乳房
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乳房(にゅうぼう、ちぶさ)は、多くの哺乳類のメスに存在する、皮膚の一部がなだらかに隆起しているようにみえる柔らかい器官で、その内部には、乳汁(母乳、乳)を分泌する機能を持つ外分泌腺の乳腺(にゅうせん)が存在する。幼児語ではおっぱいとも呼ばれる。
程乳房の表面には、乳汁が外部に分泌される開口部を含む乳頭(にゅうとう)が存在する。哺乳類では、産まれてから一定期間の間の乳児は乳汁を主たる栄養源として与えられ、生育する。哺乳類の名前は、ここから来ている。オスの乳房、乳腺はその生産機能と分泌の機能を持たないため通常、痕跡的である。
哺乳類でもあるヒトの乳房は、通常は胸部前面に左右1対にて存在する。地球上に人類が誕生して以来、ヒトの乳房の存在意義は、出産後母乳を分泌し、乳児を育てることであるが、文明が発達した現代においては、母乳を代替品の粉ミルクにより置き換えることも可能ではあるが、医学的に考察すれば その与えられた免疫機能の重要性は極めて高く、代替品では近似してはいても、その本来の成分には遠く及ばない。免疫の極めて低い状態で出生する新生児に確実に免疫を獲得させる目的からも、母乳が勧められる。
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乳房の構造
乳房の表面は皮膚で覆われる。ヒトの女性では、通常は胸部の大胸筋の表面の胸筋筋膜上に左右1対が存在し、およその位置は、上下が第3肋間~第7肋間、左右は胸骨と腋窩の間である。乳房は第一次性徴期は性差がなく男児と同じ(第1段階)であるが、第二次性徴期に脂肪組織が蓄積する(特に脂肪組織が蓄積するのは第2段階〜第3段階の間)。乳房の脂肪組織の形は人種差や個人差が非常に大きい。高齢者になると乳房の中身が徐々に衰退するため乳房が徐々に下垂する。
乳房の内容は、その容積の9割は脂肪で、1割が乳腺である。乳腺は、乳房一つあたり15~25個の塊として存在し、乳頭の周囲に放射状に並ぶ。それぞれの塊を葉(よう)と呼ぶ。それぞれの乳腺の葉からは乳管が乳頭まで続き、乳腺より機能し分泌された乳は、乳管、乳頭を通して体外へ出る。乳房組織の脂肪組織は乳の生産には全く関係しない。
乳房の成長
Tannerの分類によれば、両性において共通するのが第1段階である。その後、女性は第2・3・4段階の課程を経、第5段階において女性成人型に変化する。また、男性は第1段階を維持し、男性成人型になる。
- 女性
- 第1段階 第一次性徴期(第一次性徴は性別差なし)
- 第2段階 乳輪下に脂肪組織が蓄積し始める。乳頭、乳輪(乳暈)が広くなり、乳首・乳輪の色が変化。(定義上では、ここから思春期)
- 第3段階 脂肪組織が蓄積し外見差が出てくる
- 第4段階 乳輪が隆起し、ほぼ成人型になる
- 第5段階 女性成人型となる
- 男性
- 第1段階 第一次性徴期(第一次性徴は性別差なし)
- 第1段階 乳頭、乳輪(乳暈)が広くなり、乳首・乳輪の色が変化し、男性成人型となる。
性的アピールとしての役割
動物学者、デズモンド・モリスの『裸のサル』によると、ヒトが四足歩行していた時代は尻が赤く大きければ性的なアピールが出来た。やがて二足歩行をする様になるに従い、尻での性的アピールは目立たなくなる様になった。そのため胸部を大きくするという種が現れ生き残っていったのではないか、という説がある。
女性特有の器官である乳房の大小は、近年社会的にも影響が大きく、1970年代以降より女性の身体的魅力の一要因とされており、現代においては関心も高い(#関連項目を参照)。また、大小にかかわらず、均整の取れた美しい乳房を美乳と呼ぶ事がある。
また、ヒトの乳房は、神経終末が集中している乳首をはじめ刺激を受けると性的興奮を得やすい。医学博士の志賀貢によると、クリトリスの性感を100とすると、乳首の感度は80前後という事である。
乳汁の分泌とその調節
血液を原料に乳を作る。乳房組織の脂肪は乳の生産自体には関係がないため、その大きさと母乳の量・質には因果関係はない。乳(ちち)は、乳汁(にゅうじゅう)ともいい、ヒトや動物のうち哺乳類が幼児に栄養を与えて育てるために母体が作りだす分泌液で、乳房組織で作られ乳首から体外に出てくる。乳房組織は血液の赤みをフィルターして乳にする。出産直後に母体から出る乳は初乳と呼ばれ、幼児の免疫上重要な核酸などの成分が含まれている。
どんな哺乳類も本来子供を出産した後、数ヵ月から数年の哺乳期間だけ母体は乳を作り出す。タバコの喫煙習慣のある女性は脂肪組織に蓄えられたダイオキシンなどの極めて毒性の高い物質が母乳に混じり、排出される。
平時は母乳は決して出ないが、妊娠・分娩後には脳下垂体から泌乳刺激ホルモン(プロラクチン)、オキシトシンが分泌され、このときだけは母乳が生産されるようになる。まれにホルモン異常などの疾患により、妊娠しなくとも母乳が出る場合がある。稀に、男性から出ることもある。
他の哺乳類の乳房
哺乳類の乳腺の発達する部位は、左右対称に前足の腋の下から後ろ足の間、恥骨に続く乳腺堤と呼ばれる弓状の線上にある。この上の発達部位の中で、それぞれ哺乳類の種によって、特定のいくつかが発達する。前の方が発達する場合、子供は前足の腋の下に口を突っ込むことになるし、後ろが発達すれば、腹部下面に乳房が並ぶことになる。
一般的に多産の動物ほど乳房の数は多く、牛は4つ、犬は8つ、豚は14個存在する。乳頭と子が産直後に固定されるものもある。
なお、ヒトにおいても極く稀に本来の発達部位より前(主に脇の下の部分に生じるが、同様に乳腺堤上にあたる腹部の左右から股関節にかけての部位に生じる場合もある)に1対(複数発生例もあり、最大で9対生じる事もあるという)の乳頭を持つ例があり、「副乳」と称される。稀に膨らむ場合もあるが、ほとんどの場合が発達せずホクロのように見える。これは現在、哺乳類でもある人類の、地球上での出現・進化と深く関連していると推測されている。
場所
- 胸
- 胸~腹~腿のつけね
- 胸及び腹~腿のつけね
- 腿のつけね
疾患
- 乳癌
- 乳腺炎