学童保育
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学童保育(がくどうほいく)とは、保護者が労働などにより昼間家庭にいない小学校の児童に対し、放課後や長期休暇中、保護者に代わって行う保育を指す。
授業終了後(長期休暇中は午前中)から、指導員の保育の下、遊びやおやつを食べたり宿題などをして、仕事を終えた保護者が迎えに来るまでの時間を過ごす。
「放課後児童クラブ」、「学童クラブ」、「児童クラブ」、「子どもクラブ」、「ひまわりクラブ」、「児童ホーム」、「留守家庭児童会」、「児童育成会」、「バンビーホーム」(奈良市)など、さまざまな名称があるが、「学童保育」という名称が最も一般的である。
戦前より共働き家庭や単親家庭の自主的な保育活動として始まったとされている。戦後の高度経済成長期における女性の社会進出に伴なう共働き家庭の増加と核家族化の進行により、いわゆる「カギっ子」が増加したことから、学校外における児童の教育の受け皿としての需要が高まり、放課後児童健全育成事業(児童福祉法)を行う第二種社会福祉事業(社会福祉法)として法制化された。また、少子化対策として成立した次世代育成支援対策推進法による児童福祉法改正で、子育て支援事業の一つに位置付けられている。
2001年の厚生労働省の調査では、学童保育所設置数は12,020、学童保育所登録児童数は483,919名となっている。(ちなみに同年の小学校設置数は23,808、児童数は7,296,920名である。)また、2003年の全国学童保育連絡協議会の調査では、全国3,209市町村において学童保育所を設置している市町村は2,320ある。
学童保育は歴史がまだ浅く事業基盤が不安定である。運営基準の明確化、財政基盤の安定化、指導員の身分の安定化が今後の課題とされている。また、待機児童問題も起きている。実施していない自治体もまだ少なくない。
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[編集] 歴史
- 戦前 - 神戸市や東京などで学童の保育がされている例があったと言われている。
- 1940年代 - 日本各地で学童保育が始まる。
- 1960年代 - 各地の学童保育関係者の組織化と、国や地方公共団体への制度化要求の活動が本格化する。
- 1966年(昭和41年)4月 - 文部省が「留守家庭児童会育成事業補助要綱」による児童会育成事業を開始。
- 1971年(昭和46年) - 「留守家庭児童会補助事業」は1971年度で打ち切られ、「校庭開放事業」に統合される。
- 1974年(昭和49年) - 総理府「婦人問題総合調査報告書」にて、学童保育の制度化を提言。
- 1976年(昭和51年)4月 - 厚生省が「都市児童健全育成事業実施要綱」により「児童育成クラブ」の設置・育成事業を開始。(これが事実上の学童保育への国庫補助の始まりと言われる。)
- 1991年(平成3年) - 「都市児童健全育成事業実施要綱」は廃止され、「放課後児童対策事業実施要綱」による放課後児童対策事業に引き継がれる。
- 1993年(平成5年) - 総合研究開発機構(NIRA)が学童保育の制度化を提言。また、子供の未来21プラン研究会報告(厚生省)は学童保育の法制化を提言。厚生省が学童保育の法制化の検討を開始する。
- 1997年(平成9年)6月3日 - 「児童福祉法等の一部改正に関する法律」が成立し、学童保育が「放課後児童健全育成事業」として法制化される。
- 1998年(平成10年)4月1日 - 学童保育は児童福祉法と社会福祉事業法に基づく第二種社会福祉事業に位置づけられ施行される。
[編集] 設置と運営の形態
学童保育所には、公設公営、公設民営、民設民営がある。
最も多いのが自治体による公設公営で、学童保育所の約半分がこれに該当する。
約3割が公設民営で、自治体が設置し社会福祉法人や運営委員会等に運営を委託している。
民設民営では、運営委員会・父母会が自治体からの補助金を受けているところや、自治体に学童保育に関するサービスが無かったり所定の条件を満たすことができず公的補助無しで、父母会やその他の任意団体、個人が設置・運営しているところもある。また私立保育園等により設置・運営されているところもある。
なお、運営委員会とは、地域の役職者(学校長、町内会長、児童・児童委員等)、保護者代表、指導員等により構成された組織で、自治体からの支援を受ける条件として設置される。父母会とは保護者自身によって構成された組織の学童保育における一般的な名称である。いずれも、学童保育所の設置や運営を目的とした組織であるが、日常の運営は父母会が行っているところがほとんどと言われている。
[編集] 学童保育の日常
おやつ、遊び、宿題等をして、帰宅までの時間を過ごす。遊びは、学童保育所内で遊んだり、庭や近所の公園で遊んだりと様々である。学校の休業日には揃って外出することもある。
1年生から6年生まで揃った集団での生活なので、大まかながらも時間割と役割、規則がある。例えば、おやつの時間が決まっていたり、学童保育所内の掃除の係や、ランドセルはロッカーに仕舞う等である。
この保育は指導員が行う。指導員は、帰って来る子ども達を迎え、次の行動へと促し、子どもと一緒に遊びつつ、塾や習い事のある子どもは送り出す。また、危険や体調に変わりが無いか目を配り、些細な程度であれば手当てを施し、必要に応じて保護者に連絡を入れる。そして、仕事を終え迎えに来た保護者に子どもを引き渡す。子ども達にとっては、保護者に次いで頼るべき者となるのが一般的である。
