ヒト
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ヒト | ||||||||||||||||||||||||
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宇宙探査機パイオニア11号に搭載されたヒトの両性の画像 |
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Homo sapiens sapiens Linnaeus, 1758 |
ヒトとは、脊索動物門ほ乳綱サル目ヒト科に属する動物の一種である。学名(Homo sapiens)は「知恵のある人」の意味である。古来より、万物の霊長であり、そのためヒトは他の動物、さらには他の全ての生物から区別されるという考えがあるが、生物学的には特別な生物ではないとされる。また、ヒトの祖先はサルであると言われるが、正確にはヒト自身もサルの一種であり、サルから別の生物へ進化したというわけではない。ニホンザルという種類のサルがいるのと同様に、ヒトという種類のサルがいるというだけのことである。この項では、ヒトの生物学的側面について述べる。その進化については「古人類学」の項目を、社会との関係等については「人間」の項目を、法的な定義については「人」の項目を参照。
目次 |
[編集] 概説
ヒトとは、いわゆる人間のことで、学名をHomo sapiens sapiens とする動物の和名である。生物学上の種としての存在を指す場合には、こう標記する。現在の地球上に存在する人間は、すべてこの種に属するものと考えられている。したがって、この文章を読んでいるのは、おそらくすべてヒトである。
分布は世界中に及び、その多様性も幅広い。その形態はいわゆる人種によって、その習性は民族によって非常に異なったものである場合がある。そのため、統一的な説明はなかなかに難しい。したがって、最低限の共通項を指摘するに止め、詳細についてはそれぞれの項目を参照されたい。
[編集] 外部形態
サル目としては極めて大型の種。これより大きいものにゴリラとオランウータンがあるが、いずれもサル目としては群を抜いて大きい。なお、動物一般には頭部先端から尻、または尾までの長さを測定するが、ヒトでは標準の大きさとして直立時の高さ(身長)を測定することが多いので、他種との直接の比較は難しい。
体長は雄の成体でおおよそ140~180cm、体重は40~80kg程度。雌は雄よりやや小さく、約10%減程度と見てよい。基本的な体の仕組みについて、サル目に共通の特徴、類人猿に共通の特徴以外に、ヒトに独自の特徴としては、以下の点が挙げられる。
- 完全に直立の姿勢を取れる。頭が両足裏の間の真上に乗る位置にある。
- 前足の付け根が背中面の位置に近い。
- 後ろ足が長く、かかとがある。
- 体表面の毛が薄く、ほとんどの皮膚が露出する。
以下、各部分について説明する。
[編集] 頭部
頭頂部が非常に大きく丸い。これは大脳が発達しているためである。顔面はほぼ垂直、あごの先端がややとがる。顔面の上から後ろにかけて毛(頭髪)が密生するが、それ以外は肌が露出する。目の上、まぶたのやや上に一対の横長の隆起があり、特に雄やコーカソイド・オーストラロイドでは雌でも顕著であるが、ここに毛を密生する(眉)。鼻は前に突出し、鼻孔は下向きに開く。口の周囲の粘膜の一部が常に反転して外に向いている(唇)。
[編集] 胴部
直立姿勢であることによって、背面はやや中央がくぼんだ平面を成し、胸と腹がやや前に突き出した形になる。雌では胸に一対の乳房が発達する。また、腰骨は幅広くなっており、腰の後部に多くの筋肉と脂肪がつき、丸く発達する(尻)。
