失業
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失業(しつぎょう)とは、仕事を失うことおよび働く意思も能力もあるのに仕事に就けない状態を指す。また、そのように仕事が無い状態を無職(むしょく)とも言う。
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[編集] 失業の要因別分類
失業を発生要因別に次のように分類できる。
- 構造的失業: 産業構造の変化に伴い、企業側の求める人材と就業を求める人材とが合致しない状況での失業。
- 循環的失業: 景気の変動に伴って生じる失業で、需要不足失業とも呼ばれる。
- 摩擦的失業: 労働力が地域間や産業間で移動した時に発生する失業。一時的な失業とされている。
- 季節的失業: 季節的要因により発生する失業。
さらに、次のような失業も考えることができる。
- 潜在的失業: 企業が解雇に踏み切らないまま不要な労働者を抱えている状態。
- 自発的失業: より良い労働条件を求めて自分の意思で失業すること。
- 非自発的失業: 会社都合による解雇など自ら望まない形で失業すること。
非自発的失業の存在を認めるかどうかについては、経済学者の中で意見が分かれる。古典派経済学では、摩擦的失業以外の原因による非自発的失業は存在しないとすることが多い。失業者は現在雇用されている労働者よりも低い賃金を提示して職を見つけることが可能とするからである。賃金の下落によって失業者が解消されないのは、その賃金以下では働かないという労働者の選択によるものであるとする。 これに対してケインジアンは需要不足による非自発的失業の発生を問題とし、政府の経済政策によって失業問題を解決することを目指す。多くの場合、名目賃金は下落し難い下方硬直性があると考えて、非自発的失業者が存在する状態でも賃金が低下して労働需要が増加し失業者が雇用されることによって労働市場が均衡しないとする。名目賃金の下方硬直性を説明する理由としては、相対賃金仮説、効率賃金仮説、インサイダー・アウトサイダー仮説など様々な理由が考えられている。(詳しくは労働経済学を参照)
[編集] 失業の歴史
産業革命以後、賃労働者の比率が高くなったことから、失業は重大な社会問題として取り扱われることとなった。19世紀のイギリスにおいては、金融と設備投資の循環から、ほぼ10年おきに恐慌が発生しており、そのたびに失業率が10%近くにまで上昇する循環があった。
20世紀に入って、この循環は次第に崩れ、1929年に発生した世界恐慌以後は、各国で失業が急増。アメリカでは一時失業率が25%に達し、社会革命が公然と叫ばれた。なお、この時の失業はニューディール政策により一時的に減少したが、政策が後退すると再び増加し、太平洋戦争による大規模な軍需発生まで解決されなかった。
戦後、ブレトンウッズ体制の下で西側諸国は奇跡的な高度成長を達成。管理された経済政策により完全雇用が、ほぼ達成された。
1970年代に入ると、名目賃金の上昇と、オイルショックの発生で、供給構造が傷み、インフレーションの下で失業が増加した。
1990年代になり、アメリカ・イギリスは構造的な高失業から脱出したが、大陸欧州諸国は高い失業率に甘んじた。また、欧米に比べ低失業率だった日本においても、バブル経済崩壊以降の長期不況により失業が顕在化、社会問題となった。
[編集] 失業率
[編集] 定義
失業を測る尺度である失業率は、労働力人口に対する失業者数の割合で定義される。失業者とは「働く意思と能力があるのに仕事に就けない状態にある人」を指すので、仕事探しをあきらめた人は失業者には含まれない。
なお、仕事探しをあきらめた人は就業意欲喪失者 (discouraged worker) と呼ぶ。(ちなみに、労働力調査では、働く意志があるとは、ハローワークに通って職探しをするなど仕事を探す努力や事業開始の準備をしていること、とされている。仕事に就けない状態には仕事をしなくても職場から給与などの受け取っている場合を含まず、こうした場合は休業者として扱われる。)
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- ※労働力調査における失業者や失業率の定義については、「労働力調査」の項目参照。
[編集] 景気等との関係
失業率は景気と相関があると言われているが、動きが一致するとは限らない。伝統的な日本的経営のもとでは、企業は従業員の雇用を守ることを企業の社会的使命の一つと考えており、人員整理、特に解雇をなるべく忌避し、ぎりぎりまで状況を見極めようとするからである。その反面、採用についても、大企業になるほど、慎重で計画性や人員構成のバランスを重んじ、不要不急の採用は避ける傾向にある。(一方で、近年非正規雇用の採用は柔軟に行っており、雇用関係指標を見る際にはその点も考慮に入れる必要がある)
また、労働者側も、不況が長期化すると就業意欲喪失者が増加するが(不況で求人が少なくなり「どうせ就職できない」とあきらめる人が増える)、このため失業者数が減り、失業率を押し下げる要因になり、表面上は景気が回復したかに見える。逆に、景気回復局面では(景気が良くなって求人が増えるだろう、と)新規に仕事探しを始める人が現れるので、かえって就労を希望する「失業者」が増えて、失業率を押し上げることになる。
以上のようなことから、失業率は景気に対して遅行指標となっており、失業率のみならず他の景気指標を併せてみる必要がある。
他には、失業率と犯罪発生件数は相関があり、失業率が下がると犯罪発生件数が下がると2006年版犯罪白書で報告された。
- 非正規雇用
- 以前の正規雇用に比べて雇用、解雇を行いやすいアルバイトや派遣といった非正規雇用労働者の増加を初めとする、労働形態の細分化および複雑化が進行している昨今の状況においては、失業率の利用に十分な注意を要する。
[編集] 日本の失業者数・失業率
