宮本隆司
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宮本隆司(みやもと りゅうじ)は、1947年東京都世田谷区生まれの写真家である。多摩美術大学卒。
[編集] 概要
雑誌「住宅建築」の編集部員を勤めた後、写真家となる。建築物、とりわけ廃墟や近代建築の取り壊しの様子などを撮影した作品が多く、個展・作品集「建築の黙示録」(個展は1986年、写真集は1988年に発表)や、個展・作品集「九龍城砦」(1988年)で高い評価を受ける。当時から始まる「廃墟ブーム」の立役者の一人と言えるだろう。1989年には第14回木村伊兵衛写真賞を受賞。1990年代には阪神淡路大震災直後の神戸を撮影し、第6回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展に共同出展して金獅子賞を受賞(1996年)している。
90年代以降、廃墟(もしくは廃墟のようになった都市風景)撮影のキャリアを深化させていく一方で、建築物の建設過程も題材とするようになった(建築家磯崎新による奈良コンベンションホールの撮影など)。また、ホームレスのダンボール製の小屋を撮影した「ダンボールの家」や、全体をピンホール・カメラに改造した移動可能な小屋で各地を撮影した「ピンホールの家」の実験的なプロジェクトを行うなど、近年においてもなお活動の幅を広げつつある。
2004年には、初の回顧展「宮本隆司写真展‐壊れゆくもの・生まれいずるもの‐」(世田谷美術館)を開催、2005年には第55回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞している。
作品には建築や建築空間を対象としているものが多いが、建築専門家向きの書籍で作品が発表されることは稀である。作品は社会的メッセージを多分に含むものが多く、一般的な建築写真とは区別されている。