[編集] 前足(腕)
前足は手と呼ばれ、歩行には使われない。あえて使う場合には掌側を地につけ、チンパンジーなどに見られるナックル・ウォークは行わない。
肩関節の自由が大きく、腕を真っすぐに上に伸ばし、あるいは左右に広げてやや後ろに曲げることが可能である。親指が完全に掌と向かい合う。指先は器用。
[編集] 後足
後足は単に足とも呼ばれ、歩行のために特化している。膝を完全に伸ばした姿勢が取れる。膝は四足歩行時にここを接地させるので肥厚しやすい。かかととつま先がアーチを形成し、間の部分(土踏まず)がやや浮く。これによって接地の衝撃を吸収する。
[編集] 体毛について
ヒトは往々にして「裸のサル」といわれる。実際には無毛なわけではなく、掌、足の裏などを除けば、ほとんどは毛で覆われている。しかし、その大部分は短く、細くて、直接に皮膚を見ることができる。このような皮膚の状態は、他のほ乳類では水中生活のものや、一部の穴居性のものに見られる。ヒトの生活はいずれにも当てはまらないので、そのような進化が起きた原因については様々な説があるが、定説はない。代表的なのは以下のような説である。
- 外部寄生虫がとりつきにくくする、あるいはそれらを取りやすくするための適応。
- 体表を露出することで、放熱効率を上げて、持久力を上げるための適応。
- 幼形成熟(ネオテニー)の結果。
- 性的接触の効果を上げるための適応。
- 一時期に水中生活を送ったなごり。(水に浸からない頭髪だけが残ったという説)
全身は裸に近いが、特に限られた部分だけに濃い毛を生じる。それには生涯維持されるものと、性成熟につれて発生するものがある。おおよそのパターンはあるが、実際の毛の様子には雌雄差、人種差、および個体差が大きい。
毛が密生する部位は、数か所に限られる。それらは、以下のようである。
- 頭部の上から後ろにかけて(頭髪)・目の上の横長の部位(眉)・鼻孔内(鼻毛):この部分は、ごく幼い頃から毛が濃く、成人までそれを維持する。老化が進むにつれて頭髪は薄くなる場合があり、それは雄で特に著しいが、個体差が大きい。
- 脇の下(脇毛)・股間の性器上部と周辺から肛門周辺にかけて(陰毛):いずれも第二次性徴の発達に平行して発達する。
- 顔の鼻から下、耳から顎にかけて(髭)・胸の中心線周辺(胸毛)・足の膝から下(すね毛):これも二次性徴の発達にしたがって出現するが、雄に顕著で、雌では発達しない。
なお、ほ乳類の顔面には上述の体毛とは別に、感覚器官としての毛「洞毛(どうもう)」が生えている(e.g.猫のヒゲなど)が、ヒトの顔面からは洞毛が完全に消失している。
[編集] 内部形態
全体
骨…体を支えている
筋肉…骨のおかげで動ける・筋肉があるから動ける
神経…脳からの伝令を骨・筋肉に伝え、動かす
首より上
脳…体の各部分に動けと命令する・体の司令塔
上半身(上記抜き)
- 肝臓…
- 心臓…血液を体に循環させる・使用前の血液と使用後の血液に分けて肺臓に戻したりそのまま循環させたりする
- 肺臓…口か鼻から吸った空気を使える気体と使えない気体等にわけ心臓に送る
- 膵臓…
- 腎臓…小腸からの液体を老廃物(尿にする)かまだ使えるものに分けて膀胱か体にもどす
- 胃(食道)含食道からきた食べ物を胃液(酸性)でとかしドロドロにする・胃自体は粘液で守られていて溶けない・ストレスなどで粘液の濃度(?)が低下すると胃潰瘍になる
- 小腸…胃で消化されたドロドロの液体の水分や養分を吸収し、固体にする
- 大腸…小腸で吸収し切れなかった水分をさらに吸収する・小腸と大腸の機能が低下すると下痢になる(?)