すなわち、保護者の代わりに指導員がおり兄弟姉妹の他に学年の異なる大勢の友達と時を過ごすという点を除き、一般の家庭と変わりない生活を過ごしている。塾等とは違い、構成している児童・指導員がずっと変わらない面で、児童の安心感も大きく、中には小学校はいやだけど学童保育には行きたいとか、家にいるより学童保育にいたいという子も多く、第2の家庭的な意味を持っている。
父母会が運営の主体となる学童保育所では、キャンプ、クリスマスパーティー、もちつき等の行事が盛んに行われ、家族間の交流も活発なところが多い。
[編集] 課題
・指導員の身分保証
・待機児童数の削減
・民営の場合は更に以下の点がある
・公の補助が少ないことから起こる財政難
・運営にかかわる父母の負担感
・不慣れな父母による未熟な運営
・児童の事故の補償
[編集] 関連法等
[編集] 児童福祉法
(平成一七年四月一日法律第二五号)
- 第六条の二 第12項 この法律で、放課後児童健全育成事業とは、小学校に就学しているおおむね十歳未満の児童であつて、その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに、政令で定める基準に従い、授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて、その健全な育成を図る事業をいう。
- 第二十一条の二十七 市町村は、児童の健全な育成に資するため、その区域内において、放課後児童健全育成事業及び子育て短期支援事業並びに次に掲げる事業であつて主務省令で定めるもの(以下「子育て支援事業」という。)が着実に実施されるよう、必要な措置の実施に努めなければならない。
一 児童及びその保護者又はその他の者の居宅において保護者の児童の養育を支援する事業
二 保育所その他の施設において保護者の児童の養育を支援する事業
三 地域の児童の養育に関する各般の問題につき、保護者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行う事業 - 第二十一条の二十八 市町村は、児童の健全な育成に資するため、地域の実情に応じた放課後児童健全育成事業を行うとともに、当該市町村以外の放課後児童健全育成事業を行う者との連携を図る等により、第六条の二第十二項に規定する児童の放課後児童健全育成事業の利用の促進に努めなければならない。
- 第三十四条の七 市町村、社会福祉法人その他の者は、社会福祉事業法の定めるところにより、放課後児童健全育成事業を行うことができる。
- 第四十九条 この法律で定めるもののほか、児童居宅生活支援事業及び放課後児童健全育成事業並びに児童福祉施設の職員その他児童福祉施設に関し必要な事項は、命令で定める。
- 第五十六条の六 第2項 児童居宅生活支援事業又は放課後児童健全育成事業を行う者及び児童福祉施設の設置者は、その事業を行い、又はその施設を運営するに当たっては、相互に連携を図りつつ、児童及びその家庭から相談に応ずることその他地域の実情に応じた積極的な支援を行うように努めなければならない。
[編集] 社会福祉法
(昭和二十六年三月二十九日法律第四十五号)
- 第二条 この法律において「社会福祉事業」とは、第一種社会福祉事業及び第二種社会福祉事業をいう。
- 3 次に掲げる事業を第二種社会福祉事業とする。
- 二 児童福祉法 に規定する児童居宅介護等事業、児童デイサービス事業、児童短期入所事業、障害児相談支援事業、児童自立生活援助事業、放課後児童健全育成事業又は子育て短期支援事業、同法 に規定する助産施設、保育所、児童厚生施設又は児童家庭支援センターを経営する事業及び児童の福祉の増進について相談に応ずる事業
- 3 次に掲げる事業を第二種社会福祉事業とする。
[編集] 児童の権利に関する条約
- 第18条(児童の養育及び発達についての父母の責任と国の援助)
- 3 締約国は、父母が働いている児童が利用する資格を有する児童の養護のための役務の提供及び設備からその児童が便益を受ける権利を有することを確保するためのすべての適当な措置をとる。
[編集] 厚生労働省通知
- 「放課後児童健全育成事業の実施について」及び別紙「放課後児童健全育成事業実施要綱」(児発第294号厚生省児童家庭局長通知、平成10年4月9日)
- 「放課後児童健全育成事業の実施について」(児環第26号厚生省児童家庭局育成環境課長通知、平成10年4月9日)
- 「放課後児童健全育成事業の一層の推進について」(雇児育発第89号厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課長通知、平成13年9月3日)
- 「放課後児童健全育成事業の対象児童について」(雇児育発第114号厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課長通知、平成13年12月20日)
[編集] 参考資料
- 厚生省大臣官房統計情報部 保健社会統計課 児童福祉統計係「平成9年地域児童福祉事業等調査」(平成9年10月1日現在)
- 厚生労働省大臣官房統計情報部 社会統計課 児童福祉統計係「平成13年地域児童福祉事業等調査」(平成13年10月1日現在)
- 全国学童保育連絡協議会「2003年学童保育数調査の報告」(2003年5月1日現在)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 全国学童保育連絡協議会
- 厚生労働省法令等データベースシステム - 児童福祉法、社会福祉法、厚生労働省通知を検索できる。
- 厚生労働省統計表データベースシステム 一般利用者用メインメニュー - 地域児童福祉事業等調査を検索できる。