伊勢鉄道伊勢線
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伊勢線(いせせん)は、三重県四日市市の河原田駅から三重県津市の津駅に至る伊勢鉄道の鉄道路線である。
旧国鉄の特定地方交通線で、距離が長い関西本線・紀勢本線亀山駅経由に代わる名古屋と伊勢・南紀方面とを結ぶ短絡線として、特急「南紀」や快速「みえ」が直通運転される。開業時から複線分の用地が確保され将来の電化に備えて架線柱があり、殆どが高架になっているなど幹線級の設備を持っている。
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[編集] 路線データ
[編集] 運行形態
東海旅客鉄道(JR東海)の名古屋~紀伊勝浦間の特急「南紀」や、名古屋~鳥羽間の快速「みえ」が直通運転され、その間を縫うように自社車両による四日市・河原田~津間の列車が運行されている。 また、沿線に鈴鹿サーキットがあることからレース開催時には名古屋方面から臨時列車が運転されることがある。なお、貨物列車は伊勢鉄道伊勢線は通らず、河原田~津間は関西本線・紀勢本線を亀山駅経由で運転される。
[編集] F1日本グランプリ開催時
上記の通り、沿線に鈴鹿サーキットがあるため、F1日本グランプリ開催時は非常に混雑し、土曜日の予選、日曜日の決勝が終了した後は最寄の鈴鹿サーキット稲生駅に長蛇の列ができる。 また乗降にも時間がかかるため、5分~10分の遅延は毎年恒例のように起きる。
毎年、混雑時に臨時列車が出されるものの、2両編成しかないものがあるなど、編成に問題があり、混雑が解消されないため、改善が求められるところではあるのだが、基本的に単線であるために車両の増設や臨時ダイヤを組むのが難しい。
しかし、これも2007年よりF1日本グランプリが鈴鹿サーキットから富士スピードウェイに移行するため、この問題が起こることがなくなる。反面、収益減は避けられず今後の課題である。 なお、臨時列車が出るのはF1日本グランプリのみであり、フォーミュラ・ニッポン等他カテゴリのレースに関しては通常運行となる。
[編集] 料金等
- 全国のJRと通過連絡運輸協定を結んでおり、河原田~津間を挟んで全国のJR各線で制限なくキロ数を通算した切符の購入が可能である。
- 全線で特急料金(310円)が設定されている。
- 青春18きっぷ等の企画乗車券については、伊勢鉄道分の運賃が別途必要となる(一部の企画乗車券は伊勢鉄道線をそのまま利用できる場合がある(青空フリーパス等)。利用できる企画乗車券はこちらを参照)
[編集] 利用状況
伊勢線の輸送実績を下表に記す。輸送量は、国鉄移管後に飛躍的に増加した。最近では、多少の増減はあるものの大きくは変化していない。 表中、輸送人員の単位は万人。輸送人員は年度での値。表中、1987年度(昭和62年度)以降の最高値を赤色の枠で、最低値を青色の枠で囲んで表記している。
年 度 | 輸送実績(乗車人員):万人/年度 | 特 記 事 項 | |||
通勤定期 | 通学定期 | 定期外 | 合計 | ||
1986年(昭和61年) | 0.0 | 0.0 | 1.6 | 1.6 | 国鉄より運営移管 |
1987年(昭和62年) | 2.4 | 2.9 | 49.7 | 55.0 | |
1988年(昭和63年) | 3.3 | 4.1 | 52.1 | 59.5 | |
1989年(平成元年) | 4.0 | 5.1 | 58.2 | 67.3 | |
1990年(平成2年) | 4.8 | 5.3 | 74.7 | 84.8 | |
1991年(平成3年) | 5.8 | 5.8 | 95.7 | 107.3 | |
1992年(平成4年) | 6.2 | 6.5 | 110.9 | 123.6 | |
1993年(平成5年) | 6.8 | 8.2 | 114.9 | 129.9 | |
1994年(平成6年) | 8.0 | 10.8 | 110.1 | 128.9 | |
1995年(平成7年) | 8.0 | 10.9 | 112.3 | 131.2 | |
1996年(平成8年) | 10.8 | 11.1 | 123.5 | 145.4 | |
1997年(平成9年) | 8.9 | 12.5 | 119.3 | 140.7 | |
1998年(平成10年) | 9.2 | 13.8 | 115.7 | 138.7 | |
1999年(平成11年) | 9.7 | 14.7 | 115.0 | 139.4 | |
2000年(平成12年) | 9.8 | 16.2 | 112.8 | 138.8 | |
2001年(平成13年) | 9.9 | 16.4 | 112.0 | 138.3 | |
2002年(平成14年) | 9.7 | 19.2 | 110.6 | 139.5 | |
2003年(平成15年) | 9.0 | 19.7 | 106.8 | 135.5 | 新型車両(イセIII型)導入開始 |