- 膀胱…尿をためておく場所
- 胆嚢…
- 副腎…
- 脾臓…
[編集] 臓器の誤解
- よく「盲腸、盲腸」というが盲腸は小腸の一部で盲腸は独立していない。また、盲腸を病気のことでいうが左記のように盲腸は臓器であって病名ではない。病名は虫垂炎。
[編集] 生理的特徴
[編集] 身体能力
ヒトは大部分のほ乳類とは異なり、後肢だけで立つ直立姿勢が普通の姿で、移動は主としてこの体制で両足を交互に動かす、いわゆる直立二足歩行を行う。前肢は移動には利用せず、主としてものをつかむ、引く、押すなど操作するのに使われる。そのため、前肢の基部の関節の自由度が高い。
[編集] ヒトの強さ
ヒトの身体能力について、往々にして「か弱い体を知能で補っている」といった評価がなされることがある。しかし、何をもって弱いとするかの判断については、妥当と思われる場合も、必ずしもそうではない場合もある。また、仮定や前提とする条件などによって考え方も大きく変わる。
[編集] ヒトは強いとする説
「ヒトは強い」ということについて考えるとき、まずその体格について言えば、ヒトより大きく強いものは多いが、ほ乳類全体の比較で見れば明らかに大型の部類に属する。瞬間的な跳躍や高速には乏しいが、持続力はかなり高い。特に長距離移動に関しては、水準を越えるものである。徒歩で長距離を移動する能力がヒトの現在の(過大な)繁栄に寄与したとさえいえる。また、角や牙はないが、これはむしろ手などの普遍的な応用が利く形に進化したと考えるべきであろう。空手家の大山倍達は、条件付きながら「地上最強の動物は人間だ」といったと伝えられる。
ヒトは角や牙は持たないが、大脳の発達によって得たとされる道具を使用する。このことは重要で、棒1本あれば状況は大きく変わる。アフリカのマサイ族は成人の儀式で槍1本でライオンと闘うなど十分太刀打ちできると言われる。また同様の例として、ヒトは石器を発明してそれを付けた飛び道具(槍、矢など)を発明したことによって、肉食獣の襲撃にも立ち向かうことができるようになったことなどもある。さらに群れで行動することで、マンモスやナウマンゾウといった大型動物に対する戦術的な狩りができるようになるなど、むしろ強力な捕食者の位置にあったと考えてもよいとする説もある。
もっとも、偶然ながら素手で猛獣を倒したエピソードもニュースとしてよく知られるところである。たとえば、2005年7月22日に報道された、ケニアでヒョウの口に手を入れ舌を傷つけ殺した73歳のヒトや、2003年10月16日報道の、クマを巴投げした63歳のヒトなどである。
[編集] ヒトは弱いとする説
「ヒトは弱い」ということについて考えるとき、ヒトは実際に毛が薄くて皮膚が露出している体は傷を負いやすく、角や牙なども持たないので、攻撃力・防御力に欠けるとは言える。
また、防御面においては、他の大型生物と戦ったときには逃げることしかできず、相手が瞬発力のある動物(チーター、ライオン等)だと逃げ切れないままに捕まってしまう。これについてはヒトの大脳が他の動物に比べて発達した代わりに小脳が退化したからであるという説がある。これは、ネコが体よりも高い位置に飛び乗ったりあるいはそこから飛び降りることが自然にできるのに対して、ヒトはできない。このことなどから、傍証ではあるが小脳は退化したと考えられている。ヒトが他の動物よりも弱いという考え方は、道具を持たずに猛獣と戦った時に負けることが多いことから考えられるが、これは道具を持たないという条件の下でかつ、戦う相手が限られた猛獣の場合だけである。
[編集] ヒトの泳ぎ
水泳は個人の努力次第の面もあるが、多くの民族には、ヒトが独自に考え出した泳ぎ方が伝わっている。水に入るのを好まないものが多いサル類の中では、泳ぎは巧みな方と言ってよいであろう。一説には人間の進化のある段階は海岸で行われたといい、体毛の配列が水泳に向いているとの説もある(水生類人猿説)。ただし、物的証拠はない。
[編集] 生活史
妊娠期間は約266日、約3kg程度で生まれる。
新生児はサル目としては極めて無力な状態である。一般のサル類は、生まれてすぐに母親の体にしがみつく能力があるが、ヒトの場合、目もよく見えず、頭を上げる(首がすわる)ことすらできない状態である。約2年で、次第に這い、立ち歩き、言葉が操れるようになる。栄養の程度にもよるが、10年から20年までの間(思春期)に性的に成熟を完了する。体の成長はその前後に完成する。
[編集] 寿命
