北投石
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
北投石(ほくとうせき、Hokutolite)は鉱物の一種で、日本の特別天然記念物。世界でも台湾台北州(現在の台北市北投区)の北投温泉と日本秋田県の玉川温泉からしか産出しない。北投温泉で発見された為、この名で呼ばれることがあるが、独立種とはいえず学術的には含鉛重晶石と呼ばれることが主である。
明治37年(1905年)に地質学者岡本要八郎が瀧乃湯で入浴した帰りに付近の川で発見された。その後、この鉱物がラジウム等を含み放射性を持つ北投温泉独特の鉱物(後に玉川温泉で産出する物も同じ物であると認定された)であるとされた。
玉川温泉の北投石は、大正11年(1922年)に天然記念物に指定され、昭和27年(1952年)には特別天然記念物に指定されている。現在は採取が禁止されているが、「健康によい」さらには「末期癌をも治す効果がある」などとしばしばマスメディア等で取り上げられることから盗掘は後を絶たず、2004年には摘発された事例もあるので注意が必要である。
なお台湾(中華民国)でも、2000年に北投石は「自然文化景觀」に指定されている。
北投石の主組成はBaSO4とPbSO4でおよそBaSO4:PbSO4=4:1の割合で含まれる。放射性のラジウムを大量に含む温泉沈殿物重晶石(硫酸バリウム)である。
現在、北投石の代替鉱石として、オーストリアのバドガシュタイン鉱石が注目されている。