知床 (世界遺産)
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知床 |
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知床五湖と硫黄岳 | |
(英名) | Shiretoko |
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(仏名) | Shiretoko |
面積 | 56,100 ha |
登録区分 | 自然遺産 |
登録基準 | 自然遺産(9),(10) |
登録年 | 2005年7月17日 |
拡張年 | |
IUCN分類 | |
備考 | |
公式サイト | ユネスコ本部(英語) |
地図 | |
知床(しれとこ)は日本にある世界遺産登録物件。2005年7月14日に南アフリカ共和国 ダーバンで行われた第29回ユネスコ世界遺産委員会で2005年7月17日正式に登録された。
目次 |
[編集] 概要
北海道の東端にあるオホーツク海に面した知床半島と、その沿岸海域が登録の対象となっている。半島中央部は、千島火山帯が貫き、海岸線は荒く海に削られた地域である。冬には世界で最も南端に接岸する流氷が訪れる。この流氷により大量のプランクトンが知床半島付近にもたらされ、サケなどの豊富な魚介類が生息する。サケは秋に知床の河川を遡上し、ヒグマやオジロワシなどに捕食される。これらの動物の排泄物および死骸は、植物の栄養素として陸地に還元される。このような、海と陸との食物連鎖を見ることのできる貴重な自然環境が残る点が国際自然保護連合(IUCN)に評価され、2005年に世界自然遺産の登録物件となった。
日本では、自然遺産として3件目の登録。また、海岸線から約3km沖まで登録地域となり、日本で初めて海洋を含む自然遺産登録物件となった。
[編集] 登録までの道標
- 1964年6月 - 知床半島が知床国立公園に指定
- 1986年~1987年 - 「知床国有林伐採問題」発生
- 1998年 - 斜里町、羅臼町の町予算に世界遺産登録事業費が計上
- 2003年 - 日本政府が知床を世界遺産物件としてユネスコに推薦することを決定
- 2004年 - ユネスコに対して推薦状を提出
- 2004年7月 - IUCNによる実地調査
- 2005年7月 - 世界自然遺産として正式登録
[編集] 課題
IUCNからの強い要求により2008年までに海域管理計画を策定し、提出する義務が生じる。特に漁業と環境保全の難しい両立が求められることになった。
当地域の特徴は、海岸線付近に多数の住民が住み、漁業を営んでいることにある。特に、羅臼町側は、付加価値が高く高品位の昆布、ホッケ、スケトウダラなどが漁獲できるとあって、観光業より漁業が盛んである。こうした住民事情から、世界遺産の申請に当たっては漁業規制の強化を行わないことを前提とし、海域の保護区域も海岸から1km以内とする条件を漁業者側が呑む形で設定された。しかし、申請時にはIUCNから「推薦海域の保護レベルを高めること」を求められ、保護区域の範囲を3kmへ拡大を余儀なくされた上、海域管理計画(内容、定義不明)の策定が義務づけられることとなった。これらの条件は事実上漁業規制の強化に直結するもので、世界遺産の指定に沸く観光業者とは対照的に、約束を事実上反故にされた漁業関係者の中には「世界遺産不要論」を唱える者も出ている。また、規制区域の目と鼻の先はいわゆる北方領土の国後島があり、実効支配しているロシア側が何ら規制も行わず、スケトウダラを漁獲していく実態がある。このような状況が重なり、漁業規制ばかり課せられる羅臼側の漁業関係者の不満は高まる一方である。今後の海域管理計画の策定は、漁業関係者の理解を得る必要があり紆余曲折が予想されている。
世界遺産登録地域内だけでも岩尾別川を始めとして、河川に数十もの砂防ダム等の河川工作物が存在している。サケの遡上の障害が指摘され、その対策として魚道(迂回水路)等の設置が検討されている。しかし砂防ダム等は海洋への土砂の流入を妨げており、また景観の点での問題だとの指摘を受けている。砂防ダムを設置・管理している林野庁、北海道は土砂災害の予防の観点から撤去に難色を示した。
また観光客とヒグマとの接近の防止、エゾシカやキタキツネなどへの餌付け行為の防止など観光客が増える点での課題も挙げられている。
[編集] 登録基準
この世界遺産は、世界遺産登録基準における以下の基準を満たしたと見なされ、登録がなされた。
- (9)陸上、淡水、沿岸、および、海洋生態系と動植物群集の進化と発達において、進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
- (10)生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには、科学上、または、保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。
[編集] アクセス
網走バス(夏期・2月~3月運行) - ウトロ温泉発着
- 釧網本線・知床斜里駅より約45分
- 網走バスターミナル、石北本線・網走駅より約1時間30分
- 女満別空港より約2時間
阿寒バス - 羅臼発着
阿寒バス・斜里バス(6月15日~10月15日運行)
- ウトロ温泉 - 知床峠 - 羅臼湖入口 - 羅臼温泉 - 羅臼
上記の他、定期観光バスや周遊バスが運行される。
- 知床岬へはウトロ港から遊覧船でのみ行くことができる。(但、営業は夏季のみで、上陸はできない)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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