理想的な環境(各種の寿命を縮める要因のない状態)で現代のヒトの寿命はおよそ90歳程度と想像される。だが、実際には様々の要因により寿命はそれよりも短くなる。また、雌の方が5年から10年程度平均寿命が長くなるようである。最も長く生きた個体の寿命が122歳であったことが確認されている。そして、生殖可能な年齢を過ぎた後の生理的寿命が非常に長い。2003年時点で最も平均寿命の長い国家(日本)では女性の平均寿命が85.4歳、男性の平均寿命が78.4歳である。右図にあるように地域によって平均寿命の値が大きく異なるのは乳児死亡率の違いが最大の原因である。(⇒寿命#人間の場合)
かつてヒトの平均寿命ははるかに短く、30~50年程度であった。が、現在でも、栄養条件の劣悪な環境下(主に発展途上国及び未開社会)では、30~50年程度であることが多い。現在の栄養条件のよい環境下(主に先進国)では、100年以上生きる例も少なからず存在する。
生殖可能期以降の寿命が長いことの理由については、いくつかの説がある。たとえば、「お祖母さんのお陰」だという説では、母親が自分の経験に基づいて娘の子育ての手伝いを行なうことが子育ての成功率を大きく上げるためであろうとする。
[編集] 習性
ヒトの習性は、高度に発達した知能や集団内の情報伝達の発達によって、それ以外のすべての動物とは非常に異なった様相を見せる。しかし、このような記述を行う場合には、それがまたやっかいな面でもある。
[編集] 文化との関連
一般に動物の行動や習性は本能行動、学習行動、知能行動の3つに分けられる。本能行動は遺伝子レベルで確定され、生得的に身についているもので、昆虫などによく発達している。学習行動は、それぞれの個体が経験によって後天的に身につけるものである。知能行動は、これに似るが、そのような学習を基礎に、初めての状況下で、推測などの判断をもとに行われるものである。ヒトにおいては、本能行動はほとんど見られず、学習行動と知能行動が発達していると言える。
しかしながら、現実のヒトの行動がそれらによるものであるかと言えば、そうではない。日常に見られる行動の大部分は、個人が経験で獲得したものでも、推測などによって判断したものでもなく、その個体の属する集団に伝統的に継承されたものである。各々の個体は、親や周囲の他個体から見習う(模倣)、あるいは積極的に指示される(教育)ことで身につける。そのような点で、上記3つのどれとも異なる部分がある。これを何と呼ぶかは難しいが、広い意味では「文化」という語をこれに当てる考えもある。通常は文化と言えば、言語や芸術、技術、あるいは社会的なものなどの部分を指す場合が多いが、その発達や伝達の形式だけを取れば、共通するものである。
このような広い意味で文化を考えれば、(ヒト以外の)サルなどの動物にもその片鱗が見られる。しかし、ヒトの場合には、文化的に決定される部分が、基本的行動や配偶システムなど生物の生存の基本にかかわる部分にまで及び、言語は思考をも左右し、場合によっては肉体にまで影響を与える。その内容は地理的にまとまった集団によってある程度は共通する。このまとまりを民族というが、その中にさらに多少とも異質な小集団が見られることも多い。また、歴史的経過の中で、いくつもの民族が入り乱れた状態になる場合もあり、その様相はこれまた多彩である。しかし、いずれにせよ、文化はその民族ごとに多少とも固有であり、情報や意思の伝達に使われる言語や身振り手振りまでもが異なるので、意志疎通すら困難な場合もある。その関わりがあまりに深く、多岐にわたるため、どこまでが文化の影響であるかを判断するのが困難な場合が多い。いわゆるジェンダー論などはその例である。
以下、ヒトの習性に関する大まかな項目を説明するにあたり、文化の違いによって異なる部分に触れない程度でまとめたい。
[編集] 食性
雑食性。果実、植物の葉、大型動物から魚介類までと幅広いものを利用する。これは、高い知能や文化的な情報の蓄積によるところが大きい。特に、動物性の食料の利用はサル類の中では抜きん出ている。しかし、多くのサル類に見られるような昆虫などの小動物を利用することは多くなく、より大型の哺乳類を捕獲すること(狩猟)、及び魚介類を利用すること(漁)が目立つ。特に大型の哺乳類も、集団で狩りをすることによって捕らえることが可能であった点は注目に値する。
いつから始まったのかは定かではないが、かなり古い時代から、野生のものを採るのではなく、食料を自ら育てること、つまり農耕や牧畜が多くの地域で行われるようになり、各地で地域に合ったさまざまな形の農業が発達した。現在では、食料は大部分がこれで賄われている。
