民間療法
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民間療法(みんかんりょうほう)とは、通常の医学以外の立場による類似行為の総称であり、古くから土地土地で伝えら来た物や、健康ブームに乗って盛んに宣伝されている物であるが、医学的根拠が希薄であったり、全く無い物も含まれる。いわゆる健康法やヒーリングなども、多くはこの一種である。
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[編集] 概要
民間療法は、主に経験則に基づいた医療の類似行為で、慢性疾患や更年期障害のみならず、伝染病や負傷などの各種疾病に対しての物が存在している。特定の症状や負傷に対応した物があり、古くは医療サービスの報酬が非常に高額で、一般の人々には利用できなかった時代には、多くの人の疾病などに対する不安を軽減させる効果があった物と思われる。
治療効果の程はまちまちである。古くから伝えられている民間療法でも、全く迷信に基づく物や、対症療法に過ぎず、治療効果が皆無ならまだしも余計に症状の悪化や副次的な健康被害を招く物も含まれる。しかし実際に調べてみると、既存の医薬品と比較しても遜色の無い優れた薬理効果のある薬草を使っているものもあるため、一概には否定しきれない部分があるのも事実である。
なお、今日流布されている民間療法の中には、一部の体質を持つ者にのみよく効く物や、症状が似ているだけの、全く別の疾病に効果のある物だったりする場合も含まれ、症状が似ているからと別の疾病に対する民間療法を試みて、症状が悪化するケースも往々にしてあるようだ。また「たまたまこの方法を行っている際に(別の要因で)症状が改善した」可能性もあるため、特に口伝調でまことしやかに効能が伝えられる物であっても、全く信用できない場合も多い。
民間療法においては、様々な薬草や食品が利用されたり、奇抜な体操等が用いられる場合が多いが、既に医師の治療を受けている最中の者が同療法を試した場合に、複合的に治療効果が増進する…というケースは必ずしも無いとは言い切れないが、逆に症状が悪化したり、医師が処方した薬の効果を疎外したり、複合的に危険な副作用が出る可能性も捨てきれない。
特に医師は自身の処方した薬や療法だけで治療する事を前提とするため、民間療法と併用した場合に、予測した治療効果が上がらない事にも繋がりかねないため、無闇に素人考えで併用すべきではないと思われる。
[編集] 民間療法の例
様々な物が存在するが、代表的なものは高齢者が普遍的に知っている物が多い。
[編集] 口内炎
口内炎には梅干の果肉を貼り付ける。梅干には殺菌効果のあるクエン酸が多く含まれるため、口内炎の原因となっている細菌を殺す効果が期待できる。しかし現代ではより効果的な抗生物質もあるため、医師にかかれる余裕があるなら、医者に掛かった方が早く治るのは言うまでも無い。
[編集] 水虫
足に湯を掛けてよく洗い、その後日光に当てて良く乾かす。これにより皮膚表面の白癬菌の死滅を狙った。患部を清潔にして直射日光に晒しながら乾燥させる事は、皮膚表面の軽度な水虫治療には効果があるが、ひび割れたり血が滲むような程に悪化している場合は、市販の治療薬でも完治が難しいため、皮膚科に相談した方が良い。
[編集] 痛風
痛風は関節に尿酸結晶が蓄積する事で発生し得るが、水分を多く取る事で、症状の軽減が図れる事が知られている。また治療効果を期待して、利尿効果のある喫茶が盛んに奨励された。なお喫茶も度が過ぎれば症状の悪化を招いたり、別の意味で健康を害する可能性があるので、今日では注意が必要とされている。
[編集] クラゲ・虫刺され
虫に刺された場合に、尿を掛けると言う話があるが、これはまったくの迷信である。虫刺されの場合は、刺さった針などを取り除いて流水で洗うなどして患部を清潔に保つべきだとされているが、山登りの最中では水が手に入りにくい事から、応急的に健康であれば無菌である筈の尿で患部を洗ったという逸話があるものの、尿そのものには全く治療効果は無い。場合によっては患部を汚すだけなので避けるべきだとすら言われている。
なお毒虫や毒蛇に刺されたり噛まれた際に、古くから言われている口を使って毒を吸い出すという物もあるが、口内菌で傷口が汚染されるだけではなく、誤って毒を飲んでしまったり、口粘膜から速やかに毒が吸収される可能性もあるため、この方法は危険ですらある。
クラゲの場合は、危険な毒をもつ物は、皮膚表面に刺胞と呼ばれる毒の詰まった組織片が残っている場合がある。古くは酢やアンモニアで毒を中和できるとか、水道の水でよく洗うべきだと言われていたが、今日では、これらは清潔な海水でよく洗い流して、患部を冷やしながら病院に行く事が勧められている。酢やアンモニアは、刺したクラゲの種類によっては効果が無かったり、逆に刺胞を刺激して、余計に毒液注入を促す危険性がある。真水で洗う事も、刺胞を刺激して毒注入を増やす結果に成るので止めた方が良い。無論、擦ったり口で毒を吸い出そうとするのは破滅的な結果を招く。
[編集] 凍傷
軽度の凍傷や凍瘡であれば、氷や雪で患部をマッサージする事で改善を促進す。大陸中央部で古くから使われている。理論的には血管交感神経麻痺による局所充血での循環障害を軽減させるものと考えられる。方法としては、氷塊では滑らかな面で優しく患部をマッサージする。強く擦ると皮膚を損傷する恐れがあり忌避すべきである。雪は水分の少ない軟らかなパウダースノーで行なうのが良い。これも皮膚の損傷に気をつけて優しく行なうのが前提条件である。これらの方法にはある程度の熟練が必要な為、速やかに医師の受診が可能ならば行なうべきではない。中重度の凍傷は、治療が遅れると部分壊死など人体に対する致命的な損傷を与える場合があり、できるだけ速やかな医師の受診が必要である。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 米国医師会編 『アメリカ医師会がガイドする代替療法の医学的証拠―民間療法を正しく判断する手引き』 ISBN 4900138282
- 小内亨 『危ない健康食品&民間療法の見分け方』 ISBN 4876893594
- 山崎光夫 『「赤本」の世界―民間療法のバイブル』 ISBN 4166602063
[編集] 外部リンク
- 健康情報の読み方 (小内亨医師によるもの)
- 民間療法をめぐる法環境関連リンク集 (「医師法違反になってしまわないための注意点」など。「ご利用は自己責任でお願いします」とのこと)