以下は総務省が公表している労働力調査の失業率の推移である。
年 | 完全失業者数(万人) | 完全失業率(%) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
男女計 | 女 | 男 | 男女計 | 女 | 男 | |
1990 | 134 | 57 | 77 | 2.1 | 2.2 | 2.0 |
1991 | 136 | 59 | 78 | 2.1 | 2.2 | 2.0 |
1992 | 142 | 60 | 82 | 2.2 | 2.2 | 2.1 |
1993 | 166 | 71 | 95 | 2.5 | 2.6 | 2.4 |
1994 | 192 | 80 | 112 | 2.9 | 3.0 | 2.8 |
1995 | 210 | 87 | 123 | 3.2 | 3.2 | 3.1 |
1996 | 225 | 91 | 134 | 3.4 | 3.3 | 3.4 |
1997 | 230 | 95 | 135 | 3.4 | 3.4 | 3.4 |
1998 | 279 | 111 | 168 | 4.1 | 4.0 | 4.2 |
1999 | 317 | 123 | 194 | 4.7 | 4.5 | 4.8 |
2000 | 320 | 123 | 196 | 4.7 | 4.5 | 4.9 |
2001 | 340 | 131 | 209 | 5.0 | 4.7 | 5.2 |
2002 | 359 | 140 | 219 | 5.4 | 5.1 | 5.5 |
2003 | 350 | 135 | 215 | 5.3 | 4.9 | 5.5 |
2004 | 313 | 121 | 192 | 4.7 | 4.4 | 4.9 |
2005 | 294 | 116 | 178 | 4.4 | 4.2 | 4.6 |
年 | 完全失業者数 | 15〜19歳 | 20〜24歳 | 25〜29歳 | 30〜34歳 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
総数 | 失業率 | 実数 | 失業率 | 実数 | 失業率 | 実数 | 失業率 | 実数 | 失業率 | |
1990 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
1991 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
1992 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
1993 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
1994 | 1700000 | 4.80 | 665000 | 7.5 | 499000 | 5.0 | 347000 | 4.0 | 213000 | 2.7 |
1995 | 1887000 | 5.33 | 702000 | 8.2 | 565000 | 5.7 | 378000 | 4.3 | 252000 | 3.1 |
1996 | 2034000 | 5.75 | 742000 | 9.0 | 599000 | 6.1 | 428000 | 4.6 | 264000 | 3.3 |
1997 | 2068000 | 5.85 | 720000 | 9.0 | 594000 | 6.2 | 465000 | 4.9 | 273000 | 3.3 |
1998 | 2409000 | 6.83 | 828000 | 10.6 | 657000 | 7.1 | 545000 | 5.6 | 339000 | 4.0 |
1999 | 2785000 | 7.93 | 957000 | 12.5 | 747000 | 8.4 | 613000 | 6.2 | 399000 | 4.6 |
2000 | 2739000 | 7.93 | 908000 | 12.1 | 726000 | 8.6 | 608000 | 6.2 | 422000 | 4.8 |
2001 | 2870000 | 8.30 | 897000 | 12.2 | 738000 | 9.0 | 650000 | 6.7 | 494000 | 5.3 |
2002 | 2986000 | 8.75 | 921000 | 12.8 | 745000 | 9.3 | 670000 | 7.1 | 551000 | 5.8 |
2003 | 2878000 | 8.55 | 833000 | 11.9 | 770000 | 9.8 | 637000 | 7.0 | 534000 | 5.5 |
2004 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
2005 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
[編集] 各国の失業率
各国の失業率及び概況を示す。
- 1970年代、高失業率に苦しんだアメリカだが、その後のIT革命などにより失業率は改善した。FRBの金利判断の指標の一つとなるなど、世界でもっとも注目を集めている失業率。
2003 | 2004 |
6.0 | 5.5 |
資料:OECD
2003 | 2004 |
9.1 | 9.0 |
資料:OECD
- 高失業率に苦しんでおり、労働政策が政局にも影響を与えている。また、職を奪っているとして移民への風当たりも強い。フランス#高失業率、2005年パリ郊外暴動事件も参照。
2003 | 2004 |
9.8 | 10.0 |
資料:OECD
2003 | 2004 |
7.6 | 7.2 |
資料:OECD
[編集] 関連記事
[編集] 外部リンク
- 労働力調査 (総務省統計局)