[編集] 住居・衣服・道具使用
人類は古くよりそれなりの巣をつくっていたようである。洞窟の入り口付近を生活の場にしていた例は、北京原人などに見られ、長期にわたってたき火を維持していた様子も見られる。その他、動物の骨や皮で作られたテント様の住居なども知られている。いずれにせよ、何らかの屋根のある部屋を作るなり、既存のものを利用するなりしていたようである。これがいわゆる家、住居の始まりになるものと思われる。
また、これは住居以上に歴史をたどりにくいが、体を何かで覆うことも、ほとんどの地域で見られる。いわゆる衣服である。これを、人の体が毛で覆われていないことから発達したと見るか、衣服の発達によって毛がなくなったと見るかは、判断が分かれる。しかし、その発達がヒトの分布拡大に役立ったのは間違いあるまい。
現在の世界では、いわゆる裸族と言われ、衣服を着用しないように言われる民族もあるが、全く何一つ着用しない例はまずない。体に着用するものには、体を保護することを目的にするものと、装飾を目的にするものとがあるが、両方を兼ねる場合も多い。体を保護する目的のものでは、まず腰回りに着用するのが最低限であるようである。装飾にはさまざまなものがあるが、手首や首など、細いところに巻くものがよく見られる。装飾目的としては、体に直接に描き込んだり(入れ墨)穴をあける(ピアス)などの加工も多くの民族に見られる。特に、頭髪の上に何かを突出させる形の装飾は、非常に多くの民族に見られる。
上記のようなものを含めて、生活のためにさまざまなものを加工して利用する、広く言えば道具を使うことが、ヒトの特徴のひとつでもある。道具の使用は、長くヒトだけの特徴と言われてきた。現在では、(ヒト以外の)サルなどにも若干の例が知られる。しかし、道具を作るための道具、いわゆる二次的道具の使用は、ヒトだけに知られている。また、火の使用もヒトの文化の発達を支える重要な要素である。
[編集] 社会生活
一般には集団をつくって生活している。雌雄成体と子供からなる集団(家族)を構成単位とし、それが集まった集団を構成するものが見られるが、必ずしもこの形になるとは限らない。集団(社会)の構造にもさまざまなものがある。
[編集] 情報伝達
ヒトの集団内における情報伝達は、身振り手振りや表情によるものと、言語を介したものがある。
集団内の個体間の伝達方式として言語を用いるのは、ヒトの重要な特徴である。サルやクジラでは多彩な発音を用いて意思疎通を行う例も知られるが、言語という形をとるものはない。逆に、現在知られている限り、これまで世界の民族において、何らかの言語を使用していなかった民族の例も知られていない。言語は単に情報伝達のしくみであるだけでなく、楽しみ(文学など)としても、思考の道具としても用いられた。また、言語化された情報は何かの形で保存することができる(口伝・文字等)から、それがヒトの歴史を作ってきた。
[編集] 配偶行動
社会の構成はその単位を生殖の単位である成体の雌雄ペアによると見ることもできる。少なくとも、性行為は1対の雌雄によって行われるのが普通である。
雌雄個体間での配偶行動は、一般には、まず互いに知り合うことに始まり、一定の交渉を経てある種の高揚した心理状態(恋愛感情)のもとで親交を深め、性行為に至る。性交による受精の確率は必ずしも高くはなく、同一のペアの間で何度も繰り返されるのが普通である。この行為は、互いの親しみを増すはたらきがあると、一般的には考えられる。特定の雌雄ペアは一定期間持続するが、どの程度続くかにはさまざまな場合がある。
ただし、これにはさまざまな例外がある。それは民族的な違いである場合もあるが、同一の文化に属するものの中でも、実にさまざまな例外や逸脱(同性愛・強姦・乱交など)が見られるのが通例である。
また、そのような関係が集団の中で公的に認められ、一定の形式で維持されることを婚姻とか結婚とか言うが、これを成立させるために、それぞれの文化において、さまざまな形の儀礼がある。しかし、これにもさまざまな例外や逸脱行為(浮気・売春など)があるのが通例である。
