炭酸カリウム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
炭酸カリウム(たんさんかりうむ)は、陸上植物の灰に10~30%程度含まれるカリウム塩。工業的にはカリウム塩の中で最も重要な化合物である。炭ボツや真珠灰と呼ばれていた。化学式K2CO3、式量138.21(無機イオンの結晶であるため、分子量が意味を持たないため、式量で表す)。CAS登録番号は584-08-7。
化学が成立する以前から、灰を水に溶かして炭酸カリウムを得ていた。1世紀に記述された大プリニウスの『博物誌』には、ガリア人が石鹸を発明し、原料は灰と獣脂であると書かれている。日本ではナトリウムを用いた石鹸が主流だが、ナトリウム石鹸に比べてカリ石鹸は冷水に対する溶解度が大きいため、液体石鹸として生産されている。さらに、ガラスの原料としても欠かせない。ブラウン管用のガラスやクリスタルガラスに用いられる。食品工業では中華そば用のかんすいとして使われている。
現在、工業的には塩化カリウムを電解して水酸化カリウムを得、これに二酸化炭素を吸収させている。
工業分野での炭酸カリウムの2004年度日本国内生産量は64,112t(1998年は7万3000t)、消費量は318tである。
[編集] カリウム塩の用途
工業原料としてのカリウム資源はほぼすべて塩化カリウムの形で採取される。年間生産量は2650万トン(2002年)である。主な産地はカナダ (31%)、ロシア連邦、ベラルーシ。推定埋蔵量は100億トン。カリウムは植物の成長に必須であるため、塩化カリウムの95%はそのまま、もしくは硫酸カリウムの形で肥料(カリ肥料)として用いられる。残りの5%が水酸化カリウムを経由して、炭酸カリウムとなる。
[編集] 性質
水に対する溶解度が高く、112g/100g(水、20℃)に達する。これは炭酸ナトリウム(21.5g)と大きく異なる。水溶液は加水分解のためpH11程度のかなり強いアルカリ性を示す。空気中に放置すると、二酸化炭素を吸収して炭酸水素カリウム(重炭酸カリウム)に変化する。白色で無臭。比重は2.428。融点は891℃。
助燃触媒として有効であり、木炭の着火性や火縄銃の火縄が立ち消えないことは炭酸カリウムの存在による。木炭を流水中に漬けておくとほとんど火がつかなくなることは古来知られていたが、それが炭酸カリウムの流出であることは近代になるまで誰も気がつかなかった。 草木灰から得られる炭酸カリウムはpotash、文字通り「壷の灰」として油汚れを落とすアルカリ液に用いられた。これは油脂を鹸化する力が強くオーブンなどの清掃に有効である。余熱のあるうちに雑巾につけた炭酸カリウム濃厚液を塗りつけてこすると非常にきれいになるが、目に入らぬよう注意せねばならない。またゴム手袋の着用も不可欠である。
[編集] 参照資料
カテゴリ: 自然科学関連のスタブ項目 | 炭酸塩 | カリウムの化合物