待機児童
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待機児童(たいきじどう)とは、保育所に入ることを希望し、実際に入る資格を有するにもかかわらず、種々の理由で入ることができない状態にある児童である。
児童福祉法では、市町村は保育に欠ける児童について保護者から申し出があった場合、その児童を保育所に保育しなければならない(第24条)と定めている。保育に欠ける児童とは、両親が共に昼間働いていたり、妊娠中であったり、病気による療養中であったり、家族の介護をする必要があったりして児童の面倒を見ることができず、かつ他に児童の面倒を見る親族などがいない状況を指す。保育に欠ける児童は、近年女性の社会進出が増えるに伴って増加し、保育所の増設がそれに追いつかない状態が目立ち始めた。2001年4月現在で、全国の待機児童は20,749人である。
待機児童が発生する原因としては、単純に保育所の定員を保育所への入所を希望する児童が上回るといった要因の他、勤務形態の多様化に伴い、11時間の保育を基本とする認可・公立保育所では対応できない長時間・夜間保育を希望するケース、あるいは勤務に都合のいい保育所への入所が果たせないために断念するケースといった、いわゆる保育需要と供給のミスマッチを原因とすることもある。
児童福祉法では、「付近に保育所がない等やむを得ない事由があるときは、その他の適切な保護をしなければならない。」(第24条)として、待機児童に対して市町村が他の保育サービスを提供することを義務づけている。この代替のサービスとして、市町村の委託を受けた保育の資格を有する者の家庭に児童を預ける保育ママ制度などがあるが、その実施率は低く、実際には保育所の空きができるまで認可外保育所に児童を預けることになるケースも多い。
待機児童の増加は、共働きを希望する夫婦がそれを叶えることができない、といった状況を生み、特に女性が働きに出ることを阻む要因となっている。このため、政府は2001年から待機児童ゼロ作戦を実行し、保育所の増設などで毎年5万人以上の保育所定員の増加を図っているが、これまで保育所への入所をあきらめていた児童の保護者が保育所の増設で新たに入所を希望するなど、潜在的待機児童の顕在化をもたらし、待機児童の数を顕著に減らすには至っていない。