2004年(平成16年) | 10.5 | 21.6 | 97.6 | 129.7 | |
2005年(平成17年) | 全車両を新型車両に置き換え完了 | ||||
2006年(平成18年) |
[編集] 収入実績
伊勢線の収入実績を下表に記す。収入総合計額は、国鉄移管後に飛躍的に増加した。最近では、多少の増減はあるものの大きくは変化していない。 表中、収入の単位は千円。数値は年度での値。表中、1987年度(昭和62年度)以降の最高値を赤色の枠で、最低値を青色の枠で囲んで表記している。
年 度 | 旅客運賃収入:千円/年度 | 鉄道線路 使用料収入 千円/年度 |
運輸雑収 千円/年度 |
総合計 千円/年度 |
||||
通勤定期 | 通学定期 | 定期外 | 手小荷物 | 合 計 | ||||
1986年(昭和61年) | 216 | ←←←← | 5,621 | 0 | 5,837 | 0 | 2,596 | 8,433 |
1987年(昭和62年) | 4,626 | 3,702 | 183,210 | 0 | 191,538 | 175 | 89,892 | 281,605 |
1988年(昭和63年) | 5,888 | 4,872 | 195,499 | 0 | 206,259 | 0 | 74,577 | 280,843 |
1989年(平成元年) | 6,876 | 6,377 | 276,321 | 0 | 289,574 | 325 | 23,573 | 313,472 |
1990年(平成2年) | 8,091 | 6,338 | 324,546 | 0 | 338,975 | 0 | 22,396 | 361,371 |
1991年(平成3年) | 9,903 | 7,076 | 405,606 | 0 | 422,585 | 0 | 22,963 | 445,548 |
1992年(平成4年) | 11,148 | 7,733 | 526,844 | 0 | 545,725 | 0 | 19,564 | 565,289 |
1993年(平成5年) | 12,318 | 10,157 | 529,703 | 0 | 552,178 | 245 | 19,269 | 571,692 |
1994年(平成6年) | 14,190 | 13,248 | 513,320 | 0 | 540,758 | 51 | 19,990 | 560,799 |
1995年(平成7年) | 14,220 | 13,015 | 524,045 | 0 | 551,280 | 81 | 27,195 | 578,556 |
1996年(平成8年) | 19,840 | 13,581 | 587,766 | 0 | 621,187 | 747 | 35,464 | 657,398 |
1997年(平成9年) | 16,926 | 14,904 | 565,176 | 0 | 597,006 | 615 | 35,858 | 633,479 |
1998年(平成10年) | 17,362 | 16,526 | 540,234 | 0 | 574,122 | 640 | 37,645 | 612,407 |
1999年(平成11年) | 18,523 | 17,729 | 538,163 | 0 | 574,415 | 222 | 17,270 | 591,907 |
2000年(平成12年) | 18,353 | 19,054 | 535,266 | 0 | 572,673 | 301 | 23,756 | 596,730 |
2001年(平成13年) | 18,166 | 19,406 | 515,749 | 0 | 553,321 | 274 | 15,700 | 569,295 |
2002年(平成14年) | 17,918 | 22,079 | 506,973 | 0 | 546,970 | 251 | 15,287 | 562,508 |
2003年(平成15年) | 16,542 | 23,161 | 486,785 | 0 | 526,488 | 197 | 33,070 | 559,755 |
2004年(平成16年) | 19,046 | 25,568 | 448,728 | 0 | 493,342 | 0 | 31,021 | 524,363 |
2005年(平成17年) | ||||||||
2006年(平成18年) |
[編集] 歴史
四日市~津間で関西本線・紀勢本線は、その前身となる私鉄の関西鉄道・参宮鉄道がそれぞれ大阪指向で敷設した経緯から、亀山駅を経由していて距離が長くなる上に、直通列車はスイッチバックを強いられるため、並行する近鉄名古屋線に比べ所要時間で劣っていた。これを短絡しようとして建設されたのが伊勢線である。その建設に当たっては、沿線の集落を無視して出来るだけ短絡ルートをとり、高速運転を行うことを目指した線形を採用した。
