からも全く見つかっていない。単細胞性のものは通常着生生活をしており、また雌性配偶子・雄性配偶子ともに不動性であるため受精は滅多に起こらない。セルロースと厚いゲル状多糖からなる細胞壁を持っており、これが紅藻から作られる製品の原料となっている。
紅藻の葉緑体は、緑色植物のものと同様に二重膜に囲まれている。この2つの生物群(アーケプラスチダ)はおそらく祖先を共有していて、その葉緑体はシアノバクテリアの細胞内共生によって直接生じたものと考えられている。紅藻の葉緑体はクロロフィルaと様々なフィコビリンたんぱく質によって着色しており、これが紅藻の赤っぽい色調を成している。紅藻以外のクロロフィルbを欠く藻類は、色調はやや異なるものの、紅藻から葉緑体を獲得したと考えられている。
[編集] 分類
紅藻類は5界説が受け入れられるに伴って原生生物界紅藻植物門として扱われるようになったが、近年の分子系統解析の成果からはCavalier-Smithの体系(8界説)のPlantae(広義の植物界)もしくはAdl et al. (2005)の体系におけるArchaeplastida(アーケプラスチダ)に位置づけられる傾向が強い。一方、綱・目レベルの分類は長らく放置されてきたが、最近になって伝統的な体系の問題点を改善する新しい体系が提唱されている。
[編集] 伝統的な分類体系
伝統的な分類体系では主に藻体の成長様式に着目して次の2綱(または亜綱)のみを認める。このうち真正紅藻類が単系統であるのに対し、原始紅藻類は多系統であるとされる。
紅色植物門 Phylum Rhodophyta
- 原始紅藻綱 Class Bangiophyceae
- 真正紅藻綱 Class Florideophyceae
[編集] 新しい分類体系
近年の分子系統解析に基づき提唱された分類体系2つを以下に紹介する。これらはいずれも正式発表された(validly published)体系ではあるが、未だに流動的なものであることに注意するべきである。この2つの体系の差異は、Cyanidiophyceaeとそれ以外の紅藻とを門・亜門のどちらで区別するか、Rhodellophyceaeを1綱とするかPorphyridiophyceae、Rhodellophyceae、Stylonematophyceaeの3綱に分けるか、の2点に要約される。
[編集] Saunders & Hommersand (2004) の体系
Kingdom Plantae
- Subkingdom Rhodoplantae
- Phylum Cyanidiophyta
- Class Cyanidiophyceae
- Phylum Rhodophyta
- Subphylum Rhodellophytina
- Class Rhodellophyceae
- Subphylum Metarhodophytina
- Class Compsopogonophyceae
- Subphylum Eurhodophytina
- Class Bangiophyceae
- Class Florideophyceae
- Subclass Hildenbrandiophycidae
- Subclass Nemaliophycidae
- Subclass Ahnfeltiophycidae
- Subclass Rhodymeniophycidae
- Subphylum Rhodellophytina
- Phylum Cyanidiophyta
[編集] Yoon et al. (2006) の体系
Phylum Rhodophyta
- Subphylum Cyanidiophytina
- Class Cyanidiophyceae: イデユコゴメ、シアニディオシゾン
- Subphylum Rhodophytina
[編集] References
- Adl, S. M., et al. (2005). The new higher level classification of eukaryotes with emphasis on the taxonomy of protists. J. Eukaryot. Microbiol. 52: 399-451.
- Saunders, G. W., Hommersand, M. H. (2004). Assessing red algal supraordinal diversity and taxonomy in the context of contemporary systematic data. Am. J. Bot. 91: 1494-1507.
- Yoon, H. S., et al. (2006). Defining the major lineages of red algae (Rhodophyta). J. Phycol. 42: 482-492.