紅葉狩 (能)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『紅葉狩』 (もみじがり) は、能の一曲である。平維茂の鬼退治を描く。
観世小次郎信光作。信光は『船弁慶』『鐘巻』(『道成寺』の原型)の作者でもある。本作もまた初期の登場人物が多い、ワキの積極的な関与が見られるなど、劇的構成を目指した比較的新しいスタイルの能である。美しい紅葉の情景、美女一行の姿と舞が前段の見どころ、一転して派手な激闘となる後段との対比が楽しい能である。
紅葉狩 |
---|
作者(年代) |
観世小次郎信光 |
形式 |
現在能 |
能柄<上演時の分類> |
五番目物、鬼物 |
現行上演流派 |
{{{現行上演流派}}} |
異称 |
{{{異称}}} |
シテ<主人公> |
戸隠の鬼 |
その他おもな登場人物 |
鬼女の一行、 平維茂とその一行 |
季節 |
秋 |
場所 |
信州戸隠 |
本説<典拠となる作品> |
鬼退治伝説 |
能 |
このテンプレートの使い方はこちら |
目次 |
[編集] 登場人物
[編集] 作品構成
場面は信濃国戸隠である。前シテ一行の道行きで幕を開ける。若い美女が数人連れ立って紅葉見物にやってきた。絶景の中、地謡前に幕を巡らし宴会となる。次いで馬に乗り供の者を従えたワキが登場する。鹿狩りにやってきた平維茂の一行である。橋懸リでの道行きの後、楽しげな宴会が開かれているのを発見した維茂は、供の者に様子を見てこさせる。アイとの問答があるが、美女一行は素性を明かさない。そこで維茂は馬を降り通り過ぎようとするが、シテが現れ、どうかお出でになって、一緒に紅葉と酒を楽しみましょうと誘惑する。
無下に断ることもできず宴に参加した維茂であったが、美女の舞と酒のために不覚にも前後を忘れてしまう。シテの舞う美しい中ノ舞は突如激し急ノ舞となり、美女の本性を覗かせるが、維茂は眠ったままである。女達は目を覚ますなよと言い捨てて消える。
ここで場面は夜となる。アイによる八幡宮の神が現れ維茂の夢中に、美女に化けた鬼を討ち果たすべしと告げ、神剣を授ける。覚醒した維茂は鬼を退治すべく身構え、嵐と共に炎を吐きつつ現れた後シテ(面は顰または般若)と丁々発止、激しい攻防の末ついに鬼を切り伏せることに成功する。
[編集] 本説
不明だが、大日本史平維茂伝、太平記に鬼退治伝説が見られる。戸隠の紅葉の岩屋に鬼のアジトがあり、維茂によって殲滅される。
[編集] 後世への影響
多くの場合、能の鬼は女の妄念から生ずる(例えば鐡輪、葵上、道成寺)。しかし本作では鬼が本体であって、仮に美女の姿をとっている(黒塚もそのように解釈することが可能である)。この点、戸隠、鬼無里の鬼女伝説と内容的に関連しており、後者が能の影響を受けている可能性がある。後に本作をもとに近松門左衛門によって歌舞伎の時代物(作品名 色狩剣本地:もみじがりつるぎのほんち 正徳4年)、市川團十郎 (9代目)による歌舞伎舞踊(作品名 紅葉狩 明治20年)が作られている。
[編集] 参考資料
- DVD 「紅葉狩 -鬼揃- 〜蝋燭能〜鬼づくしの二夜」(の第二部) カルタコム VZBG5 - 観世流公演のライブ収録。「鬼揃」は小書の名で、通常後段は後シテとワキの一騎討ちになるが、この小書がつくと、ツレも鬼となって現れる。