なお現在の近鉄名古屋線も、大正時代に四日市と津の間を短絡する目的で開業した(旧)伊勢鉄道(後に伊勢電気鉄道を経て、近畿日本鉄道の前身となる参宮急行電鉄へ合併)を元としており、この鉄道が国有化を免れた事が同線の建設につながったとも言えた。
南四日市~津間が伊勢線として開業したが、南四日市~河原田間は関西本線と並行しており、関西本線にも属するいわゆる二重戸籍区間であった。第三セクターへの転換時に河原田~津間が伊勢鉄道、南四日市~河原田間は関西本線の線増扱いとなり、二重戸籍は解消した。
直通列車として「南紀」が数往復設定されたが、線内普通列車については前述の経緯から沿線が人口過疎地域であったため、ほとんど使用されていないといって良い状況が続いた。そのため、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(国鉄再建法)に基づいて特定地方交通線(赤字ローカル線)の廃止が決められた時、輸送密度の関係で第二次選定路線に入ってしまったのである。
なお、当時の特定地方交通線の選定基準では「南紀」の輸送人員は線内無停車の伊勢線にはカウントされなかった。これについて、特急「南紀」は料金面で近鉄特急に押されているため、行楽期以外の津以北の輸送実績は実際はさほど多くなく、また当時は、快速「みえ」のような都市間の安価な輸送や鈴鹿サーキットの観客輸送にも消極的であったことから、仮に「南紀」の輸送人員がカウントされても、特定地方交通線の選定基準をクリアできたかどうか疑問視する意見もあるが、地元ではこの路線は特急「南紀」が通るため輸送量が多く、常識的に考えれば廃止対象にはならないと問題視し、そのままJR東海に引き継いでも差し障りなかったという批判が出ている。
また、結果的に河原田~津間が別立ての運賃体系となることから、「みえ」などにおいて同線をまたぐ区間の多くでは近鉄より運賃が高くなるため、「自分の首を絞めた」と論評されることもある。
このように、河原田~津間が別立ての運賃体系となったことで、2006年秋にJR東海で導入された非接触型ICカード方式による乗車カードシステム「TOICA」の三重県での適用区間が四日市駅以北で、津駅以南の主要駅での適用は先送りになっている。なお先発のSuicaやICOCAでは、他会社線を挟んで前後のJR線のキロ数を通算する事例に適応させてないことから、将来「TOICA」がこの区間に適用される場合、何らかの対策が必要になると想定される。
- 1973年(昭和48年)9月1日 国鉄伊勢線として南四日市~津間が開業。翌月から特急が経由。
- 1984年(昭和59年)6月22日 第2次特定地方交通線として廃止承認される。
- 1986年(昭和61年)9月22日 伊勢線特定地方交通対策協議会で国鉄伊勢線の代替輸送計画決定。
- 1986年(昭和61年)9月29日 第三セクター鉄道への転換を決定。
- 1987年(昭和62年)3月27日 河原田~津間が伊勢鉄道に移管。伊勢上野駅が開業。稲生駅が鈴鹿サーキット稲生駅に改称。
- 1990年(平成2年)3月10日 快速「みえ」運転開始。
- 1991年(平成3年)3月16日 徳田駅が開業。
[編集] 駅一覧・接続路線
路線名 | 駅名\種別 | 河原田からの営業キロ | 普通 | 快速みえ | 特急南紀 | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
JR東海関西本線 | 四日市駅 | 6.9 | ● | ● | ● | 東海旅客鉄道:関西本線(名古屋方面。特急「南紀」・快速「みえ」は直通) | 三重県 | 四日市市 |
南四日市駅 | 3.7 | ● | | | | | ||||
河原田駅 | 0.0 | ● | | | | | 東海旅客鉄道:関西本線(亀山方面) | |||
伊勢鉄道伊勢線 | ||||||||
鈴鹿駅 | 3.8 | ● | ● | ● | 鈴鹿市 | |||
玉垣駅 | 7.0 | ● | | | | | ||||
鈴鹿サーキット稲生駅 (稲生駅) |
9.1 | ● | * | * | ||||
*徳田駅 | 11.1 | ● | | | | | ||||
中瀬古駅 | 12.7 | ● | ▲ | | | ||||
*伊勢上野駅 | 14.0 | ● | | | | | 津市 | |||
河芸駅 | 16.4 | ● | | | | | ||||
東一身田駅 | 19.4 | ● | | | | | ||||
津駅 | 22.3 | ● | ● | ● | 東海旅客鉄道:紀勢本線(特急「南紀」・快速「みえ」は直通) 近畿日本鉄道:名古屋線 |
- 停車駅の▲印は一部列車が停車。*印は、レース開催時に限り一部列車が停車。
- 駅名中、()内は、転換前の旧駅名。*印は転換時(後)に設置された新駅
[編集] 参考資料
- 伊勢鉄道株式会社パンフレット「夢乗せて愛乗せて」