動物における社会の構成は、その動物の生殖にかかわる雌雄のあり方に大きく影響されるから、ヒトの場合に、本来はどのような雌雄関係であったのかを論じるものは多く、諸説入り乱れて定説はない。現実の様々なヒトの社会を見れば、一夫一婦制、一夫多妻制、一妻多夫制のいずれも、その実例がある。一説には、富裕な社会では一夫多妻に、貧しい社会では一妻多夫になる傾向があるとも言う。また、同一社会でもその階層などによって異なる形が見られることも珍しくない。さらには、ハーレムや乱婚も散見される。確実に言えるのは、これらのどれかを持つ、あるいはそれらのある組み合わせを持つヒトの社会が実在すること、そして、おそらくどの場合も、その内部に多くの例外や逸脱が存在していたであろう、ということである。
[編集] 生活環境
ヒトは、環境を作り替える動物であると言われる。これは、特に現代文明に強く見られることで、必ずしもヒト一般に適用できるとは思えないが、しかしながら、一定の住居をもつ民族は、その周囲を少なからず空き地にすることが多い。農業を行う場合は、さらに広い区域を加工する。また、作物や家畜など、人為的に特定の生物を維持し、その天敵を攻撃することも多い。その他にも、ヒトの生活の場には、その住居を使用する生物(ツバメなど)、残飯などを食料とする動物(ゴキブリなど)、吸血性の昆虫(ノミなど)、雑草などさまざまな特有の生物が集まっている。
[編集] 分布と多様性
現在では航空機や船などの遠距離交通が発達し、また住居環境を調節する技術も発達してているので、この点についての考慮は無意味に近いが、より原始的なものであっても、安定的で確実な遠洋航海技術が発達する以前から、ヒトの分布はほぼ全世界にわたっている。人類の祖先はアフリカ中部に発生したものと考えられ、その進化の過程を通じてほぼ世界に広がっていった。大陸と主要な島嶼のうち、ほぼ唯一の例外として、南極大陸には定着しなかった。また、最も遅く到達したのはニュージーランドではないかと考えられる。それ以外の地域においては、寒帯から熱帯にわたる極めて広範囲の分布域をもっていた。サル目は基本的に熱帯の動物であり、ヒト以外では本州のニホンザルが最も北方に位置する分布であることを考えると、格段に広い。
これは、ヒトが衣服や住居を用いて身を守る方法を発達させたためでもあるが、体の構造そのものも、寒冷な気候に対応できたためと考えられる。たとえば、ベルクマンの法則の通り、その大きい体は体温を維持するには有利である。また、高く盛り上がった鼻は、鼻腔を長くすることで、冷気を暖めて肺へ流し込むことができるようにする、寒冷な気候への適応であるとの説もある。
このような分布域の拡大に従って、形質も多様化したと考えられ、さまざまな変異が見られる。それらの主要なものを分類して、人種と名付けている。しかし、どのような人種の間でも、生理的な意味における生殖隔離は認められない。前述のように、現在の人類はすべてヒトという単一の種に属するものと考えられ、人種の差は種を分かつものとは見なされない。また同種内のさらに細かい分類である亜種レベルでも同一とされている。つまり、生物学上は、人種というものは亜種以下の段階の差に過ぎない。このような広い分布域を持ちつつ、完全な種分化が起こっていないのは、他の動物には例が少ない(広い分布域を持ちつつ、これほどに種分化が起こっていない動物の多くは、家畜など人間に飼育されている動物であり、種分化ではなくとも亜種レベルで異なることがほとんどである)。
現在では、世界的な交通手段や流通の発達に従い、新たな人種の混合が進んでいる面も見られる。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 北原靖子、渡辺千歳、加藤知佳子 編 『ヒトらしさとは何か』ヴァーチャルリアリティ時代の心理学 北大路書房 ISBN 4762820512
- 中西真彦、土居正稔 『人間の本性の謎に迫る』「人間とは何か」を科学、哲学、宗教の目で探る 日新報道 ISBN 4-8174-0607-0
- 日高敏隆 『人間は遺伝か環境か?』遺伝的プログラム論 文春新書 ISBN 4166604856
- フランス・ドゥ・ヴァール 藤井留美 訳 『あなたのなかのサル』霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源 早川書房 ISBN 4-15-208694-7
- 川田順造 編 大貫良夫、尾本惠市、佐原真、西田利貞 『ヒトの全体像を求めて』21世紀ヒト学の課題 藤原書店 ISBN 4894345188
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