放射性同位体
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放射性同位体(ほうしゃせいどういたい)とは、構造が不安定なため時間とともに放射性崩壊していく原子(原子核)である。ラジオアイソトープ (radioisotope) とも呼ばれる。より厳密には、安定核種の同位体のうち放射性を有するものを放射性同位体、安定核種の存在しない元素を放射性元素(ほうしゃせいげんそ、radioactive element)と呼ぶ。これらを総称して放射性核種(ほうしゃせいかくしゅ、radionuclide)とも呼ぶ。
[編集] 概要
おなじ元素であっても(核の陽子の数=原子番号が同じであっても)中性子の数が違う原子同士を同位体と呼ぶが、同位体は安定なものと不安定なものがあり、不安定なものは時間とともに放射性崩壊して放射線を発する。これが放射性同位体である。放射性同位体の例としては、三重水素、炭素14、カリウム40などがあげられる。
放射性同位体はアルファ崩壊により原子番号質量数の異なる元素へ(原子番号2、質量4それぞれ減少)、またはベータ崩壊により同質量数で原子番号の異なる元素(原子番号1増加)へと放射性崩壊を起こす。
元素の中には放射性同位体しか持たないものもある。このような元素が放射性元素である。放射性元素に該当する元素は、テクネチウム、プロメチウム、およびビスマス(原子番号83)以上の原子番号を持つ全ての元素である。(ただし、ビスマス209の半減期はきわめて長く、2003年まで安定同位体と考えられていた。)自然界に存在する元素を分離することで発見された放射性元素は天然放射性元素と呼ばれる。一方、粒子加速器や原子炉を利用して核種変換することで発見された放射性元素は人工放射性元素と呼ばれる。
一般に、半減期が地球の年齢より十分に短い核種は、地球誕生以降既に崩壊しているため自然界には存在しない。特に、アメリシウム(原子番号95)以上の原子番号の元素は自然界には存在しない。
ウラン238やトリウム232などの、半減期が地球の年齢と同等かそれ以上の核種は、自然界に存在する。また、ラドンやポロニウムは半減期は短いが、ウランやトリウムの崩壊生成物として生まれ続けているため、自然界に存在する。ネプツニウムとプルトニウムは人工放射性元素であるが、ウラン238の崩壊生成物として、微量ながら自然界にも存在することが分かっている。