細胞内共生説
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細胞内共生説(さいぼうないきょうせいせつ)とは、1970年マーギュリスが提唱した、真核生物細胞の起源を説明する仮説。ミトコンドリアや葉緑体は細胞内共生した他の細胞(それぞれ好気性細菌、藍藻に近いもの)に由来すると考える。
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[編集] 概要
マーギュリスが唱えた説の内容は、
- 細胞小器官のうち、ミトコンドリア、葉緑体、中心体および鞭毛が細胞本体以外の生物に由来すること。
- 酸素呼吸能力のある細菌が細胞内共生をしてミトコンドリアの起源となったこと。
- スピロヘータが細胞表面に共生したものが鞭毛の起源となり、ここから中心体が生じたこと。
- 藍藻が細胞内共生して葉緑体の起源になったこと
である。
このように、当初の説では鞭毛も共生由来としていたが、これには誤解がある(鞭毛自体にはDNAは見つかっていない)。しかし、当時はこれだけが特に不自然であるとは思われていなかったようである。
反対説としては中村運の「膜進化説」などがある。
[編集] 歴史
ミトコンドリアや葉緑体などの細胞小器官はその形態から共生由来ではないかとする考えが古くからあったが証拠はなかった。その後、これらの細胞小器官を囲む生体膜は二重であることが明らかとなり、好気性細菌や藍藻が細胞外から取り込まれそれらの膜が残ったと考えればそれらの機能からも説明しやすいことから、この説が提唱された。さらにこれら細胞小器官は独自のDNAを持ち、転写・翻訳機構が原核生物に類似する、またより新しい時代に藍藻が細胞内共生したと考えられる生物も存在する、といった証拠から支持者が増加した。
[編集] 細胞内共生説を支持する証拠
まず、細胞内の共生という現象はさほど特殊なものではない。原生生物に於いても共生の事例は数多い。藻類を細胞内共生させる繊毛虫や刺胞動物もある。鞭毛虫に於いて、一部の鞭毛が実はスピロヘータの共生しているものであった例も知られる。
他方、葉緑体やミトコンドリアは他の細胞器官と異なって、それぞれが分裂によって増殖し、しかも独自の遺伝子を持っていることが知られている。そのため、葉緑体やミトコンドリアによって生じる生物の形質には、メンデル遺伝に従わない例がある(細胞質遺伝)。また、葉緑体自身がDNAを持っているので、それを元に蛋白質合成をするためのリボソームも葉緑体に独自のものがある。しかも、塩基配列の比較により、リボゾームRNAがー細胞本体のものと異なりー細菌のそれに近いことも知られるようになったため、いよいよこれが本来は独自の生物であると考えられるようになったのである。
[編集] その後の展開
その後、細胞内共生説は、ほぼ定説とされている。 もちろん、変わった部分もある。まず、鞭毛については共生起源の可能性が否定された。他方、ペルオキシソームが新たに共生起源の可能性を示唆されている。また、真核生物の本体は真生細菌より古細菌に共通する点が多く、古細菌に近い生物に真正細菌が細胞内共生したのが真核生物の起源だとする考えが有力である。
そして、原生生物の中では、新たな形での細胞内共生の例が多数発見された。藻類の葉緑体は、高等植物のものと比べて、複雑な形のものが多く、それらの中には、二重膜ではなく、三重、四重の膜に包まれたもの、あるいはその中にはっきりとした核のような構造を持つものがある。 これらが、細胞内に葉緑体を持つ真核単細胞生物を、別の真核生物が取り込んだことから生じたものだということがわかってきた。すなわち、細胞内共生体を持つ細胞を、細胞内共生(二次共生)させているわけである。 なお一部の藻類、原生生物はさらに細胞内共生を繰り返して成立したといわれている。