双弓類
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双弓類(そうきゅうるい、学名:Diapsida)は、四肢動物のうち頭蓋骨の両側に側頭窓(temporal fenestra)と呼ばれる穴を、それぞれ2つ持つグループ。現生の爬虫類・鳥類のすべて、もしくは大部分が含まれる。有羊膜類はこの双弓類と、哺乳類を含む系統である単弓類が、進化の初期に分岐した2大系統群となっている。なお、爬虫類内部のみの分類群として使われる場合もある。
およそ3億年前の石炭紀後期に発生。現生の双弓類は非常に拡散していて、鳥類、ワニ類、トカゲ類、ヘビ類、およびムカシトカゲ類を含む。そのうちのいくつかのものは進化の過程で二次的に1つの穴を失っていたり(トカゲ類)、2つの穴を失っていたり(ヘビ類)する。しかし系統関係からそれらも双弓類に含まれる。現在、世界中の多様な環境に約14600種の双弓類が存在する。
祖先的な特徴としての頭蓋骨の穴は、眼窩の後方の上と下に空いている。これによって顎を大きく開けることができ、また大きく強力な顎筋をつけることができるようになった。また、よりはっきりしない祖先的特徴は、橈骨が上腕骨と比べてやや長いことである。絶滅種には恐竜類、翼竜類、首長竜類、モササウルス類、魚竜類などが存在し、また系統不明の種の多くも含まれる。初期のグループについての分類は流動的であり、変更の対象になっている。かつてはカメ類は最も原始的な有羊膜類と想定される無弓類の直接の子孫であるとされたが、最近の遺伝子解析や形態の詳細な比較解剖学的解析などによって、双弓類に含まれるという説が有力になってきた。
[編集] 系統図
[編集] 形態
爬虫類の祖先型は頭骨に側頭窓がなく、両生類と同様に眼窩・鼻孔・頭頂孔のみが空いていた。この状態を持つ爬虫類は無弓類と言われる。もっとも原始的な爬虫類として知られるカプトリヌス目(亜目)などがその例である。その状態では下顎内転筋は頭蓋の内部にのみ付着する。
側頭窓が開くことによって、下顎内転筋の付着面が広くなり、噛む力が増大する。側頭窓が一つだけのものは単弓類である。
双弓類の側頭窓は、眼窩の後方のやや上と下に開いている。上の穴を上側頭窓、下の穴を下側頭窓という。
爬虫類の鰭竜類(クビナガリュウ類)や、魚鰭類(魚竜類)では、下側頭窓が下部に開いて穴ではなくなり、上側頭窓だけが残る。この状態のものを広弓類と呼び、双弓類と異なる分類にされることがある。しかしこれらも双弓類から二次的に変化したものであり、広義には双弓類に入れられる。
双弓類と認められるものでも、二次的に側頭窓を失っているものがある。たとえばトカゲは一つの穴を失っているし、ヘビ類や現生種の鳥類は両方の穴を失っている。
爬虫類内部の分類としては、無弓類、単弓類、双弓類、広弓類がある。このうち単弓類と広弓類の爬虫類は絶滅。また、後眼窩骨と鱗状骨の位置の違いによって、クビナガリュウ類だけを広弓類とよび、魚鰭類を別にし五種類に分けることもある。
[編集] 参考文献
- 『爬虫類の進化』疋田努著・東京大学出版会発行
- 『岩波生物学辞典(第4版)』