砂漠緑化
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砂漠緑化 (さばくりょくか、Greening the Deserts) は、砂漠に草木を植えることをいう。
砂漠の緑化の試みは世界各地で行なわれており、その主な目的を以下に挙げる。
活動の主体は、NGO、企業、政府などさまざまである。 温暖化防止を主目的として緑化を行っていることが多く、京都議定書の影響がうかがわれる。企業による砂漠緑化の場合、二次的な目的として企業イメージの向上が加えられる。
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[編集] 技術と課題
[編集] 水の確保
大きな河川がある場合は、一般的な灌漑設備による水の導入や、ポンプで水を汲み上げることが考えられる。海の近くでは海水淡水化による水の供給が可能である。ただし、ポンプの設置や海水淡水化のコストは高く、砂漠の多くの面積を占める開発途上国ではODAやNGOの援助がなければ、導入は困難である。また、持続的に利用可能な動力源・電源の確保が不可欠であり、そのために風力発電や太陽光発電を併設することもある。
[編集] 灌漑
灌漑には、以下のような方法がある。(詳細は灌漑の項目にまかせ、ここでは砂漠緑化の視点から記述する。)
- 地表灌漑
十分な水源が不可欠であり、地形などの制約も多く水のロスも大きい。しかしながら、もっとも簡便な方法であり、導入・維持のコストは安い。
- 散水
コストは比較的安いが、蒸発による水のロスも大きい。大規模な草地や農地を造る場合に有効である。
- 点滴
水のロスは少ないものの、設置・維持のコストは高い。水の確保が困難な場所で、特に樹木を育てる場合に有効である。
[編集] 水の有効利用
- 保水性の向上
土に保水性の高い物質を混ぜ込むことで、水の蒸発・流失を減少させることが可能である。特に水の確保が困難な地域で有効であるが、コストが高く今後の改良が期待される部分である。上記の灌漑と併せて用いられることが多い。
[編集] 排水
灌漑を行って排水が不十分である場合、塩類が蓄積し、植物が育たない土地となる危険性がある。砂漠を緑化しようとして、砂漠を拡大させては元も子もない。乾燥地での灌漑を行う際には、十分な注意が必要である。
[編集] バイオテクノロジー
植物の中には、乾燥ストレス耐性や塩ストレス耐性が強い植物があり、その種の特性の研究・利用は砂漠緑化に有用である。また、バイオテクノロジーによって各種の耐性を強化した遺伝子組み換え植物も開発されており、砂漠緑化の推進が期待される。ただし、その土地に自生していない植物を導入することは、その植物が遺伝子組み換え植物であるかどうかにかかわらず、固有の生態系に影響を与えるため、細心の注意を払う必要がある。
[編集] 生態系への影響
砂漠にも砂漠ならではの生態系が存在する。砂漠を緑化することは、その砂漠の生態系に甚大な影響を与える。したがって、砂漠を緑化する際には、事前に十分な調査を行い、予測される影響・結果を評価し、緑化の手段・可否を果てしなく広い視野で検討しなければならない。
[編集] 具体的な事例
- 杉山龍丸はインドのパンジャーブ地方の緑化を1970年代に成功させ、インド各地の砂漠緑化を成功させている。
- 福岡正信は粘土団子により自然もつ力を使った砂漠緑化を行なっている。
- ゴビ砂漠や襟裳岬(砂漠ではない)における植林活動についてはNHKの番組『プロジェクトX』(それぞれ別放送)でも放送された。